| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦国異伝供書

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二十八話 天下の政その十二

「あちらにも人を置くが」
「その方は」
「江戸城代、東国全体の目付となるが」
「勘十郎殿ですか」
「あ奴は都じゃ」
 この地だというのだ。
「引き続きな、所司代としてじゃ」
「都においてですか」
「働いてもらう、茶筅は頼りないから置かぬが」
 それでもと言うのだった。
「これはという者、久助なりを置いてな」
「滝川殿ですか」
「東国全体に睨みを利かす」
 そうするというのだ。
「江戸の城も大きなものにしよい天守を置き」
「しかも江戸にも」
「結界を築いておく」
 そうすると言うのだった。
「しかとな」
「江戸、そして東国を治める為にも」
「そうする、あと会津にも城を築く」
「奥羽への備えですね」
「そうじゃ」
 その城はそうなるというのだ。
「広島城や熊本城と同じじゃ」
「奥羽の付け城ですか」
「そこには忠三郎じゃ」 
 蒲生だというのだ。
「権六の北ノ庄、牛助の和歌山、猿の姫路、十兵衛の月山富田にな」
 それにというのだ。
「さらにじゃ」
「会津若松にもですか」
「確かな天守のあるよき城を築く、名古屋にもそうする」
 織田家の拠点と言ってもいい尾張のこの地にもというのだ。
「あの地にもな」
「清州城ではですか」
「足りぬ、あの地は天下の要地だからな」
 それだけにというのだ。
「確かな城を築き」
「護りとしますか」
「天下のな、してあの国も治める」
 尾張もというのだ。
「わかったな」
「そして尾張には」
「織田家の者を置く、やがて和歌山と水戸にもな」
 この二つの地にもというのだ。
「そうする、牛助はやがて広島にでも移す」
「今は紀伊におられても」
「そうする、五郎左には伊賀を任せるか」
 丹羽はというのだ。
「若狭からな」
「丹羽殿はその地ですか」
「それか伊予じゃな」
「伊予ですか」
「松山に城を築きな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「丹羽殿はそちらで」
「それなら伊賀は他の者じゃ」
 そうなるというのだ。
「とにかく要地には城を築きな」
「備えとし」
「確かな者を置いて治めさせ」
「天下が乱れることを防ぐのですね」
「そうじゃ、あと大名達はな」
 彼等はというと。
「一年ごとに領地と安土を往復させる」
「一年ですか」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「国元を治めさせわしにも顔を出させてな」
「そうして」
「そしてじゃ」
「行き来の旅で」
「わかるな」
「銭をですね」
「うむ、使わせてな」
 そうして力を削ぐというのだ。
「そうもしていく」
「そうしたこともお考えとは」
「どうして天下泰平を守るか」
 それを長くというのだ。
「そう考えてな」
「そうしたこともお考えになったのですか」
「そうじゃ、ではな」
「これからは」
「何かと天下泰平と繁栄のことを考えてな」
「治めていきますね」
「そうする」
 こう言ってだ、信長は帰蝶と共に安土城に入る用意も進めていた。その時が近付いてきているのを感じながら。


第二十八話   完


             2018・12・1 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧