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戦国異伝供書

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第二十八話 天下の政その十

「必ずな」
「南も北も」
「そうしてですな」
「商いもして」
「国を富ましていきますか」
「うむ」
 蝦夷も含めてというのだ。
「そうしていく」
「蝦夷も本朝の領地ですし」
「だからですな」
「あの地も豊かにしますか」
「そうした考えじゃ、先になるがな」
 蝦夷のことはというのだ。
「琉球や美麗の後じゃな」
「ですか、まだ先ですか」
「蝦夷のことは」
「そうなりますか」
「うむ、ただ蝦夷の者達のことじゃが」
 ここで信長はあの地に住んでいる者達のことに言及した。
「かつてそのまま『えみし』と言われていたな」
「ですな、奥羽にもいましたな」
「あのもの者達ですな」
「あの者達がそう呼ばれていますな」
「地の名は『えぞ』で民達の名は『えみし』ですな」
「そうであるな、その蝦夷じゃが」
 ここでは『えみし』と呼んで語る信長だった。
「我等本朝の民とは違うそうじゃな」
「はい、どうやら」
「服も習わしも」
「何もかもですな」
「違うのですな」
「そうじゃ。何もかもじゃ」
 まさにというのだ。
「違うと聞いておるが」
「そのことについては」
「我等もどうもです」
「存じませぬ」
「どうにも」
「山の民のこともあまり知らぬが」
 信長は彼等のことについても述べた。
「あの者達もじゃな」
「ですな、琉球は源の八郎殿があちらの主の祖だそうですが」
「鎌倉殿の叔父にあたる」
 源為朝のことだ、弓の名手で古今無双の豪傑と謳われていた。
「そう言っているとか」
「では国は違えど本朝と同じ民ですな」
「そうなりますな」
「そこは蝦夷の者達と違いますな」
「民の血筋が同じとなると」
「そうじゃな、あの地の民達もな」
 信長は琉球の民達のことも考えた。
「服は違うそうじゃが」
「食うものについても」
「米をよく食うそうですが」
「色々と違うものがあるそうですな」
「本朝とは」
「そう聞いておる、まあ琉球は攻めぬが」
 信長はここでもこの考えを家臣達に話した。
「あの国のことも調べておくか」
「そうされますか」
「今後は」
「そうされますか」
「美麗の島と共にな。美麗の島は明の領地でないというし」
 それならというのだ。
「我等の所領にしてもよいな」
「ですな、それでは」
「明も特にこだわらないなら」
「それでいいですな」
「そうじゃな、まあまずは天下の仕組みを整える」
 このことが第一だというのだ。
「それから美麗や蝦夷じゃ」
「ですな、まずはです」
「天下を統一し」
「そして泰平を長く続ける仕組みを整える」
「それからですな」
「そのうえで美麗の島なり蝦夷じゃ」
 そして琉球から南の島々だというのだ。
「そうしていくぞ」
「そして交易ですな」
「それを進めていきますな」
「そうしますな」
「そうじゃ」 
 まさにと言うのだった。 
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