夢幻水滸伝
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第八十一話 北陸の雄その一
第八十一話 北陸の雄
坂口と雅は自分達が率いている東海の軍勢を信濃の南に入れた、南北は道の様に開けているが東は川西は山だ。
その場所を見てだ、坂口は雅に話した。
「西の山が怖いだがや」
「はい、まさにです」
「奇襲にはもってこいだがや」
「前から攻めてです」
そしてとだ、雅も坂口に話した。
「我々がそちらに気を取られている間に」
「西からだがや」
「奇襲を仕掛ければ、そして後ろも別動隊で塞げば」
「わし等は終わりだがや」
「そうなります、東の川に追い落とされます」
自分達が率いている軍勢はというのだ。
「そうなってしまいますので」
「この場所は注意すべきだぎゃ」
「遠江から信濃への道はこうした場所ばかりです」
「守るに易く攻めるに難しい」
「まさに天然の要害です、ですか」
「空船や斥候にだぎゃな」
「警戒させています」
雅は坂口と共に空を飛ぶ空船達を見た、数隻しかないが彼等にとっては虎の子と言うべき戦力でもある。
「この様に」
「そうだぎゃな」
「はい、そして」
雅はさらに話した。
「敵の動きですが」
「今どうしてるだがや」
「こちらにすぐに向かわずに」
そうせずにというのだ。
「林城に兵を集めてからです」
「そうしてだぎゃ」
「その南に向かっています」
「そしてだぎゃな」
「林城の南、盆地の端の方で」
そこでというのだ。
「我々と戦うつもりの様です」
「盆地の南だぎゃ」
そう聞いてだ、坂口は考える顔になった。
そしてだ、こう雅に言った。
「後ろが山だがや」
「はい、若しもです」
「そこに入って夜襲でも受ければ」
「我々はひとたまりもありません」
「そうだぎゃな」
「戦は昼に行われるとは限りません」
この当然と言えば当然のことをだ、雅はあえて語った。
「ですから」
「夜にだぎゃな」
「注意すべきです」
「そうだぎゃな」
「はい、夜襲にこそ気をつけましょう」
まさにとだ、雅は言った。そしてだった。
自身も周囲を警戒しつつだ、坂口にあらためて話した。
「おそらく彼等は奇襲を考えていて」
「そしてだぎゃな」
「その場所はです」
「その奇襲が一番効果的な場所だがや」
「自分達が一番よく知っている」
雅はまるで推理小説の中で主人公が謎を突き止めていく、ジグゾーパズルのピースを一つ一つ入れる様に言っていった。
「そこは何処か」
「まさにだがや」
「はい、盆地の南で」
「天竜峡だぎゃな」
「そこです」
雅は東の川、天竜川も見た、奇麗な川だが雅は今はその川の美しさよりも戦のことを考えて語っていた。
「おそらく」
「敵が仕掛けて来る場所は」
「前に騎馬隊か僧兵隊がいて」
「そして後ろと横にだぎゃな」
「別の隊がいます」
「そうしているだぎゃな」
「そして戦になれば」
その時はというのだ。
「前の軍勢が動いてきて」
「わし等と戦をしてだぎゃな」
「我々がそちらに注意を向けていて」
「集中した時にだぎゃな」
「仕掛けてきます」
その別動隊がというのだ。
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