吸血鬼になったエミヤ
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022話 修学旅行異変《六》 総本山到着。戦いの始まり
前書き
更新します。
本体に帰る途中でシホはネギにあることを話しかけた。
「ネギ先生にカモミール」
「なんですかシホさん?」
「なんでい?」
「先ほど符術師の女と一緒にいた少年ですが、彼を一番に警戒しておいたほうがいいと思います」
「えっ…? どうしてですか?」
「もちろん他の連中も警戒が必要ですが、おそらくあの少年だけは別格…たぶん今のネギ先生ではやられてしまうかもしれません」
「兄貴が!?」
「ど、どうしてそこまでわかるんですか?」
「…先ほど私が放ったものをご存知ですよね? あれはかなり遠くから放ったものなのに放つ瞬間、彼だけこちらに気づいたんです」
「あ、あれをですか!? 僕ですら全然気づかなかったのに…」
「はい。ですから本体に戻ったらすぐに私は一度旅館に戻ってタマモと装備を整えてきます。西の長にも白髪の少年には気をつけろと伝えてください」
「わかりました。僕も用心しておきます」
「よろしくお願いしますね」
「はい!」
そう告げてシホは一度旅館に帰っていった。
といってもまずは怪しまれないように琳と入れ替わりをしないといけないから時間まで隠れていなければいけないが…。
そこはかとなくどうにかなるだろうと探すより待つ選択をシホはとった。
…そして場面はネギ達に戻り、ネギは刹那達(と、ついてきてしまった5班+朝倉)と合流して目的地である関西呪術協会までの道のりを歩いていた。
アスナ達は木乃香達の背後で、
「ちょっと桜咲さん! なんでパル達もついてきてんのよ!?」
「いや、すみません。実はさっき見つかってしまいまして」
「ふっふっふ、甘いよ桜咲さん。GPSを事前に荷物に仕掛けておいたから見つけるのは楽勝だったわ」
「…と、いうわけでして。それよりシホさんは?」
それでネギ達はシホがどこに行ったのかを話すと、
「そうですか。シホさんは一度戻ったのですね」
「はい。少し心細いですが、その間僕たちだけでなんとかやっていきましょう」
「しっかしシホの姉さん、なにやら強力な魔法か?を持ってやしたね」
「はい。とてもびっくりしました。刹那さんと同じで接近タイプだと思っていたのは間違いでしたね」
「一応伝えておきますと、シホさんはどのタイプでも力を発揮できますから心強いですよ」
「「「へー…」」」
刹那の言葉に改めて感心しているネギ達であった。
そして目的地に着いたのか木乃香達は走り出してしまった。
「ちょ、ちょっと桜咲さん! ここは敵の本拠地なのにあんなに無防備に突っ込んで大丈夫なの!?」
「そうですよ。危険です!」
「いえ、その…」
刹那はしどろもどろになっている間に異変はあった。
いきなり「お帰りなさいませ、このかお嬢様!」という台詞とともに和服の女性達がネギ達を迎え入れた。
それに当然目を丸くしているネギ達だったが、
「えーと、つまりその…ここは関西呪術協会の総本山であると同時に、このかお嬢様のご実家でもあるのです」
刹那にそう告げられてえらく驚いていた。
それから色々話をしている間にネギ達は本殿へと通された。
そこで待機していたらしく詠春が現れた。
「お待たせしました。ようこそ明日菜君。それにクラスメイトの皆さん。そして担任のネギ先生」
詠春の登場とともにこのかが飛び出して詠春に抱きついた。
「あ、あの長さんこれを…」
そこにネギ君が立ち上がって詠春に親書の話を持ち出した。
「東の長 麻帆良学園学園長近衛近右衛門から西の長への親書です。お受け取りください」
それを詠春は受け取って中身を見、一瞬顔を顰めた。
どうやら学園長からお叱りの言葉が書いてあったのだろう、苦笑いを浮かべる。
少ししてすべてを読み終わった詠春は「任務ご苦労!」とネギを労い周りも騒ぎ出して宴会が開かれることになった。
その宴会場で、詠春は刹那に話しかけ刹那はすぐに片膝をついていたりした。
そして交わされる刹那の護衛の件での労いの言葉。このかの力の発現について。
「ところでシホは帰ってしまったのですか?」
「あ、はい。少し準備をしてくるとのことです」
「準備、ですか…」
詠春がそうつぶやいている中、ネギが、
「あの…長さんはシホさんと知り合いなんですか?」
「あ、そ、そうだね。うん、ちょっとした知り合いだよ。なぁ刹那君」
「は、はい。同じ神鳴流剣士ですから」
二人でうまく誤魔化しの言葉をいった。まだ知らせることではないとシホにも言われているのでなんとかやり過ごせただろうネギも「そうなんですかー」と言っていた。
「あ、それでシホさんから伝言ですが白髪の少年には気をつけろ、だそうです」
「白髪の少年、ですか」
「はい。なにやらシホさんはその事を話すときだけ目を鋭くしていました」
「そうですか…(シホが警戒するほどの白髪の少年…まさか彼が? いや、しかし彼はナギが…)」
考えていたが埒が明かないので保留となった。ただし警戒は少し強める方針で部下達に伝えた。
そんなこんなで時間は過ぎていき、アスナと刹那は現在二人でお風呂に入っていた。
「ふー…体が休まるわねぇ」
「ゆっくり休ませてくださいね」
「こーいうことならシホも残ればよかったのにね」
「いえ、シホさんにも考えがあるのでしょう…今回の旅行ではかなりの妨害を受けましたからアヤメさんと一緒に敵を倒しに来ると思います」
「えー、でももう危険なんてないんでしょう?」
「そうであればよいのですが…」
「まぁまぁそんなに神経張らないで今はゆっくりしましょう」
「あ、はい」
それから二人はシネマ村の一件や、お互いにネギ、このかとに対する気持ちなど後には喧嘩のように言い争っていたり。
それで一応の落ち着きを見せた後、
「あの…神楽坂さん実は…」
「あ、あのー…何か…明日菜でいいよ」
「あ…そうですね。じゃ私も刹那で…、あの…明日菜さん。いろいろと話したいことがあるので…あとでこのかお嬢様と一緒にこのお風呂場に来ていただきませんか」
「え…? うん、いいけど…」
明日菜がなにやら緊張しながら承諾しているとなにやら外からネギと詠春の声が聞こえてくる。
おそらくお風呂に入りに来たのだろう、アスナと刹那は勢いもあって岩陰に隠れてしまった。
そんなことは露とも知らずネギと詠春は話を盛り上がっている。
湯につかりながら、
「この度はウチのもの達が迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
「い、いえ…」
詠春は今回の襲撃に関してネギに謝罪の言葉を言っていた。
そして明日には救援も来て今回の件も解決するだろう旨を伝えた。
それでネギは喜んでいるが、どうしてこのかは狙われるのか聞いてみると、詠春はこのかの事を“切り札”と比喩した。
このかの血筋には代々から受け継がれる凄まじい呪力…つまり魔力を操る力が眠っていて、その力はサウザンドマスター…つまりナギをも凌ぐ程の力を秘めているという。
「つまり、このかさんも魔法使い?」
「はい、そのとおりです。そしてその力をうまく利用すれば西を乗っ取るどころか東を討つことも容易いと考えたのでしょう。
ですからこのかを守るために安全な麻帆良学園に住まわせ、このか自身にもそれを秘密にして来たのですが…」
「そ…そうだったんですか。あれ、ところでサウザンドマスターのことをご存知なんですか?」
ネギにそう指摘され詠春は笑みを浮かべながら、
「何しろ私はサウザンドマスター…ナギ・スプリングフィールドとは腐れ縁の友人でしたからね」
「え…」
「そして君の身近にも私と同じ人物がいますよ」
「そ、それって…!」
ネギがそれを聞きたそうにするがそこでタイミング悪くこのか達が入ってきてしまい一騒動があったのはお約束。
だが少ししてアスナと刹那の約束はある襲撃者によって破られることになってしまう。
◆◇―――――――――◇◆
Side シホ・E・シュバインオーグ
私は少し前に琳に念話をしてなんとか合流して入れ替わった。
『では記憶を見せますね』
(できるの?)
『はい、では!』
そして流れてくる今日の楽しかっただろう光景。
その中で琳も楽しそうに笑っている光景を見て、すべてを見終わった後、
(これは、なんか悪いな。本当は琳の記憶でもあるわけだし)
『構いません。私も仮初とはいえ楽しめましたから』
(琳がそういうなら何もいわないけど)
『はい♪』
それで話もつき、琳はいつも通り護衛の任で私の近くについた。
そして龍宮達と合流してさて、後は旅館に到着した道中で、
「どうしたエミヤ。なにか考え事か?」
「ええ、ちょっとね。ネギ先生達は大丈夫かと…」
「大丈夫じゃないか? さきほどの話では今頃協会で楽しんでいるんだろう」
「そうだといいけど…少し私の中で敵の中に知っている顔があった気がするのよ」
「強敵か?」
「おそらく…」
私が龍宮と会話をしているとタマモが前からやってきて、そのまま胸に引き寄せられた。
「シホ様ー。タマモは心配しましたですよ~!」
「うぷ…。ちょ、タマモ…心配しすぎよ。少し一緒にいなかっただけじゃない?」
「それでもです! 今度シホ様を捕らえようとする輩にはとっておきの呪いをぶつけてやるつもりなんですから!」
心配性だなぁ…。まぁそれはしょうがないとして、その時携帯がなった。
相手はネギ先生だった。
「はい。ネギ先生、どうかしましたか?」
『あ、シホさん。よかった。出てくれて!』
「どうしました…? 声からしてかなり焦っているようですが」
『はい! 学園長にも連絡しましたが長が…!』
次の一言に驚かされた。
詠春が石化され木乃香も敵の手に渡ってしまったという。
「…わかりました。準備ができ次第すぐに救援に向かいます」
『お願いします!』
カチッ!
「タマモ、準備を!」
「はいです!」
そして背後では、
「私達も同行しようか」
「ニンニン♪ バカリーダーから救援の知らせがきたでござる」
「面白そうだからいくアル!」
龍宮に楓に古菲がその場に立っていた。
ふむ、以外に悪くないかも。
でも…
「楓はともかく、古菲は大丈夫なの…?」
「まぁ古も口は固いから大丈夫だろう」
「わかったわ。それじゃいきましょうか」
私達は急いで総本山まで向かっていった。
少し急ぐかもしれないけど。
◆◇―――――――――◇◆
ネギ達は走る。
このかを奪い返すために。
「しかしシホの姉さんの言うとおりだったな! まさか長までやられちまうなんて思わなかったぜ!」
「そうだねカモくん。でも今は早くこのかさんを…! 見えた!」
ネギ達が見た先には符術師・天ヶ崎千草に白髪の少年がこのかを式神に持たせながら立っていた。
「そこまでだ! お嬢様を放せ!!」
「……またアンタらか」
「天ヶ崎千草! 明日にはお前を捕えに応援が来るぞ、諦めて投降するがいい!!」
「ふふん、応援がナンボのもんや。あの場所に行きさえすれば………。まあええ。そんなに痛い目に遭いたい言うんなら、お嬢様の力の一端を見したるわ。本山でガタガタ震えとったら良かったと後悔するで」
「千草さん…。念のため多くお願いするよ。例の彼女が来るかもしれないから」
「了解や。お嬢様、失礼を…」
千草はこのかの口当たりにお札をはり呪を唱えた。
それに呼応しこのかも「ん゛っ……!」と口を鳴らし次には体が発光する。
「お嬢様!!」
刹那が吼えるが呪文は続けられあたり一面を光が埋め尽くす。
そして現れる異形の数々。
鬼から始まり鴉の翼を持つもの、狐の仮面をつけるものなど種類も豊富であたり一面に展開される。
その数は百では収まらず500以上はいるだろう。
「ちょっとちょっと、こんなのアリなのーーーー!?」
「やろー、このか姉さんの魔力で手当たり次第に召喚しやがったな…!!」
「な、何体いるか分からないよ……」
「あんたらはその鬼どもとでも遊んどきや。ガキやし、殺さんよーにだけは言っとくわ。安心しときぃ。ほな」
「まっ、待て!!」
刹那の制止の声も届かず千草達はその場を離れていってしまう。
そしてそれを阻む百鬼をゆうに越す軍勢。
《何や何や、久々にこんな大所帯で喚ばれた思ったら………》
《相手はおぼこい嬢ちゃん坊ちゃんかいな》
《悪いな嬢ちゃん達。「殺すな」言われとるけど、喚ばれたからには手加減でけへんのや》
《恨まんといてな》
「せ、刹那さん…こ、こんなのさすがに私…」
百鬼の軍勢の前にアスナは歯をガチガチと震わせて怯えてしまっている。
それは当然だろう。普通の中学生がこんなものを目にしたら怯えてしまうのは当然だ。
それでアスナを落ち着かせながらカモは、
「兄貴、時間が欲しい。障壁を!!」
「OK! ラス・テル・マ・スキル・マギステル。逆巻け春の嵐。我らに風の加護を。『風花旋風風障壁』!!」
ネギの呪文によって竜巻が発生し当分の間だが敵の侵入は防ぐことに成功した。
「こ、これって!?」
「風の障壁です。ただし2、3分しか保ちません!!」
「よし、手短に作戦立てようぜ!! どうする、コイツはかなりやばい状況だぜ!?」
「………二手にわかれる、これしかありません。私が鬼を引きつけます。その間にお二人はお嬢様を追ってください」
「ええっ!?」
「そ、そんな刹那さん!!」
「任せてください。ああいう化け物の相手をするのが神鳴流の仕事ですから」
ここは戦い慣れしている刹那を残していくのがベターな作戦だろう。
しかしアスナはそれを容認できなかった。
なら私も残る! と言い出してしまったのだ。
「刹那さんをこんなところで一人で残していけないよっ!」
「でもっ…」
「いや……案外いい手かも知れねぇ! どうやら姐さんのハリセンは叩くだけで召還された化け物を送り返しちまう代物だ! あの鬼たちを相手にするには最適だぜ!?」
―――――ならその案、私達も混ぜてください。
その時、頭上から声が聞こえてきて全員は「ハッ!」として上を向くとすごい勢いで、シホとタマモ…そして詠春が降ってきていた。
「どうやら無事のようね」
「シホさんにアヤメさん!?」
「長も!」
「どうやってこの竜巻の中に!」
「それより長は石化したはずでは!?」
「アヤメさんもなんか尻尾とか耳とか生えてるし!」
「穴から入ってきたのよ」
「穴って…」
アスナは頭上を見た、竜巻は空高く発生していてどれくらいの距離から入ってきたのかも想像できないほどだった。
「私に関してはシホに救われました」
「シホさんは石化を解くすべを持っているんですか!?」
「はい。まぁ企業秘密ですが」
「私はこの姿が本来の姿です♪」
「そ、そうっすか…。しかしこれで希望も見えてきたぜ!」
「なにを話していたのか知らないですけど、ネギ先生達は早く向かってください。ここは私とタマモがなんとかしますから」
「な、なんとかって外にはいっぱい敵がいるんですよ!?」
「知っています。でもあの程度なら私たちだけで十分です。ね、タマモ?」
「はいです」
「でも…」
「忘れないでください。こいつら以外にも月詠といった神鳴流剣士、狗神使いの犬上小太郎、そして白髪の少年…これだけの敵がこの先に待ち構えているんです」
「あ!」
「そのためには人数は多いに越したことはありません。ですから行ってください。道も私が作ります」
「でも、シホとアヤメさんだけじゃ…」
「大丈夫よアスナ。後から援軍も来る予定だから。片付けたら私たちも向かいます。けど白髪の少年にだけは念を押しますが気をつけてくださいね」
「は、はい!」
「白髪の少年に関しては私がどうにかしましょう」
「よ、よし。作戦はこうだ。シホの姉さん達の力を信じる形になっちまうが、鬼どもを引き付けている間に俺達はこのか姉さんの救出に向かい、白髪のガキは長のおっさんに任せて隙を見て奪還する。
月詠と狗っころはこの際どうにかやり過ごすしかないぜ」
「なんとかなるかも…?」
「なんとかするの…そのためにここまで来たんです」
「…よ、よし。ここらで少しでも勝機をあげるためにもアレ、やっとこうぜ! ズバッとブチュッとよ!」
「あ、アレって?」
「キッスだよキス! 仮契約!」
「「「ええっ!?」」」
「手札は多いほうがいいだろうがよ!」
「ふぅ…カモミール、あなたね…。ま、私はパスするわ」
「私もです。というかシホ様には絶対許しません」
「と、なれば後は刹那の姉さんだけってわけか」
「わ、私ですか…」
「急いでくれ。もう障壁が解けるぞ!」
「は、はいっ!」
刹那は一瞬迷ったが状況が状況なのですることに決めたのだった。
「す、すいませんネギ先生…」
「いえ…あの、こちらこそ…」
二人は顔を赤くしながら…周り、アスナは少しドキッとしていて、ほかの面々はほほえましい表情で見ていた。
「い、いきます」
「は、はい」
そして口付けにより契約は交わされた。
「さて…それじゃ今から私が突破口を作りますから…―――I am the bone of my sword―――…!」
シホは弓に捩れた螺旋剣を番えて構えをする。
それを見てそれがとても強力な力を秘めているのが分かったネギは体を震わせた。
「私が放ったと同時にネギ先生は刹那を、えい…長はアスナを抱えていってください」
全員はそれに頷き風がやむのを待つ。
そして…、
「今です! 偽・螺旋剣!!」
それと同時にネギは刹那を杖に乗せて、詠春はアスナを抱えて矢の直線状をすごい勢いで突っ切っていった。
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