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獣篇Ⅲ

作者:Gabriella
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50 お母さんは忙しい。

_「副長、部屋の掃除が終わりましたので、他に余っている仕事などはありますか?」

と聞くと、彼は答えた。

_「あァ、仕事なら山のようにあるぜェ?…じゃあまず、この山を片付けてはくれねェか?」

と言って、とんでもない量の書類の山を渡された。これ、果たして終わるのか??心配になったが、まぁなんとかなるだろう。

_「分かりました。…他に何か書類(これ)に関して注意点などはありますか?」

_「いや、今のところ特にねェなァ。…あ、捺印のところさえ開けておいてもらえれば大丈夫だ。…で、それ以外で何かあったら、また副長室(おれのへや)に来い。お願いしていいか?」

_「承知しました。では、私はこれにて失礼致します。ありがとうございました。」


と言って自分の部屋に向かったのはいいが、この分量は今日中には確実に終わらない自信がある。www
これは、持ち帰り分もあるのだろうか。
とりあえず船に持って帰ることを前提で、書類の山をざっと確認した。⅓くらいは持って帰れそうなので、今からは残りの分を片付けるとしよう。バッグに頭を突っ込んで筆箱を探す。使っているのは有印の小物入れとして売っている縦長の筆箱だ。奥の方に落ち込んでいたので、手探りで漁る。腕の限界が来そうなところでようやく掴んで、引き上げた。やっとの思いで引き上げた筆箱のフタを明け、黒いペンを取り出す。同じくバッグから書類ケースを取り出し、take outの準備も兼ねる。また、できた書類を提出するための茶封筒を予め出しておくことにした。全てのスタンバイが整ってから、さっきの薬の出来具合を確認しに、ワープして、”秘密の部屋”に向かった。

部屋に戻ってから煮込んでいた薬の具合を見る。丁度よい色をしていたので、鍋を火から下ろし、出来上がった薬を瓶に詰めた。そしてもう一度違う薬を作るべく、鍋をキレイに洗って乾かす。次に作るのは、真実薬である。乾かす間に、次の薬材を刻み、必要な材料を揃えてから、鍋に放り込む。そして備え付けた暖炉の上に鍋を引っ掻けて、グツグツ煮込みを開始した。これは約三時間かかるので、剣にかかっている魔法を解き、鍋にかき混ぜの魔法をかけた。そして、そのまま片付けの魔法もかけてから、杖を(もと)に戻し、指パッチンで自分の部屋に戻った。置いてあったペンを手にとって、書類の山を片付けることに専念した。今日のうちに終わるかが心配だが、それは神のみぞ知る。

** * * * * * * * * * * * * * *

分けておいた分もなんとか終わったので、書類をまとめて、バッグにしまい、”部屋”に戻る。出来上がっていた薬を瓶に詰め、道具を片付けてからバッグにしまい、帰る為に上から着る着物を出してから、バッグのスイッチを切り替え、書類を副長室に持っていく。これが終わり次第、船に帰る予定だ。子供たちが待っている。ご飯はどうやら一緒に食べるつもりのようなので、早く帰らねばならない。

副長室の前に来て、失礼します。と言って襖を開ける。副長室がさっきと全く同じ姿勢でこちらを向いたので少し笑えたが、全く動じていない降りをして出来上がった書類を提出した。

_「これ、先程のお仕事です。終わりましたので提出しに参りました。あとは副長のご署名と捺印をするのみです。ちなみに、私は今から帰ります。」

_「あァ、お疲れ様だった。ありがとうよ、お陰で助かったぜ。」

_「ええ。いいんですわ。私の仕事でもあるので。給料泥棒になってはいけませんもの。」

_「ってか零杏、帰るってどこにだァ?」

_「鬼兵隊の船ですわ。高杉(かれ)は束縛がお好きな方のようでしてね、私は仕事が終われば(いえ)に帰れ、と言い遣っておりますわ。…まったく本当に面倒くさいですけど、…明日の朝にはまた出勤致しますので、お許しくださいませ。」

_「…そうか。気をつけて帰れよ?…ってか制服は大丈夫なのか?」

_「ええ。大丈夫ですわ。幹部も状況を知っていますので。」

そうか、と言って隊服のポケットから出した煙草の箱から一本取り出し、火をつけた。じゃあな、気をつけて帰れよ?と言われ、私は今日の仕事を上がることにした。部屋に戻り、面倒くさかったので隊服とスカーフだけは脱いでブラウスの上から着物を簡単に袷てスカート状の袴を上から履き、剣を腰に指してバッグを片手に、船の近くまでワープした。船は朝降りた場所と同じところに停まっており、顔パスで船に通してもらった。部屋まで帰ると、晋助(かれ)が珍しく仕事をしていたので、多少驚きつつも、ただいま、と声をかける。おかえり、と言って晋助が振り返った次の瞬間、部屋の前でまた子と万斉の声がした。また、一際高い声が聞こえるので、どうやら双子も一緒のようだ。

_「もし、失礼するでござる。また子殿もおられる。」

晋助が、入れとだけ言うと、万斉たちが部屋に入ってきた。沙羅はまた子に、双樹は万斉に抱っこされていた。二人とも、なんか様になる姿に少しほほえましく思いつつも、しばらくそのままで待機した。また子が、あ、零杏、おかえりッス。と言う。沙羅がまず、まま、まーまっ!っとキャッキャしていた。やばい、かわいい。わが娘ながら鼻血でそう。www 双樹は万斉に抱っこされつつも、ママ、と言っていた。

_「もうすぐ晩御飯らしいんで、それまでに着替えとか済ませとくッスよー」

_「それまで拙者らが沙羅殿と双樹殿をお守りしておくでござる。」

_「ありがとうございます。…では、お言葉に甘えて…準備致しますわ。」

と言って、一旦そこで解散になった。


彼らがいなくなったのを確認してから、私は衝立の後ろに入り、着替えをすることにした。まず、ブラウスを脱ぎ、上に晒しを巻いて、着流しを羽織る。そして履いていたズボンを脱ぎ、それぞれを衝立に掛けてから、着流しを整える作業に入った。着流しを整えてから、衝立の上の服を取って、ハンガーにかける。そして今度は物干し竿にかける。真選組の制服がかかっているのはどこか違和感満載だが、仕方ない。私自身の部屋がないのだから晋助(あいかた)には我慢してもらうしかあるまい。

着ていたものを片付けてから、自分の机の上に置いた荷物を、片付ける。そして、するべきことを机の上に積み上げて、とりあえずは一段落である。双子(かれら)の晩御飯の準備もせねばならない。部屋に備え付けられている小さなキッチンでお粥を作る。木箆で様子を見ながら机の上に出した書類を確認する。いつから見ていたのか、晋助(かれ)が口を開く。

_「おかえり、零杏。…沙羅と双樹も、随分と寂しがってたぜ?ママはどこ?ってな。」

_「ただいま。…そうだったの、それは悪いことをしたわね。…とか言って、あなたも寂しかったんでしょう?」

あァ、良く分かってるじゃねェか。と言って、私の腰に腕を巻き付ける。普段甘えられねェからなー。とスリスリしている。そうです。ママを独り占めしようだなんて百年早い。wwww

_「もうすぐ大広間で晩飯らしいぜ。…あと少ししか甘えられねェなァ。」

_「普段のでもすでに十分よ。www」

_「つれねェなァ。」

_「契約不履行ってことで離婚してくれてもいいわよ。wwww」

なに言ってんだ、別れるつもりは一切ねェ。とかグダグダ言っている間にも、万斉から夕飯のお呼びが掛かった。さて、そろそろ行かねばなるまい。
 
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