夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第八十話 東海と甲信その十四
「やはり」
「そうだな、騎馬隊は平地で攻めるが」
「拙僧はです」
つまり僧兵隊はというのだ。
「奇襲がよいかと」
「若しくは逆だな」
「鵯越えの様に攻めるか」
滝沢は源義経の名前をここで出した、日本の歴史における名将の一人で一ノ谷の戦いではその鵯越えで勝っている。
「そうするか」
「それもいいですね」
「そうだな、騎馬隊をどう使うか」
「とにかく正面から戦ってもです」
「劣勢だな」
「このことはどうしようもないことなので」
「奇襲しかないな、我々が勝つには」
滝沢は腕を組んで述べた。
「やはり」
「そうなるかと」
「よし、信濃は盆地の国だ」
盆地が山地の中に点在している、そうした国であることは彼等が一番よく知っている。尚甲斐にしても盆地である。
「それならな」
「はい、平地と山地がありますので」
「その両方を使ってな」
「戦うべきです」
「平地が山地に囲まれている」
このことをだ、滝沢は言った。盆地が具体的にどんな場所かをだ。
「それならです」
「敵を平地に誘い込んでな」
「横や後ろの山地からです」
「攻めるか」
「そうしましょう」
「それではな」
「一戦交えることは決まっています」
決戦、それを行うことはというのだ。
「それなら」
「そうだ、敵は戦いに来る」
「我々もそうですが」
「下手に戦っては負ける、このことは胆に銘じてな」
「戦いましょう」
「それではな」
「軍議で諸将を集め」
「戦いましょう」
こう話してだ、そしてだった。
二人は林檎も食べ酒も飲んだ、無論酒の肴はほうとうである。
その酒を飲みつつだ、正宗は滝沢にこんなことを話した。
「拙僧は身体が大きいですが」
「起きた世界でもか」
「はい、それで怖がられもします」
「僕はその逆だ」
「小柄だからですか」
「このことを馬鹿にされたりもした」
「身体のことは言われますね」
難しい顔での言葉だった。
「誰かに」
「そうだな、正反対でもな」
「言われます」
「背が欲しかった」
滝沢は飲みつつ本音を話した。
ページ上へ戻る