夢幻水滸伝
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第八十話 東海と甲信その十三
「お酒も飲みましょう」
「ああ、そろそろだぎゃな」
「もう結構食べましたし」
「すきっ腹でなくなったらだがや」
「飲んでもいいです」
「すきっ腹に酒は堪えるだがや」
「そうです、胃によくないですし酔いが即座に回ってしまいます」
こうなってしまってというのだ。
「身体にはあまりよくありません」
「だからだぎゃな」
「まずはです」
飲む時はというのだ。
「お酒を飲む時は」
「最初に食べることだぎゃな」
「それがいいです、では」
「今からだぎゃな」
「この味噌煮込みうどんを肴に」
そうしてというのだ。
「飲みましょう」
「そうするだがや。名古屋の酒は美味いぎゃ」
「駿府のもありますよ」
「そっちも美味いだがや」
「お米とお水がいいと」
この二つがというのだ。
「やはりです」
「酒も美味くなるだがや」
「お酒はこの二つから造りますからね」
どちらが駄目でも味が落ちるのだ、それが日本酒というものだ。
「ですから」
「そうだがや、では」
「今宵も飲みましょう」
「蜜柑も食べて」
「そうしましょう」
こう話してだ、坂口と雅は味噌煮込みうどんだけでなく酒や蜜柑も楽しんだ。そしてこのことは滝沢と正宗も同じだった。
二人もまた陣中で夕食を楽しんでいた、食べているのは甲斐の味噌で味付けをして茸や野菜、鶏肉を多く入れたほうとうだ。
そのほうとうを食いつつだ、正宗は滝沢に話した。
「何処で戦うか」
「それが重要だな」
「やはり信濃で戦いたいですね」
こう言うのだった。
「我々の国で」
「そうだな、敵地で戦うとな」
「地の利がないので」
それ故にというのだ。
「劣勢になります」
「そうだな、地の利が大事だ」
「こちらは兵の数と装備で劣勢です」
「だから地の利を使わないとな」
「余計に難しいです」
勝つことはというのだ。
「そうなので」
「ここはな」
「敵を信濃に誘き寄せましょう」
「そうしよう、そしてな」
ほうとう、きし麺にも見えるそれを食べながらだ。滝沢は自分と同じものを食べている正宗に応えて話した。
「どう戦うかだ」
「そうです、まず棟梁は騎馬隊を率いておられますので」
「平地だな」
「少なくとも前から騎馬隊で突進できる」
「そうした場所で戦うべきだな」
「そして拙僧の僧兵隊ですが」
正宗は自分が率いる兵達のことにも言及した。
「どう用いるか」
「それも大事だな」
「我々は飛び道具には乏しいです」
「そこが大事だな」
「そうです、それに対して敵はです」
東海の勢力はというのだ。
「槍に弓矢、鉄砲とです」
「空船も多いしな」
「飛べる者達も」
「我々も空船や飛べる者達はいますが」
「少ないな」
「特に空船が少ないです」
数隻しかない、彼等にとってこのことは悩みどころになっている。
「どうしてもこのことが弱みです」
「まことにな」
「こうしたことを踏まえて戦わないといけないですが」
「どうするか」
「やはり奇襲しかないですね」
これが正宗の考えだった。
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