憑依先が朱菜ちゃんだった件
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第18話
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回はVSドワーフ王の話です。
ドワーフ王の相手は原作通りなのか?はたまた、別の誰かなのか?
その辺りは本編を楽しみながら確認してみてください。(笑)
【視点:朱菜】
私達の里にドワルゴンから飛行武装集団―――確か、天翔騎士団だったでしょうか?兎に角、天馬に騎乗した約500の騎兵がやって来たので、それだけの大所帯が着陸できる場所に誘導しなければいけません。
里の上空は半球状に形成された四紫炎陣の雷遁verといえる結界を張ってますからね。結界に触れたら、1時間もしない内に炭化を通り越して灰になってしまいます。
もし、この結界を抜けられる者がいるとするなら災禍級上位以上の存在か、『電流無効』や『全属性無効』の技能を持つ存在だけでしょう。
そんな訳で飛雷神の術で里の外へと跳んだ私は誘導の為、如意羽衣の部分変化で天騒翼を形成し、天翔騎士団の所へと向かいます。
「そこの武装集団に警告します。私達の里には侵入防止の攻性結界が張られています。上空から侵入しようとした場合、高圧電流で骨すら残さず灰になります。私達の里に用があるのなら、私の指示に従いなさい」
「小娘。貴様、一体何者だ?」
「私はジュラの森の盟主代理であり、あの里の大老―――森の盟主であり、里長であるリムル様の相談役を務める大筒木朱菜です」
「……我が国の暗部から銀髪と桃髪の魔人が豚頭帝を討伐したという報告を受けた。貴様はその片割れだな?」
「豚頭帝?それなら私達ではありません。私達が討伐したのは魔王へと進化を果たした豚頭魔王です。
豚頭帝を討伐した魔人をお探しであれば、私達の里は無関係。他の場所へと向かわれては如何でしょう?」
「「「「「「「「「「豚頭魔王!!?」」」」」」」」」」
「…………ふむ。豚頭帝ではなく豚頭魔王を討伐した、と。討伐したのはオオツツキ殿か?」
「いいえ。討伐されたのは我らが聖上であられるリムル様です」
「………成程。豚頭魔王は豚頭帝を遥かに上回る脅威。それを討伐したとあれば、隣国の王として相応の礼をせねばならん。オオツツキ殿。汝の主であるリムル殿に会わせて貰えんか?」
「…………畏まりました。ですが、リムル様に傲岸不遜な態度を取らぬようお願いします。それでは天馬が着陸できる場所へと誘導させて頂きます」
【視点:ガゼル】
オオツツキ=シュナという名有りの誘導に従い、城壁に囲まれた町の外へと降り立った俺達を待っていたのは複数人の魔人であった。
その場にいた魔人の最低危険度ランクはB+。私見だが特Aランク――厄災級に相当する者が多く、中にはSランク――災禍級に相当する者も3名いた。
災禍級相当の魔人の中でS+と思われる銀髪の魔人が1人。恐らく、この魔人がオオツツキ殿の言っていたリムルという魔人なのだろう。
それにしても、この魔人の町は何なのだ?災禍級相当の魔人が3――いや、オオツツキ殿も恐らくは災禍級。そう考えると災禍級相当の魔物が4名。
厄災級相当の魔人が6名。災害級に相当する魔人と魔物が5名。これだけの戦力が手を組んでいるとなると、その危険度は天災級――特S-に相当する。
城壁の内側にどれだけの魔人と魔物がいるかは分からんが、町の規模から考えると最低でも1万の住人は居るだろう。その住人全員の最低危険度ランクがB以上であるのなら、総合的な危険度は特Sとなる。
如何に我が国の精鋭部隊である天翔騎士団といえど、たった500人では天災級に相当する1万以上の魔人、魔物の集団に勝利することなど出来ぬ。
天災級という存在は決して見過ごすことのできぬ人類への脅威。普通ならばそう判断するべきなのだが、少なくともこの場に居る魔人、魔物に対して俺は即断できずにいた。
その理由は我が国から国外追放となり、スライムと共にジュラの大森林へと去ったカイジンが魔人達と共にいたからだ。
俺がスライムの監視を命じた暗部からの報告では、この場にいる魔人達の出現と同時にスライムは姿を現さなくなったとのこと。
ほんの僅かな可能性と消去法で考えると銀髪の魔人=スライムということになるのだが、これはあまりに荒唐無稽な考えだ。
……何はともあれ、カイジンの状態を見る限りは奴隷扱いではなく魔人達と共存共栄関係にあることが把握できる。それ故に俺は魔人達の危険度を計りかねてもいるのだが………。
「まさか、この様な形で再びご尊顔を拝することになろうとは、思ってもおりませんでした。ガゼル王よ」
「うむ。久しいな、カイジン。ところで貴様を連れて行ったスライムは―――」
「久し振りだな、ガゼル王」
俺がカイジンにスライムのことを聞こうとすると、銀髪の魔人が話し掛けてきた。久し振り?何を言っておるのだ、この魔人は?
「すまぬが貴殿と俺はどこかで会ったことがあるのか?」
「忘れたのか?俺だよ、俺。リムル。リムル=テンペストだよ」
「リムル?確か、オオツツキ殿が言っていたジュラの大森林の新たな盟主で、この町の長の名であったな。だが、俺の知人にリムルという名の魔人はおらぬ。やはり、貴殿とは初対面の筈だ」
「あ、あれ?」
「旦那。ガゼル王は旦那の名前も今の姿も知りませんよ」
「そうだっけ?今の姿は兎も角、名前は裁判の時に――」
「裁判の時は王の許しが無かったら一切発言できないって教えただろ?」
「………あっ。そういえば、あの時ガゼル王と会話したのってお前だけだっけ?半年も経ってない筈なのに、すっかり忘れてたわ」
カイジンとの会話から察するに、この銀髪の魔人はあの時のスライムの様だな。だが、スライムが人に擬態するなど聞いたこともない。
「……貴殿は本当にあの時のスライムなのか?」
「そうだよ」
「名有りの様だが、名有りになってから人に擬態できる様になったのか?」
「いいや。裁判の時には既に名有りだったけど、人に擬態できる様になったのはドワルゴンを出入り禁止になって以降だ。色々とあってね。信じられないなら裁判の内容でも話そうか?」
「いいや。そこまでする必要はない。しかし、スライムがジュラの大森林の盟主とは、些か信じられぬな」
そう。この町の長であることは百歩譲って信じられたとしても、スライムがジュラの盟主など信じられぬ。おっと、俺の発言に対してこの者の家臣と思しき魔人達が殺気立ち始めたな。
魔人達の殺気に対して、我が家臣達も武器に手を掛けている。このままでは一触即発の事態となりかねん。だが、未確認の事柄に対して謝罪ができる程、王という立場は軽くも無い。この事態を収拾するにはどうしたものか……。
【視点:リムル】
………やべぇ。ガゼル王の発言に対して、紅麗達が超殺気立ってるよ。特に蒼月と蒼影の笑みが超怖い。逆に朱菜は全く殺気立ってない。何でだ?いや、朱菜が殺気立たないことはいいことなんだけど。
俺がそんなことを考えていると、俺とガゼル王の間に3枚の木の葉が舞い落ち、3人の樹妖精が姿を現した。その内の1人は俺のよく知ってる樹妖精で―――
「ドワーフ王。森の管理者である私達樹妖精が盟主と認めた方に無礼な態度を取るのは止めて頂きましょうか」
「「「「「「「「「「樹妖精!?」」」」」」」」」」
「やぁ、トレイニーさん。会うのは同盟締結以来かな?」
「ご無沙汰しております、リムル様」
「………ふむ。樹妖精の態度を見る限り、貴殿がこの森の盟主であることは事実の様だ。だが、俺達には他にも確認せねばならぬことがある」
「他に確認しなきゃいけないこと?」
「貴殿らが人に仇為す魔人か否か。その本質を見極めねばならぬ」
「俺達の本質を見極めるって、どうやって見極めるんだ?言葉を交わすだけじゃ駄目っぽいけど」
「簡単なことだ。俺も武人の端くれ、剣を交えれば相手の人となりを知ることはできる」
「……この場に居る全員と剣を交える気なのか?」
「貴殿がこの森の盟主であるなら、貴殿の人となりを知ることができれば、その配下のことまで心配する必要はない。森の管理者たる樹妖精が下剋上される様な愚者を盟主にするとは思えぬしな」
「ならば、リムル様の前に私と剣を交えて貰いましょう」
「何?」
「私もリムル様と同じく樹妖精であるトレイニー様によって盟主代理に選ばれました。盟主の人となりを知りたいのであれば、剣を交える相手は私でも構わない筈。それとも魔人とは言え女に負ける危険性は冒せませんか?」
うおっ!ここに来て朱菜がガゼル王を煽り始めたぞ。これはあれか?さっきまでの俺に対する煽りの逆襲か!?
あと、紅麗達と同じくガゼル王の部下も煽り耐性がないのか?武器に手を掛けた奴が何人かいるぞ。ガゼル王が手を出すな的なジェスチャーをしたことで手を離したけど。
「ふむ。俺は手合せする以上、相手が女でも手加減ができん。それでも構わんか?」
「構いません。逆に私の方が手心を加えましょう。亜人より能力的に格上な魔人なので」
「あの、朱菜さん?さっきからガゼル王に刺々しくないですか?」
「刺々しく等ありませんよ、リムル様。ガゼル王がリムル様に無礼な態度を取ったことなど、別に気にしてもいません」
語るに落ちるとは正にこのことだ。ここは止めるべきか?けど、朱菜も手心を加えると言ってるし、尾獣チャクラモードとか六道仙人モードを使うことは無いと思うし………。
あっ!朱菜がいつの間にか鋼金暗器を、ガゼル王も剣を抜いて構えてる!これはもう止められそうにないぞ!!
取り敢えず、人間や亜人も含めた他種族との友好関係の構築を考えている俺としては、交友断絶になりそうな勝負だけは絶対に避けて欲しい。
「トレイニー様、立会人をお願いします」
「………では、僭越ながら立会人を務めさせて頂きます。始め!」
トレイニーさんの開始の合図と共に駆け出す朱菜に対し、開始地点から一歩も動こうとしないガゼル王。あれは朱菜が女だからって油断しているな。
しかし、何で朱菜は鋼金暗器を両手じゃなくて右手だけで持ってるんだ?。何か意味が―――……成程、左袖の内側から取り出した苦無を投擲する為か。
白老に鍛えられてるから少しは分かるんだが、ガゼル王は剣士としても一流だろう。投擲された苦無を避けることも弾くことも難なくできる筈。
………やっぱり、俺の予想通り難なく苦無を避けた。けど、あの苦無を避けるのは悪手だ。何故なら―――
「ッ!!?」
「あら?初見で飛雷神二の段を防がれるとは思ってもみませんでした」
投擲された苦無には飛雷神の術のマーキングが施されているからなんだが、ガゼル王は瞬間的に前方から真上へと移動した朱菜の攻撃を防いだ。
けど、朱菜の放った鋼金暗器の一撃はかなり強かったみたいで、地面に亀裂が入ってガゼル王の足が少し減り込んでる。片手で振るった攻撃の威力がこれなら、両手で振るわれた場合はどうなるんだろう?
………考えない様にしよう。あっ、朱菜が飛雷神二の段に使った苦無を口に咥えて、鋼金暗器を両手で持った。
うおっ!すげぇ、連続突きだ!いや、突きの合間に横薙ぎと袈裟斬り、斬り上げも加えている。ガゼル王が防戦一方だ。
「……剣士としての腕はお父様や白老ほどではありませんが、お兄様より上の様ですね。手心を加えた状態で正面から打ち破るには時間が掛かりそうなので、変則的な攻撃を仕掛けてみましょう」
朱菜はそう言うや否やガゼル王から距離を取り、一瞬で鋼金暗器の形状を変化させた。
「鋼金暗器、二之型・龍――鎖鎌」
「……形状を変化させるとは、珍しい武器を持っているものだ」
「この鋼金暗器は6つの顔を持っています。ガゼル王はいくつの顔を見れるのでしょうね?」
「久々に血が滾ってきた。残りの4つも見せて貰うとしよう」
朱菜が鎖を振り回しながら挑発すると、ガゼル王は獰猛な笑みを浮かべながらそう口にした。このおっさん、もしかして戦闘狂なのか?
朱菜が巧みに操る鎖鎌はガゼル王の鎧を傷付けることはあっても、体には一切傷を付けられずにいた。これは朱菜が手加減しているからなのか?はたまた、ガゼル王が紙一重で避けているからなのか?
あっ!ガゼル王が鎖鎌の動きを読み切って、朱菜との間合いを詰めた。朱菜も鎌の方を引き戻したけど、近距離では鎖鎌は不利―――おい、いつの間に鎖鎌から鋏に変わった?
「三之型・極――大鋏」
朱菜はガゼル王の一撃を白刃取りの様に大鋏の刃で挟み込んで受け止める。見応えのある攻防だけど、そろそろ止めた方がいいかな?このまま続けさせたら、人となりを知る為の試合が死合になりそうだし。
「おーい。俺達の人となりを知る為に始めた勝負ならそろそろ終わらせてもいいんじゃないか?十分過ぎる位刃を交わしただろ?」
俺がそう告げると、ガゼル王と朱菜は同時に視線を向けてきた。そして、天翔騎士団(?)の騎士達は「よくぞ止めてくれた!」的な視線を向けて来る。
「そうだな。では、次の一撃を最後としよう」
ガゼル王はそう言うや否や、姿を消した。この技は白老と始めてた戦った時に使われた技に似ている。次にガゼル王が姿を現した時、朱菜は袈裟斬りで真っ二つになっていた。
と思いきや、真っ二つになったのは丸太だった。変わり身の術で入れ替わった様だ。そして、本物の朱菜は鋼金暗器を一之型・牙――薙刀へと戻し、ガゼル王の背後からその刃を突き付けていた。
よくよく見てみると、ガゼル王の背後の地面には飛雷神のマーキングがされた苦無が刺さってる。いつの間に投げたのか分からないけど、飛雷神の術も使ってガゼル王の背後を取ったんだな。
「勝負あり、ですね」
「うむ。こうも容易く背後を取られては俺の完敗だ」
どうやら勝負は決した様だ、けど、この勝負で俺達の人となりを把握できたのだろうか?見応えのある攻防ではあったけど、朱菜の攻撃手段って搦め手とか意表を突くのが多かった様な。
後書き
という訳で、18話でした。
ガビルの時は煽り耐性が低かった朱菜も少しは成長しました。(笑)
(特に卑劣様の飛雷神切りや飛雷神二の段&超大玉螺旋丸のコンボを使用しない辺りに成長が見られます)
当然のことながら、本編の朱菜は尾獣チャクラモードどころか、普通の仙人モードすら使ってません。(笑)
次話は建国話とミリム来襲の話を投稿する予定です。
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