憑依先が朱菜ちゃんだった件
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魔王来襲編
第17話 改訂版 (2019/01/17)
前書き
おはこんばんにちは、沙羅双樹です。
今回の視点はミリムとリムルの2人なんですが、2人の視点で時間軸が異なっていたりします。
先にミリム視点から始まりますが、時間軸的にはミリムの方がリムル視点より後の話になります。
そのことをご了承の上で本文を読んで頂けると幸いです。
【視点:ミリム】
豚頭帝の件でクレイマンに呼び出された私は同じ十大魔王の1人あるフレイを連れて、同じく十大魔王の1人であるクレイマンの屋敷へとやって来たのだ。
「クレイマン!豚頭帝のことで話したいこととは何なのだ?豚頭帝が無事に豚頭魔王へと進化したか?」
「そのことなんですが、豚頭帝が討ち取られた為、新たな魔王を誕生させる計画は白紙になりました」
「……は?」
クレイマンは何を言ってるのだ?豚頭帝が討ち取られた?冗談にしては笑えないのだ。けど、受け狙いの可能性もあるから、大人の私は笑ってやるのだ。
「わはははは!クレイマンも偶には面白い冗談を言うのだ!」
「冗談ではありませんよ」
「20万の軍勢を率いた豚頭帝を討ち取れる奴等、上位魔人以上で無いと不可能なのだ」
「その上位魔人以上の存在が現れたのですよ」
「はは、は……。………本当に討ち取られたのか?」
「ええ。討ち取られたのは変え様のない事実です。まぁ、私の口から話しても信じられないでしょうから、実際に見て頂きましょう。………と、その前に1つ気になることがあります。どうしてフレイがこの場に居るのですか?」
「面白い話は皆でした方がより一層面白くなるからな。私が誘ったのだ!」
「………おいおい。元々は俺とミリム、クレイマンの3人で進めていた計画なのに、バラしちまっていいのかよ?」
「……ミリムの突拍子もない行動は今更ですよ、カリオン。この際ですからフレイも巻き込みましょう」
クレイマンはそう言うと4つの水晶を取り出して、記録していた映像を流し出したのだ。
「この水晶球は少し特殊な物でして、水晶球越しでも相手の魔素量を感じ取れる仕様なんですよ」
「………こいつらは大鬼族と鬼人族―――いや、妖鬼か?」
「大半が大鬼族と妖鬼みたいだけど、何名かは妖鬼を凌駕する魔素を持っているわ。妖鬼以上の上位種族かしら?
この紅髪の男なんて私達程じゃないけど、魔王クラスの魔素を持ってるんじゃない?」
「シス湖付近にある湿地帯での戦いの映像です。豚頭帝より興味深い者達が映っているでしょう?特に興味深いのは―――」
クレイマンがそういうと2つの水晶に2人の人物が映ったのだ。1人は銀髪のちっこい奴。もう1人は桃髪の女だったのだ。
「おおっ!…………ん?」
「おいおい、マジかよ!?この銀髪のガキ、ディーノ程じゃねぇけど、俺やフレイより魔素量が多いんじゃねぇか!!?確実に魔王級だぞ!!」
「それよりも驚くのはこっちの娘ね。ミリムと同等の魔素量かも知れないわよ。これだけの魔素量があるということは、確実に名有りでしょうけど、何でこれだけの力を持った魔人が今まで知られてなかったのかしら?」
「その点に関しては私も疑問に思っていましたが、彼らが住んでいるのは不可侵条約で守られているジュラの大森林。魔王は誰も確認できなかったのでしょう」
この銀髪、どこかで会ったことが………。いや、会ったことは無いのだ。けど、会ったことがある様な感じもするのだ。何なのだ、この感覚は?
「…………」
「あー……。確かに、不可侵条約が無かったらギィ辺りが接触してそうだもんな。三下のゲルミュッドの名付けで生まれたとも思えねぇし、偶発的に生まれた特殊個体って所か?」
「そう考えるのが妥当でしょうね。魔王級の特殊個体が2人も生まれて、協力関係にあるのは納得できないけど」
「実際の所、この2名は大鬼族や妖鬼、黒嵐星狼を一緒に従えているので、協力関係にあると考えるべきでしょう」
会ったことが無いのに会ったことがある。おかしな感覚な筈なのに、気持ち悪かったりはしないのだ。逆に何かポカポカする様な……?
「……………」
「俺達より強い魔王級特殊個体が存在しているのは想定外だな。強者を配下に加えられるチャンスと思ったから計画にも乗ったが、この2人を敵に回すことだけは避けてぇ」
「……そうね。ミリムと同等の魔素量を持つ娘を敵に回した日には国ごと滅ぼされかねないもの。配下に加えるのではなく、友好関係を築く方向で話を進めるべきね。ただ――――」
「友好関係を結びたくても、不可侵条約のせいで俺らはこいつらと接触できないんだよなぁ………。ってか、ミリムはさっきから黙り込んでどうしたんだ?」
「ずっと銀髪の特殊個体の水晶球を見てたわね?その特殊個体に何か気になる点でもあるの?」
「意外ですね。ミリムが気にするとしたら桃髪の特殊個体だと思ったのですが」
カリオンもフレイもクレイマンも五月蠅いのだ。私は今、この銀髪に感じる感覚が何か考えてる所なのだ。
「この銀髪を見てると変な感覚に襲われるのだ。知らない筈なのに知ってる様な、安心感を覚える様な……」
そうなのだ!安心感なのだ。ポカポカは1人で居る時ではなく、フレイ達と一緒にいる時の感覚に似てるのだ!
「何だ?お前、この銀髪に惚れたのか?」
「実年齢が私達より上でも精神年齢は見た目相応ということかしら?」
「本当に意外ですね……」
「………カリオン。ふざけたことばかり言ってると半殺しにするのだ」
「うぇッ!?何で半殺しの対象が俺だけなんだよ!?フレイとクレイマンも同罪だろ!!?」
「というか、お前達は何でジュラの大森林に行くのを躊躇してるのだ?」
「おい、俺を無視してんじゃねぇよ!最古の魔王の癖に大人気無さ過ぎだろ!!」
「だから、彼らと友好関係を結ぶにも不可侵条約のせいで行けないじゃない」
「あれ?フレイ?何でお前まで俺を無視してんだ?」
「不可侵条約など、この場に魔王が4人もいるのだから撤廃できるではないか」
「「………あっ!?」」
「おーい。言い出しっぺの俺が悪かったから無視すんのは止めてくれ、ってか、同罪のフレイとクレイマンも無視すんな」
……カリオンも反省したみたいだし、そろそろ許してやるのだ。無視し続けた結果、いい歳した男が泣いたりしたらキモいだけなのだ。
「おい。今、すげぇ失礼なことを考えなかったか?」
「カリオンは何を言ってるのだ?そんなことより、今この場に居る私達で不可侵条約を撤廃するのだ。そもそも、あの条約は魔王が暴風竜の封印に干渉しない様にする為に締結されたものなのだ。暴風竜が消滅した以上、不可侵条約など必要ない。そうであろう?」
「……取り敢えず、条約撤廃に関しては賛成だ」
「私も領土が森に接してるから、条約が撤廃されると助かるわ」
「私も2人と同じく賛成です」
カリオン、フレイ、クレイマンの順番で3人が条約撤廃に賛成すると、クレイマンが他の魔王達に通達する為の紙を取り出したのだ。流石はクレイマン、仕事が早いのだ。
私達は全員がその紙にサインをすると、恨みっこなしの早い者勝ちというルールで動き出す。すぐに挨拶に行くから待っているのだ、銀髪!
【視点:リムル】
豚頭魔王との戦いから既に3ヶ月が経った。言葉にすれば一言だが、この3ヵ月の間に色んなことがあった。
まず、生き残った約14万の豚頭族の名付けと受け入れ。ぶっちゃけ、名付け地獄過ぎるので、付ける名前も住む場所と数字、性別―――M001Mみたいな適当なものにする予定だった。
だが、朱菜の提案で俺が名付けを行う人数は豚頭魔王直轄の豚頭親衛隊2000人だけとなった。
まぁ、人数が減った代わりに2000人分のちゃんとした名前を考えて付けることになったんだが……。残りの13万5000以上の豚頭族はどうしたのかというと、朱菜が影分身1000体を動員して名字込の名付けを行った。
1000体の影分身を動員すれば、1人辺りに割り当てられる豚頭族の数は135人前後。普通の影分身なら10人名付けた時点で魔素切れ、チャクラ切れを起こして消滅するけど、朱菜の場合は例外だ。
尾獣チャクラモードと影分身の特性を活かしたチャクラの連結。更に本体である朱菜自身が仙術チャクラを練り続けて影分身に供給すれば、影分身も簡単には魔素切れ、チャクラ切れを起こすことがない。
影分身を使った名付けに問題があるとしたら、同姓同名の豚頭族が量産されることだろうか?まぁ、豚頭族の戸籍作成と管理を行った地官長・大司徒であるリリナ曰く、1つの名前に対する同姓同名の豚頭族の数は10人以下だったらしいけど。
ちなみに朱菜が豚頭族達に名付けた姓は秋道。名は蝶の名前に因んだものが多かった。例えば、女性豚頭族に秋道揚羽とか秋道紋白といった名前の者がいる。
何故に蝶?と思って聞いてみたりもしたが、朱菜曰く特に意味は無いそうだ。というか、朱菜って本当に転生者じゃないのかな?名付けられた豚頭族の中に秋道モスラとか秋道バトラって名前のがいたし。
モスラとバトラって、あれだよな?あの国民的怪獣映画に登場する守護神的な怪獣。確か、あいつは蝶じゃなくて蛾がモデルだった気もするけど。
あと、秋道ガイラとか秋道レイラってのもいたけど、あれって鎧モスラとレインボーモスラの略称じゃないかと俺は思ってる。けど、確認したくてもできないんだよな。
この世界にモスラやバトラっていう種族名の蝶型の魔物がいないとも言い切れないし。名付けられる側はどんな名前でも拒否する権利とか無さそうだから、他の魔物の種族名を付けられても文句を言えなかった可能性がある。
…………まぁ、1人で考えても答えは出ないんだ。このことに関しては考えるのを止めよう。で、話を戻すけど朱菜の名付けを行った豚頭族達は全員が豚頭族の上位種である猪人族を更に一段階進化させた猪人英雄へと進化した。
ちなみに俺が名付けを行った豚頭親衛隊2000人にも秋道の姓と個別の名前を与え、豚頭魔王の腹心だった豚頭将軍には秋道ゲルドの名を与えた。
名付けの結果はゲルドが猪人帝に、他の豚頭親衛隊達は猪人将軍へと進化するというものだった。
しかも、全員が特殊技能持ち。技能名は『秋道之系譜』。全身もしくは体の一部を巨大化させられたりする身体強化系の技能らしい。
他にも戦後会議に参加していた子鬼族達が一族郎党を引き連れて俺達の里にやって来た。
弱小種族である彼らを追い帰す訳にもいかず、受け入れて名付けを行ったんだが、その数が数千近くだった為、俺と朱菜は二度目の名付けデスマーチを体験することになった。
………いや、あれはデスマーチという程でも無かったか。ゴブタ達の名前をちょっと弄った名前を付けたし。ゴブータとかゴッブータとか。あと苗字はリグル達とは別で猿飛って苗字にした。
苗字の提案をして来たのは当然のことだが朱菜。けど、何故に猿飛?全員忍者にでもする気か?いや、実際の所うちの名有りは全員が特別技能『忍法』を獲得してるから忍者なんだけど。
あと、蜥蜴人族の首領・アビルから勘当されたガビルとその部下達+αもうちの里にやって来た。どうやら俺達の配下になりに来たそうだ。
朱菜は嫌そうな顔をしてたけど、俺はそれなりにガビルのことを気に入ってたので、ガビル達の事も受け入れて、姓を含む名付けを行った。
ガビル達に与えた姓は山中。そして、ガビル達が進化して至った種族は龍人族だ。正確にはガビルは龍人王、ガビルの側近だった3人は龍人将軍が2名と龍人英雄が1名。
ガビルの妹でアビルの親衛隊長をしていた蜥蜴人族――山中蒼華は龍忍族という竜の角と翼が生えている以外はかなり人間に近い姿へと進化した。
あっ、ガビル達も特殊技能を獲得したぞ。獲得した特殊技能は『山中之系譜』。精神攻撃と感知に特化した技能だ。
取り敢えず、住人も増えてこれからより一層里を発展させ、平和な日常を堪能しようと思っていたんだが、その矢先に新たな問題がやって来た。
「リムル様、北から多数の気配がこの里に接近しています。数は500といった所です」
感知したのが朱菜でなければ、報告内容を笑い飛ばしていただろう。何故なら、俺達の里の北側には山と武装国家ドワルゴンしかないからだ。
集団で移動しているなら小規模でもドワルゴンの軍隊である可能性がある。ドワルゴンにちょっかいを掛けた記憶は無いんだけどな。
取り敢えず、500の集団と接触できそうな開けた所に幹部メンバーと行ってみることにしよう。里は地中・空に関わらず球状の結界で覆われてるからな。
後書き
という訳で17話でした。
本文では説明されていないのですが、里を覆っている結界のモデルはBLEACHの遮魂膜です。朱菜の考案した雷遁ベース結界で触れた瞬間に消し炭になるレベルの超高圧電流が流れる設定です。
(もし、この結界を突破できる者がいるとするなら、災禍級の中でも上位の魔王だけでしょう(笑))
さて、次話はドワーフ王との対決と建国話です。順調に執筆できれば来週にでも投稿できそうですが、2月投稿になる可能性が高そうです。
まぁ、どちらにしても頑張って執筆したいと思います。そんな訳で、次話もよろしくお願いします!!
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