クロスウォーズアドベンチャー
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第56話:魔王の配下
ニューヨークのデジモン騒動を終わらせた大輔達は騒ぎ立てる空と京を強引に引き摺ってインペリアルドラモンXDMに乗せる。
「うわーん、ピロシキー!!ボルシチー!!」
「日本でも食おうと思えば食えるだろ」
「本場のが食べたいのー!!」
「うるせえ、凸!!」
騒ぎ立てる京に大輔の怒声が響き渡る。
「ヒカリ~、ニューヨークのクリスマスツリーは綺麗だったよ」
「本当?」
「うん、来年はヒカリもニューヨークに行って見に行こうよ」
「え、えっと…そう簡単に不法入国出来ないんじゃ…」
今回は軍隊などがデジモンに気を取られていたから何とか入国出来たが、何もない時に向かえば問答無用で攻撃か何かをされるだろう。
「まあ、なっちゃん。もう少し待て。いずれ連れてってやるよ」
「はーい」
「にしても、アルケニモンとマミーモンめ…現実世界のあちこちにダークタワーを建てやがって…」
「そのことなんだが、大輔…」
「ん?」
「俺は…黒幕を見た」
「何!?いつ?どこで!?」
大輔がブラックアグモンに詰め寄り、全員の視線が向けられた。
「アルケニモンとマミーモンの創造主を名乗る及川悠紀夫という男だ。見た目は…貧弱そうな人間だったがな」
「見た目は人間?」
「人間にしては異質な奴だ。奴の体から妙な影が噴き出したかと思えば次の瞬間吹き飛ばされていた。究極体の姿だった俺がだ…」
「その及川悠紀夫って奴…どんな奴だった?」
「ふむ…」
ブラックアグモンは及川悠紀夫の特徴を言い始める。
丈はポケットからメモ帳を取り出して及川悠紀夫の特徴をメモ帳に書いていく。
「はい」
丈が及川悠紀夫の特徴を書いたメモ帳のページを取って大輔に差し出す。
「すみません…みんな…家族にこういう特徴の人を知らないか聞いてみてくれないか?」
大輔は丈に頭を下げ、仲間に情報収集を頼むと、全員が頷いてくれた。
「さあて…しばらく忙しくなりそうだなあ」
「ぼやくなぼやくな。俺達も力貸すからさ」
太一が大輔の肩をポンと叩きながら言うと大輔も頷いた。
「大輔…お前さあ、成長したよなあ」
「初めてデジタルワールドに行ってからもう1年以上経ってるんですよ?成長の1つや2つくらいしますよ」
「前以上に生意気で暴力的になったけどな゙っ!!?」
脛に炸裂する回し蹴り。
尻に来ると予想していたヤマトは予想外の攻撃対処出来ずにモロに喰らってしまう。
「まあ、とにかく。向こうの世界で沢山の影響を受けました。俺もヒカリちゃん達も」
「…………」
大輔の言葉にタケルは思わずヒカリを見遣り…。
「な、何…?」
「…………うん………確かにね。ヒカリちゃんも色んな意味で変わったね」
真剣な表情で頷くタケルにヒカリは表情を引き攣らせる。
「何?タケル君?何が言いたいの?言いたいことがあるなら言えばいいじゃない…!!」
「ヒカリさん!!アカリさん直伝の肘打ち、アカリさん・ドストライクは駄目だ!!」
「大丈夫、今回はただのアカリさん・ストライクだから…!!」
「全然大丈夫じゃない!!」
「早まらないでヒカリ!!」
賢とワームモン、テイルモンがアカリ直伝の必殺技を繰り出そうとするヒカリを止めた。
「まあとにかく今日は解散。また明日ってことで」
取り敢えず今日はゆっくり休んで明日に備えようと大輔は解散を言い渡す。
そして翌日…東銀座にデジモンが出現し、大輔は慌てるが、ブイモンが寝坊してしまい、叩き起こすとマグナモンに乗せてもらい東銀座に向かった。
一方、東銀座では。
「どうした?でかい口を叩いておきながらこのざまか?」
「ぐっ…!!」
ブラックウォーグレイモンとスカルサタモンが睨み合う。
他の完全体を倒して調子に乗っていたスカルサタモンだが、いきなり現れたブラックウォーグレイモンに圧倒されている。
因みにブラックウォーグレイモンと一緒に東銀座に向かったはずのなっちゃんはまだ追い付いていない(置いていかれた)。
「ウォーブラスター!!」
ブラックウォーグレイモンがエネルギー弾を連射し、スカルサタモンを攻撃する。
それを回避するが、エネルギー弾に神経を回していたスカルサタモンの隙を突くように一気に接近し、顔面を殴り飛ばす。
ブラックウォーグレイモンは吹き飛んでいくスカルサタモンを追い掛け、追撃を仕掛けていく。
殴る、ただひたすら無慈悲にスカルサタモンを殴り続ける。
「ぎゃああああ…!?」
「あいつらは甘いから貴様にも無意識に手加減をしてくれたかもしれんが俺はそうではない。さっさとこんなつまらん戦いなど終わらせてやる。」
鋭い回し蹴りを繰り出してスカルサタモンを吹き飛ばした。
「ぐ…ぐぐぐ…」
よろめきながら起き上がるスカルサタモンにブラックウォーグレイモンは掌に掌サイズの小型のエネルギー弾を作り出す。
「つまらん戦いだった。さっさと消えるがいい…!!」
スカルサタモンに狙いを定めたブラックウォーグレイモンはエネルギー弾を投擲しようとする。
「…ん?…ヒヒッ!?」
表情を険しくしていたスカルサタモンがある物を見つけ、ニヤリと笑いながら移動した。
「む?」
スカルサタモンが取った行動に訝しむブラックウォーグレイモンだが、次の瞬間に目を顰めた。
「いっひっひ!これなーんだ!」
スカルサタモンは子供達の乗ったスクールバスを軽々と持ち上げた。
バスの中の子供達が、助けを求めて泣き叫んでいる。
「人質のつもりか?」
「そーうだ。こいつらを殺されたくなかったら…」
「やれ、俺は構わん」
【な!?】
ブラックウォーグレイモンの発言にスカルサタモンだけでなく周囲の仲間まで驚愕する。
「しかし分かっているのか?貴様が生きていられるのは人質がいるからだ…つまりそれが貴様の命を繋いでいる…ぬうぅうん!!」
ブラックウォーグレイモンの暗黒パワーに聖なるパワーが混じり始める。
「あ、暗黒パワーと聖なる力が混じり…」
「ククク…聖なる力が混じってしまっては“暗黒のガイアフォース”とは呼べんかもな…さあ、バスを破壊するならするがいい!!人質がいなくなった瞬間、ここが貴様の死に場所となるのだからなあ!!」
闇と光。
相反する力を融合させたエネルギーは凄まじく、ただ溜めているだけでも、全てを吹き飛ばすほどの力が場に淀んでいる。
それを見ていたスカルサタモンの表情は引き攣っていた。
ブラックウォーグレイモンは本気だ。
バスを破壊した瞬間、出鱈目な力を持つエネルギー弾を容赦なく投擲するだろう。
「さあ、バスを破壊しろ。一瞬で塵にしてやろう…!!」
「あ…う…」
少し後退した瞬間、全身が銃弾で撃ち抜かれていた。
「あ?」
全身に風穴が開いたスカルサタモンはゆっくりと落下していく。
「ブラック、今!!」
「遅いぞナツ!!これでくたばるがいい!!」
バスをなっちゃんが持ち上げ、ブラックウォーグレイモンは落下するスカルサタモンを上空に蹴り上げるとエネルギー弾を投擲した。
「ぎゃああああ!!?」
エネルギー弾が直撃したスカルサタモンは断末魔の叫び声を上げながら消滅した。
光と闇、相反する力が1つとなった一撃の威力は凄まじく、もしブラックウォーグレイモンが上空に打ち上げてくれなければと思うとヒヤヒヤするレベルであった。
「なっちゃんが来るまでの時間稼ぎの演技だったのね、ブラックウォーグレイモン」
「まあな…」
「よいしょ…」
なっちゃんが少し離れた場所にバスを置いて此方に駆け寄ってきた。
「ヒカリ~、バス守ったよ」
「うん、なっちゃん。偉いわ」
「ふふん♪」
シスタモン・ブランに退化したなっちゃんはヒカリに抱き付き、ヒカリは微笑んでなっちゃんの頭を撫でてやった。
「みんな!!」
「大輔…」
大輔が向こうから息を切らしながら走ってきた。
「東銀座に現れたデジモンは?」
「大丈夫、ブラックウォーグレイモンが倒してくれたわ」
「ごめん、ブイモンが寝坊したせいで」
「悪い悪い、深夜番組の秘境大冒険が面白すぎて」
「……中々やるな、選ばれし子供達よ」
「…誰だお前?」
聞こえてきた重苦しい重圧を孕む声にマグナモンが子供達を守るように立ちはだかる。
現れたデジモンはマグナモンを鋭く見据えながら口を開いた。
「……デーモンだ。一乗寺賢を渡してもらおうか?」
「賢に何の用だ?」
大輔がデーモンと名乗ったデジモンを睨み据えた。
「一乗寺賢の体内には我らが必要としている物が埋め込まれているのだ。これ以上犠牲を出して欲しくなければ、来てもらおうか」
「てめえ舐めてるのか?こっちにはマグナモンとブラックウォーグレイモンがいるし、他にも仲間がいるんだ。どっちが有利不利かは一目瞭然だろうが」
「…確かに全員で来られては厄介だがな。だが、その6匹に戦える力が残っているかな?」
【!?】
デーモンの視線がアグモン達に向けられた。
「どういう意味だ!?」
太一が声を荒げる。
デーモンは意に介さず、淡々と言葉を紡いでいく。
「その6匹は今までデジタルワールドにいたのだろう?急激な環境の変化に体がすぐに適応出来ると思うか?」
確かにスカルサタモンから攻撃を受けた後、追撃すらされていないのにも関わらず間もなく退化してしまった。
「その6匹は戦力にはならん。そこの2体以外は取るに足らん存在…大人しく一乗寺賢を渡せ。渡さなければ…」
「お生憎様だね!!」
その時、デーモンと子供達に割り込む形で大型トラックが走ってきた。
トラックの後部に掴まっていたのはアルケニモンで、彼女を睨みながらデーモンは尋ねた。
「……お前達、何者だ!」
「名乗る必要なんて無いね……一乗寺賢、あんたは私達と一緒に来るんだ」
「何っ!?」
「子供達がどうなっても良いのかい?」
そう言うと、アルケニモンがトラックの荷台を開くと、そこには相当の数の子供達がいた。
その光景に、なっちゃんはふと朝のニュースを思い出した。
「今日の朝のニュース…小学生が行方不明って…」
「お前達が誘拐したのか!?」
「まぁ、人聞きの悪い…この子達は自分から私達についてきたんだ」
子供達は暗い笑みを浮かべ、まるで感情を失ったようにこちらを見ていた。
「何故…何でなんだ!?」
「何でなんだろうねぇ…それは追々教えてあげるよ…私達についてきたらね」
そう言って、アルケニモンは意地悪く微笑んだ。
賢は悔しそうに唇を噛み締め、アルケニモンを睨みながら、手を握り締める。
意を決してトラックへ向かって歩いて行った。
「賢!」
「賢君、駄目よ!」
「行っちゃ駄目!」
大輔とヒカリとワームモンの言葉に、一瞬賢の足が止まった。
「…来るな」
ワームモンの言葉も虚しく、賢はそのままトラックの荷台に乗り込んだ。
そして、その扉をアルケニモンが乱暴に閉め、この場を去っていった。
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