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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百九十九話 柿の美味しさその七

「他の国にはイメージとしてないね」
「それはそうだな」
「例えばイギリスとか」
「うむ、あの国に柿はな」
「ちょっと合わない感じがするね」
「不思議の国のアリスが柿を食べるだろうか」
 続編に鏡の国のアリスがある、尚作者のルイス=キャロルは一緒に遊ぶ少女の一人をアリスのモデルにしたらしい。
「果たして」
「絵柄的に合わないね」
「そうだな」
「うん、ちょっとね」
 僕は柿を見つつ留美さんに応えた、今から柿にお皿の上に一緒に置かれているフォ―クを突き刺して食べる。柿は四つに切られていて皮はそのままだ。中には種は見えない。種なしの富有柿みたいだ。
「あの作品には」
「合わないな」
「ピーターパンにもね」
「ネバーランドにはなかったな」
「全然ね」
 随分といい世界に見えてもだ、ただ原作を読むと間引きしているとかどうにも気になる言葉が出て来る。
「柿は」
「他の文学作品にもな」
「柿は出て来ないね」
「勿論アーサー王も食べていない」
 イギリスの文学の最初のヒーローを描いた作品だ、留美さんは多分アーサー王ロマンスとアーサー王の死の二作品から言っている。
「柿はな」
「そうだよね」
「シェークスピアの作品にも全く出ないしガリバー旅行記にもだ」
「ホームズにもね」
「出ない」
 本当にどの作品にもだ、ここで僕達は柿にそれぞれフォ―クを刺して口に持って行った。
 それで食べる、するとその濃い優しい甘さがお口の中を占領した。その甘さを楽しみつつだ。
 僕は留美さんにだ、こう言った。
「うん、この甘さは確かにね」
「イギリスの甘さではないな」
「イギリスの甘さっていったら」
「ミルクティーにだな」
「ティーセットのお菓子って感じだね」
「そうだな、果物もあるが」
 それでもだ。
「林檎や苺だ」
「そちらだよね」
「やはり柿はな」
 こちらはだ。
「イメージにはないな」
「イギリスにはね」
「あの国の食文化はよく言われるが」
 大抵ネタにされている、それもまずいと言われて。
「しかしだ」
「それでもだね」
「柿がないことは確かだ」
 このことはというのだ。
「どうしてもな」
「柿は本当に日本独特だね」
「日本の食文化に深く根付いている」 
 留美さんはこうまで言った。
「素晴らしい果物だ」
「そうですね、神社やお寺にありましても」
 円香さんも柿を食べている、そうしつつ笑みを浮かべている。
「絵になりますし」
「俳句にもなっているな」
「法隆寺ですね」
「あの俳句にもある通りにな」
「柿はですね」
「お寺にも神社にも合う」
 そうした果物だというのだ。
「実にいいものだ」
「左様ですね、まことに」
「私もそう思う、逆に林檎だとどうだ」
 神社やお寺にというのだ。
「合うだろうか」
「何かこう」
「少し違和感があるな」
「お寺や神社の中で食べる場面を想像しますと」
「何かだな」
「少し場違いになります」
「そもそも日本に昔林檎はなかった」
 このことは僕は最近になるまで知らなかった、その他には白菜もそうだというから身近な果物や野菜も昔からあるとは限らないものだとわかる。 
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