八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九十八話 暑さ寒さもその十一
「高価極まるものだった」
「それでは織田信長さんも」
「天下人だから菓子は楽しめたと思うが」
「それでもですね」
「柿は好きだった筈だ」
このことは間違いないというのだ。
「何しろ甘党だったからな」
「本当にそうだったのですね」
「だからこの季節になるとな」
「あの人も柿を楽しんでいましたか」
「その筈だ」
「そういえば奈良はあの人の領地になっていましたね」
「上洛してすぐに勢力圏に収めている」
そこにいた松永久秀、戦国時代の中でも悪人としてそうした意味で名高いこの人が降って確かになった。
「そうなったからな、高田の辺りもな」
「私の実家がある場所も」
「大和の北の方はな」
「あの、北といいましても」
「奈良県はだな」
「人口も産業も北に集中しています」
円香さんは留美さんに大和、今で言う奈良県のその話もした。
「私の実家がある大和高田市にしましても」
「北か」
「はい、奈良市や大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、宇陀市と」
円香さんは奈良の主な市の名前を挙げて留美さんに説明した。
「全てです」
「北にあるか」
「はい、ですが南は」
こちらはというのだ。
「吉野辺りが入り口ですが」
「南朝があった場所だな」
「天武帝も一旦落ちられています」
奈良の南の方にだ、当時朝廷があった明日香はまだ北と言っていいだろう。吉野を奈良県南部の入り口とすると。
「そうした場所ですが」
「山が多く人が少ないな」
「奈良県南部全域を合わせても人口は奈良市に及びません」
そこまで少ないというのだ。
「非常に」
「それではか」
「はい、南部は広いですが」
「山が殆どでか」
「人は非常に少ないので」
そうした場所だからだというのだ。
「あちらは領土にせずとも」
「特にか」
「国力的には大したことはないです」
「成程な」
「山の民と言われる人もいたでしょう」
かつてはだ、何でもこの人達は今も日本のある場所にいるけれど取材とかはお断りで具体的な場所は殆どの人は知らない。
「そうした場所ですわ」
「そうなのか」
「ですから織田信長公も」
「まずは北を領有してか」
「満足したことも」
歴史的に天武帝や南朝のことがあってもだ。
「有り得たと思います」
「そうなのだな」
「まことに奈良県の南は」
「北と違うか」
「はい」
その奈良県民の言葉だから説得力があった。
「こちらにも出ている人がおられるとのことですが」
「奈良の南からか」
「実家に帰られることが大変かと」
「ううむ、京都市と舞鶴市の間も山が多いが」
同じ京都府でもだ、こうした違いがあるのだ。
「奈良県も相当だな」
「より険しいのでは」
「そうなのか」
「私も奈良の南は殆ど行ったことがないです」
奈良県民でもというのだ。
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