夢幻水滸伝
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第七十九話 駿府から名古屋へその四
「ですが」
「それでもですね」
「場所は何処にするか」
「そのことを考えていきますか」
「少し。どちらかの本拠地でもいいですが」
名古屋でも駿府でもだ、雅はそれもよしとした。
だがそれよりもとだ、家臣達に深く考えつつ述べた。
「しかしそれよりもです」
「いい場所がありますか」
「そうなのですか」
「浜松でしょうか」
ここがいいのではというのだ。
「丁度我々が勢力圏に収めたばかりですが」
「浜松を治める豪族が降りました」
「我々の領土と身分を保証するという誘いに乗って」
「そうしてくれましたが」
「はい、丁度双方の境にありますし」
双方のだ、お互いそこまで進出したのだ。
「それなら」
「あの城で、ですか」
「お話の場を持ちますか」
「そうしますか」
「そう提案します、しかしお話の場所は何処も考える様ですね」
雅はこのことも話した。
「思えば私の世界の今川さんもでしたね」
「あっ、駿河の守護神の」
「あの神様もですか」
今川義元はこの世界では駿河の守護神となっている、人ではなく神なのだ。尚織田信長は尾張の守護神で武田信玄は甲斐のそれになっている。
「お話の場所は考えておられましたか」
「そうなのですか」
「はい、武田信玄さんや北条氏康さんとの会談の時に」
所謂甲相駿同盟の時のことだ。
「その時にです」
「お話の場所を考えられた」
「そうだったのですか」
「そしてそのうえで会談を成功させました」
そして西の織田信長との戦いに専念したのだ、ただし桶狭間で敗れたことは雅達の世界の史実のことだ。
「そのことを考えますと」
「お話の場所は重要ですね」
「何でもない様で」
「相手と何処で話すか」
「そこで大きく変わりますね」
「同じことを話しても」
話すことはそうでもというのだ。
「この場合は駿府か名護屋でお話するよりも」
「浜松ですね」
「あちらでお話すべきですね」
「それが一番いいのですね」
「そうです、双方の境にある場所で」
まさにそこでというのだ。
「坂口さんとお会いしましょう」
「それではですね」
「今からあの城で会談の用意を」
「そうしましょう」
家臣達にも応えてだ、そしてだった。
雅は浜松城で坂口との会談の用意に入った、それは浜松での会談を了承した坂口も同じですぐに会談の用意に入った。
両者は浜松城の本丸で会った、坂口は自分の前に出て来た雅の姿を見てまずは笑ってこう言ったのだった。
「ほお、噂に聞いた以上に」
「何でしょうか」
「美人さんだがや」
こう言うのだった。
「ダークエルフの中でも特にぎゃ」
「誉めても何も出ませんよ」
雅は坂口の自分への言葉に笑って返した。
「生憎ですが。あちらの世界では交際相手募集中ですが」
「八条学園ではだがや」
「募集中ですが」
つまりそうした相手が欲しいがというのだ。
「そして誉めてくれることは嬉しいですが」
「それでもだがや」
「何も出ませんよ」
「いやいや、笑顔が出たぎゃ」
「それがですか」
「そうだがや」
「ううむ、そうきましたか」
雅は今度は苦笑いになって述べた。
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