夢幻水滸伝
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第七十九話 駿府から名古屋へその三
「けど一線は越えん娘だぎゃ」
「あれで、ですね」
「一線は越えない」
「そうした人ですか」
「人を殺したり家族を人質にとはせんだがや」
そうした謀略は採っていないというのだ。
「そこはあくまでぎゃ」
「守っていますか」
「例え謀略を駆使していても」
「だからですか」
「棟梁が駿府に行かれても」
「話をする時はそれに専念する娘だぎゃ」
このことを見抜いていての言葉だ。
「策士でも潔癖な策士だがや」
「だから人を殺したりはしない」
「卑劣と思われる様な策は採らない」
「そうした娘ですか」
「そうだがや」
まさにというのだ。
「それでだがや」
「あの人の本拠地に赴かれても」
「それでもですか」
「問題ありませんですか」
「そうだがや、それに駿府に行って」
坂口はここで笑ってこうも言った。
「蕎麦と駿河の海の幸、それに蜜柑を楽しむのもいいだがや」
「そこで食べものですか」
「確かに駿河は豊かな場所です」
「食べものも美味しいです」
「この尾張も美味しいものが多いにしてもぎゃ」
このことは事実でもというのだ。
「それでもだぎゃ」
「駿河も美味いものが多いので」
「だからですか」
「行ってもいいですか」
「特にお茶だがや」
これだというのだ。
「駿河といえば」
「ああ、実際にお茶をかなり栽培していますし」
「それでかなり儲けてもいますし」
「そのお茶も楽しみたいのですね」
「そうだがや、わしは酒好きだがお茶も好きだがや」
それでというのだ。
「駿府に行ったらだがや」
「お茶ですね」
「お茶も飲んで」
「そうしてですね」
「楽しみたいだがや」
是非にと言うのだった、そしてだった。
雅に彼も文を書いてそれを送った、雅はその文を駿府城で読んでから自身の家臣達にこう言ったのだった。
「会いたいとです」
「返事がきましたか」
「左様ですか」
「はい、ただ問題が出ました」
雅は坂口が豪快な文字で書いてきた文を今も読みつつ家臣達に話した。
「一つ」
「と、いいますと」
「一体何でしょうか」
「そのモンぢあとは」
「場所です」
このことだというのだ。
「何処でお話をするか」
「そのことですか」
「そういえばそうですね」
「お話をするにも場所が問題です」
「そのことですか」
「坂口さんが言われるには名古屋でも駿府でもいいと」
坂口が実際に文に書いてきたことだ。
「そして他の場所でも」
「そうですか、ではですね」
「これからこのことについて考えますか」
「何処で会談するか」
「そうです、名古屋や駿府もいいですが」
考えつつだ、雅は述べた。
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