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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第35話:帰還

元の世界に帰還した大輔達、2人は穏やかな表情を浮かべていた。

「やっと終わったな、いや…俺達の戦いはまだまだこれからだな」

「うん…賢君の言っていたダークタワーをデジモンにする女の人だよね?」

「どうしてダークタワーをデジモンに出来るのか、デジタルワールドを滅茶苦茶にするのか…全て吐かせてやるぜ…」

指の関節を鳴らしながら低い声で言う大輔。

ヒカリは苦笑しながらも止めようとはしなかった。

「でも大輔君。私達、1年間向こうにいたよね?髪とか伸びちゃったし」

「ヒカリちゃん家はデジモンを知ってるんだろ?太一さん以外に全ては話せないにしても、髪が伸びたことに関してはデジタルワールドで育毛剤作用のある薬液を被ったでいいんじゃないか?実際デジタルワールドにありそうだし。」

「と、通せるかなあ?それで?」

「変に疑われるような態度を取らなきゃ普通に押し通せるぜ?普通の人なんか信じられないぜ絶対。未来の並行世界行って暴れてきましたなんてさ」

人間の嘘は堂々としてれば以外とバレない物である。

「うーん…お兄ちゃんには全て話した方がいいかな?」

「いいと思う。何時かはみんなにもすべて話すべきだと思ってる。さて、家族のことは何とかなるとして、一番の問題は伊織達だ。伊織達どうする?」

「へ?伊織君達?」

一番の問題が伊織達であることにヒカリは思わず首を傾げた。

「その女のことを伊織達に言っても情報源が賢だろ?俺達はあの1年間があったから賢とは親友の間柄になれたけど、伊織達からすれば極悪なデジモンカイザーだ。信じちゃくれねえだろ…適当に言おうとしても伊織と京はしつこく細かいこと聞いてくるぜ?伊織は知識の紋章を受け継いだし、京はあんな性格だしな」

「確かに…」

伊織は知りたがる心を強く持っているし、京も聞きたいことにはしぶとく食い下がるだろう。

「正直、伊織と京の態度によっては別行動も考えなきゃいけねえ…出来ればあまりしたくねえんだけどな…タケルは…まあ、納得しちゃくれないだろうけど、理解はしてくれるだろ」

「特に伊織君…賢君のこと凄く怒ってるもんね」

「真面目過ぎるんだよあいつは。真面目過ぎて自分が納得出来ないことを受け入れられないんだ。どんなに納得出来なくても受け入れなきゃいけないこともある。そうだろヒカリちゃん。クロスハートに暗黒系が入った時、ヒカリちゃんはあまりいい顔しなかったもんな」

「う、うん…今なら悪くないデジモンなら平気なんだけど」

今までの経験から暗黒系を苦手にしていたヒカリだが、今ではある程度は克服した。

実際、暗黒系デジモンの力が必要になる場面もあったわけで、これから先の戦いを考えると賢とワームモンの戦力は絶対に欲しい。

しかし、伊織達が賢を拒絶してチームワークが乱れるようならば、あまり考えたくはないが別行動を視野に入れなければならない。

「ふーっ、しばらくは問題山積みだな…とにかく…また明日な」

「うん…またね大輔君」

急いで自宅に向かう2人。

ヒカリは帰宅し、急いで自室に入り、服を着替えた。

流石に買った覚えのない服を着ていると怪しまれるからだ。

「よう、ヒカリ。帰ってたのか…って、どうしたお前?髪伸びてるし…背も少し伸びてないか?」

タイミングが良いのか悪いのか、太一が部屋に入ってきた。

「え、えっと…お兄ちゃん、これから私が話すことは全部本当だから驚かないで聞いて」

「…ああ……大事なことなんだろ?言ってみろよ」

真剣な表情を浮かべるヒカリに太一もまた真剣な表情を浮かべてヒカリの話に耳を傾けた。

一方大輔も自宅に帰ると大輔の姉のジュンが突っかかってきた。

「大輔、あんた何時までのんびり遊んでんのよ。あんたにお使い頼もうとしてたのに!!」

「おい、人が帰って最初に言うことがそれかよ…」

額に手を置いて深い溜め息を吐いた。

「あれ?あんた少しでかくなってない?少し声が低くなったような…」

「気のせいだろ、人を便利屋扱いしてるから間違えるんだろこの女子力0」

「何ですって!?父さんと母さんがいない時、あんたに美味しいご飯作ってんの誰だと…」

「父さんや母さんがいない時は俺が作ってたろ。家事関係で俺に偉ぶるなら卵焼き…いや、せめて目玉焼きくらい作れるようになるんだな、料理を作れば暗黒物質を生み出して、洗濯すれば服はボロボロ、整理整頓も俺以上に駄目駄目で京の姉貴の百恵さんからは同情までされてんだぞこっちは…」

「うぐぐ…だ、大輔の癖に…!!」

「ふう…で?買いたい物って何だよ?」

「え?行ってくれるわけ?珍しいー」

珍しい物を見たと言いたげなジュンに青筋が浮かびそうになるが堪える大輔。

その時、レインゾーンでのネネの言葉を思い出す。

『優しいのね大輔君。口は悪くてもきっと大輔君のお姉さんも大輔君のことを大事にしていると思うわ。だってこんなに優しい子なんだもの。きっとお姉さんも素直になれてないだけよ…。再会したら素直にお姉ちゃんって言ってみなさい?きっと喜んでもらえるわ』

「…………」

「じゃ、このお金で何時もの雑誌買ってきて。」

「分かった…じゃあ、行ってくるよ…………姉ちゃん」

「え?」

ジュンが振り返った時には既に大輔はいなかった。

「あいつ…今、“姉ちゃん”って…」

久しぶりに呼ばれたジュンは無意識に表情が綻んでいた。

「よし、たまには私があいつに何か作ってやるとしますか!!」

気合いを入れるジュンだが、それは大輔からすれば余計なことであった。

コンビニに行っていつもの雑誌を買って(京は今日は休みらしいためいなかった)帰宅したのだが、凄まじい悪臭に顔を顰めた。

「…………まさか!!」

急いで家に入り、キッチンに飛び込むとフライパンに暗黒物質を載せたジュンの姿があった。

「お帰りー。大輔、今日は私がオムライスを作って…」

「んじゃあ、味見してくれよ姉貴」

スプーンで一口分オムライス(と呼ぶのもオムライスに失礼な物体)を掬い、ジュンの口に放り込んだ。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!?…ガクッ…」

「作った本人すらダメージを喰らうのかよ…」

あまりの不味さに失神したジュンを見て呆れた表情を浮かべる大輔であった。

「でも大輔の姉ちゃんが作ったにしてはまだまともな方だよな~」

D-3Xから出て来たブイモンがオムライス?を見つめながら呟く。

以前は鍋に穴が開いたり、ゴム手袋が溶けたりしたから単純に悪臭を撒き散らし、気絶するほど不味い程度ならまだ安心出来る物である。

「これマジでどうするか…捨てようにもこんな有害物質……そうだ!!」

大輔は何かを閃き、幾重にも封印(小型の古いタッパーに入れる→新聞紙で包む→小さい箱に入れる)を施し、明日学校に持って行くことにしたのであった。

そして八神家では、ヒカリの話を聞いた太一が複雑そうに聞いていた。

「大輔と一乗寺と一緒に未来のデジタルワールドに行って、そっちで1年間過ごしてきたのか?」

「うん、と言ってもパラレルワールドみたいだから、私達の未来がそうなるとは限らないみたい」

「ふうん…俺じゃない俺が育てたアグモンが高確率でブイモンが進化するデジモンにか…何か変な感じだな」

「やっぱりそう思う?」

「ああ、やっぱりアグモンはグレイモンのイメージが俺には強いからな…」

やはり慣れ親しんだ姿の方が印象が強いのか、それ以外の姿と言うのは違和感があるようだ。

「あっちのアグモン…アルフォースブイドラモンも格好良かったよ。神様に仕えて、可愛いお弟子さんが3人もいたんだから」

「へえ…見てみたかったな。そっちのアグモン…」

「向こうのマグナモンとテイルモンも私達を見て喜んでいたから、多分アルフォースブイドラモンもお兄ちゃんに会えば喜んだよ」

「そっか…大輔には礼を言いに行かなきゃな。俺の代わりにヒカリを守ってくれてな……後、一乗寺も許してやるか。ヒカリが世話になったようだしな」

「お兄ちゃん…ありがとう」

賢を許してくれた太一にヒカリは嬉しそうに笑みを浮かべる。

「それでお兄ちゃん、デジクロスは他のデジモンも合体させられるみたいだから、アグモン達も合体させられるかもしれないよ?」

「うーん…見てみたいような、見たくないような…。アグモンが変なデジモンになったら泣くぞ俺。ところでヒカリ、お前その髪どうすんだ?背が伸びたのはまだいいけど、流石にいきなり髪が伸びたら怪しまれるんじゃないか?何なら俺が切ってやろうか?」

「え゙?そ、それはちょっと遠慮したいかな~?せっかくここまで伸ばしたんだし。勿体ない…お母さん達にはデジタルワールドで髪が伸びる何かを浴びたってことにしてお兄ちゃん!!」

「い、いやあ…お前がいいんならそれでいいんだけど。学校じゃどうすんだよ?」

流石に学校では騙すことなど出来ないのではないだろうか?

「だ、大輔君が何とかしてくれるよ!!」

「…一体どうやって大輔に誤魔化させるつもりなんだお前?何か嫌な予感がしてきたぜ…」

大輔とヒカリに降りかかりそうな物ではない気がするが、何か嫌な予感を感じた太一であった。 
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