クロスウォーズアドベンチャー
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第32話:絶望を希望に変えるために 中編
絶望を希望に変えるべく、ズィードミレニアモンの体内に侵入したタイキ達と大輔達。
「ぐっ…痛ててて…タイキさん、みんな大丈夫ですか?」
「な、何とか…ここは…?」
「どうやら侵入には成功したようだな…」
「…ああ…!」
「コトネちゃん?ああっ!?」
コトネの声に反応し、ヒカリが上を見上げた途端に声を上げた。
「X7…!!」
「インペリアルドラモン…!!」
「X7しゃん…インペリアルドラモンしゃん…」
大輔達も視線を遣ると壁の一部となり、身動き1つしないシャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMの姿があった。
「この中で俺達を存在させるために、2人はパワーの殆どを使ってくれてるんだ…」
「だが、保って数時間だ!急ぐぞ!!」
「(待て大輔!!)」
「(お前も待ちなタイキ!!)」
マグナモンとシャウトモンの声が大輔とタイキの頭に響く。
「(これを持って行け、俺が若い頃に手に入れた剣…ロングソードだ。無いよりマシだろ)」
マグナモンが大輔に差し出したのは蒼を基調とした一振りの両刃剣。
名前の割に小さい気がするが、ブイモンの体格に合わせた刃渡りなので、ブイモンからすれば確かにロングだろう。
クロンデジゾイドの中でも軽量のブルーデジゾイドなので人間の大輔でも簡単に持てる。
「(俺からも餞別だぜ!持ってきな!)」
シャウトモンもまた護身用のために自身の愛用のスタンドマイクをタイキに貸す。
「「サンキュー!!」」
大輔もタイキも別次元のパートナーと自身のパートナーに礼を言いながら突き進む。
「それにしても気持ち悪いとこだな…」
「沢山のデジタル物質やデジモンが取り込まれてるんだ。謂わば沢山の魂がズィードミレニアモンの腹に収まってるようなもんさ…綺麗な場所でも違和感ありすぎだよ」
大輔の感想に賢が走りながらツッコむ。
確かに沢山の魂が強引に収められている場所が綺麗な場所では違和感バリバリである。
しばらく走ると大輔達のD-3XとXローダーの反応が強くなる。
「むむむ~!こっちから姉しゃまの臭いがするでち~!!」
「それ変態臭い。ネネさんのXローダーの反応が近い!ズィードミレニアモンの体の中でも機能が生きていて助かった…」
もしD-3XやXローダーの機能が死んでいたらネネを見つけるのに時間がかかっただろう。
大輔は自分達の運の良さに感謝しながら突き進み、そしてある場所を曲がった時、水晶のような物に閉じ込められたネネの姿があった。
「ネネっ…!」
「ネネさん…って、ちょっとヒカリちゃん?前が見えないんだけど?」
「見ちゃ駄目~!!」
「ホアーっ!!なな何とあられもないお姿に~っ!!いい今お助けしまちーっ!!」
ヒカリは大輔の目を塞ぎ、コトネはネネの姿を見て赤面、目を自身の手で塞いでいる。
「何とな…よもやこんな所まで…君達がやって来ようとはな…」
【バグラモン…!!?】
奥から出て来たのは何とバグラモンであった。
「ホメオスタシスの予言には無かった事態だ…」
「(最悪だ…まさか皇帝バグラモンが…)」
「(滅びを見届けるために残っていたのか…!)」
バグラモンが残っていたのは賢もキリハも予想外だったらしく、表情を顰めた。
タイキと大輔はそれぞれのパートナーから借りた武器を構えた。
しかしバグラモンはそんなことを気にせず語り始めた。
「…かつて私は、人間の持つ希望と絶望…それぞれのポテンシャルを計るべく、Xローダーを作り、人間界に放った。Xローダーはそのプログラムに従い、幾人かのクロス・コードの素養を持つ少年少女をデジタルワールドに招き入れた…蒼沼キリハ、天野コトネ…君達もそうして招かれた人間だ。だが…工藤タイキ!!そして過去の並行世界の少年少女達よ!!君達は何者なのだ?君達だけが今とは違う時間、違う世界から私の関知しない力によって召喚された…君達の存在が予言に数々のイレギュラーを齎したのだろうか…尤も…今となっては、結末自体に大きな変化を与えるものではないが…」
バグラモンが異形の腕を一振りした。
【!?ぐあっ!!!?】
一瞬理解出来なかった大輔達だが、衝撃波をモロに喰らって吹き飛ばされる。
ズィードミレニアモンの肉壁に叩きつけられた大輔達。
「がっ…」
「きゃんっ…!!」
「あぐ…っ!」
生身の人間に魔王級デジモンの攻撃は弱めの衝撃波でも威力は凄まじく、相当なダメージを与えた。
「うっ…う…!」
「ゲフッ…!!」
「あっ…!ああ…!」
「ゴホッ…!」
ヒカリとコトネは痛みに震え、キリハと賢は吐血している。
「君達と共に世界の終焉を見届けたくもあったが…聞き入れるまい?君達は住む世界が違おうとも大きな夢を叶えうる才覚の持ち主だ……未来は惜しかろう…せめてここまで運命に抗ったことを誇りに…ここで眠るがいい…」
「な…んだとぉ…!」
「キリハ、コトネ。動けるか!?」
「賢もヒカリちゃんも動けるよな?俺とタイキさんが時間稼ぎをするから、ヒカリちゃん達はネネさんを!!」
「ネネを頼んだぞキリハ!!」
「大輔!?」
「たっ…タイキ、貴様っ!!」
「ネネを助けることが出来れば最後の作戦は確実に勝てるからな!全ての誇りを懸けてあの娘を取り戻すんだろ色男!!」
「さあ、早く!!バグラモン相手じゃ、俺達がどこまで時間を稼げるか分からないんで!!」
スタンドマイク、ロングソードを構えるタイキと大輔。
別次元の未来と過去のリーダーの最後の共闘が始まった。
「「うおおおおおお!!」」
大輔とタイキがバグラモンに向かって突っ込んでいく。
「生身の人間が魔王級のデジモンに立ち向かう…愚かとは言うまい。その胆力…高いモチベーション…正にジェネラルの器量と言えるだろう…工藤タイキ!本宮大輔!」
「(出来るだけ時間を稼ぐ!!死ぬわけにはいかねえ!!)」
「(動けない程のダメージを受けてもいけない…!!)」
スライディングでバグラモンの攻撃をギリギリで回避する大輔達。
「早く!!今の内に!!」
大輔が賢達に叫び、キリハはコトネを賢はヒカリと共にズィードミレニアモンの心臓部となるダークネスローダーの元に駆ける。
「是非もないが…くたばってくれるなよタイキ!!大輔!!」
「必ず助けてくる!!それまで頑張ってくれ!!」
「ムゥ…!」
バグラモンがダークネスローダーの元に駆けるキリハ達を見て、動きを止める。
「ダークネスローダーとネネさんはズィードミレニアモンの心臓みたいなもんだ…そっちに向けてはあまり本気で攻撃出来ねえだろ!?」
剣を全力でバグラモンに振り下ろす。
「何を企んで…っ!?その剣はクロンデジゾイドメタル製か!!」
剣を掌で受け止めたが、微かに痛みが走り、僅かに後退させた。
「そうさ!!ロングソードは大抵は完全体か究極体が装備しているレアメタルのクロンデジゾイド製だ!!これなら人間の俺でもあんたに僅かでもダメージを与えられる!!」
「チッ…」
「っ…うわあ!?」
バグラモンが再び衝撃波を繰り出して大輔を吹き飛ばす。
「大輔く…」
振り返ろうとするヒカリに…。
「振り返るなー!!」
「っ!!」
「俺なら大丈夫だ…ヒカリちゃんは…自分のやることに専念するんだ…みんなで…掴もうぜ…未来…!!」
「っ…うん!!」
「ヒカリさん!!早くD-3Xを!!」
「分かった!!」
キリハ達はXローダーとD-3Xを構えた。
「幼いが、君もまた1人の淑女と見た!やれるな!?」
「はいでち!!」
「それでは行きますよ!!」
賢、キリハ、ヒカリ、コトネのXローダーとD-3Xをダークネスローダーに翳す。
「XローダーとD-3Xを介して彼女の意識に接触するつもりか?だが…!」
「お前の相手は俺達だって言ってるだろ!?」
タイキはボムモンを取り出し、バグラモンに投げつける。
右腕で防がれてしまうが、それでいい。
「どりゃああああ!!」
大輔が振るった剣を今度は右腕で受け止めた。
「………君達を評するのに…小癪などと言う言葉は使いたくないぞ工藤タイキ君…本宮大輔君…!」
「「何とでも言ってくれ」」
大輔とタイキは笑みを浮かべながら距離を取った。
そしてXローダーとD-3Xによるネネの意識との接触をしていたキリハ達は暗い空間を漂っていた。
「何て暗い…悲しい空間なの…?」
「まるであの黒い海のようだ…」
「…ここは…?」
「どうやらXローダーを通して精神だけが別の世界を体験しているようだな。(差し詰めここは、天野ネネの夢の中と言ったところか…何とまあ、陰気な世界だ…)」
「あっ…!」
「コトネちゃん?」
「ヒカリしゃん、あっち!!」
コトネが指差した先には黒い影に拘束されたネネがいた。
「ネネさんだ!!急ぎましょう!!」
「ホアーっ!!姉しゃまーっ!姉しゃまーっ!!ご無事でちたか~!!」
「ようやく迎えに来たぞ天野ネネ…!!」
「ネネさん、待たせてごめんなさい!!」
キリハ達は急いでネネの元に駆け寄る。
「さあ、早くこんな所から帰るでち~!!」
「大輔君達も待ってます!!」
「今、大輔とタイキさんはバグラモンと戦ってます!!急ぎましょう!!」
「ああ!共にこの化け物を…」
「…れ…ない…」
「…!?」
ネネの言葉にコトネは目を見開く。
「私は…沢山…沢山…傷つけて…嘘を吐いて…一番大切な友達まで騙してその心を汚した…帰る所なんて…ない…」
「何を言う、君はっ…」
「姉しゃまが頑張ったからこの世界を救うチャンスが生まれたんでちっ!!」
「ネネさん、気をしっかり持って!!」
「…!?この感覚は…!?」
凄まじい悪寒を感じて振り返る。
「っ!!」
キリハ達も同じように振り返ると、黒い複眼の怪物がいた。
「彼女ハ…返サヌ…我ガ君ノ大望ノタメ…」
「まさかっ…シェイドモンかっ!?うおおっ!!」
黒い影に拘束され、動きを封じられるキリハ達。
「オ前達モ…ココデ我ガ夢ニ墜チルガイイ…」
「成る程…!貴様が彼女に悪夢を見せ続けていたわけか…丁度良い!貴様にも用があってここに来たからな…」
「君がいるのは寧ろ好都合だよ…!!」
「?…」
不敵な笑みを浮かべて言うキリハと賢にシェイドモンは訝しげな表情を浮かべた。
一方、タイキと大輔はバグラモンの攻撃で再び吹き飛ばされた。
そろそろ2人の体力は限界を迎えようとしていた。
「はあっ……はあっ…ぐっ……」
「うっっっっ…いっ……ってぇぇえええ…」
「天野ネネの意識はシェイドモンによって守られている。そこな4人の心も今に闇に飲まれよう…君達ももう…休みたまえ。最早苦しむ必要もあるまい。ここで諦めたとして、誰も君達の勇猛と献心を疑いはしない…」
「ぐっ…気遣いどうも…あんた…優しいな…優しいからデジタルワールドが汚れていくのを放っておけなくて…先に世界を消しちまおうと考えたのは…一応あんたの気持ち…分かるよ」
「けど、そんなあんたが、何で悪の親玉なんてやって不幸を撒き散らしてるんだ!?無闇な破壊はあんたの望む所じゃなかったはずだ…!」
大輔とタイキは傷だらけになりながらも、バグラモンに向かって言う。
「…悪には悪の拠り所があってはいけないのかね…?この世界においてデジモンは神は神、魔は魔、善は善、悪は悪として生まれ、死ぬまでその性質を変えることはない。悪に生まれた者は世界を呪うことを宿命づけられ、いつか必ず正義の名の下、全ての名誉を奪われて滅ぼされる…哀れな我が弟が…決して世界を愛せなかったように…!何故こんな不平等があるのか…?かつて大天使だった私は、何度もホメオスタシスにそのことを問うた…。だが、ホメオスタシスはその都度“見守るように”と答えるばかりだった…。業を煮やした私はこの世界の仕組み自体が間違っているのだと神に挑み…そして敗れた。雷に半身を焼かれ…純白だった翼も黒く焦げて散り…地上の辺境に墜ち、最早死を待つばかりだった私は…全くの偶然からそれを発見したのだ…!神のメインサーバ…情報樹イグドラシル…!!!」
「神のメインサーバ…情報樹イグドラシル…?」
初めて聞くその名に大輔は疑問符を浮かべた。
「かつて…その制御AIの極端な合理的思考から人間界をデジタルワールドに対する脅威として滅ぼそうとして急遽破棄されたシステム…ホメオスタシスはその時の教訓を踏まえて建造された穏やかで保守的な神なのだ…私はこの霊木の一部を切り出し、失われた半身に移植することによって命を長らえ…それと同時に莫大な力と知識を得た…!そして知ったのだ!!かつて…進化とは、デジモンにとってもっとありふれた出来事だったのだ。」
「…確か…マグナモンとテイルモンが言っていたな。このデジタルワールドには何時の間にか進化の概念が消えていたって…最後に進化したのはこの世界のブイモンがマグナモンに進化した時だって…」
「ほう…私以外にも進化の歴史を知る者がまだいたというのか…そのうちの1人がロイヤルナイツのマグナモン……君なら分かるのではないかね本宮大輔君?今のこの世界の異常さが…何故なら君は進化がありふれていた時代から来たのだからね。」
「正直…違和感を感じてばっかだったよ。デジモンは進化して強くなって成長するのが当たり前だと思っていたから…。生まれたらそのまんまなんて違和感しかなかった。マグナモンもテイルモンも最初は違和感しかなかったようだし…」
本人達はかつての冒険をあまり語ってはくれなかったが、この世界の自分達と別れてデジタルワールドに帰った時、あまりの変わりように戸惑ったようだ。
「そう…我々は本来強く願えば“変わり得る”種族だったのだよ…!!…だが、人の心から夢が失われて行くにつれ…我々は世界の有り様ごとその性質を変えていった…“変わり得る自分”を信じられなくなっていったのだ」
それを聞いたタイキは思わず疑問をぶつけた。
「け…けど…!だったらどうしてマグナモンとテイルモンやあんた以外そのことを誰も知らないんだ!?長生きのジジモン様や…ロイヤルナイツ一の知恵者のドゥフトモンだって進化のことは知らなかった。」
「恐らく、その2人は歴史の変化が終わるまで人間界にいたのだ。だからその2人は変化の影響を受けず、かつてのデジタルワールドにありふれていた“進化”を知っていたのだろう工藤タイキ君。このデジタルワールドにおいて、記録と歴史は等価な物なのだ。人間界のそれとは違う…曲がりくねった時間軸を持つもう1つの宇宙だと言ってもいい。人の意識が変われば、この世界は歴史ごと移ろって行くのだ…!!」
「つまり、今のデジタルワールドはタイキさん達の世界の時代の人の心を映してる…ってことか?」
大輔の言葉にバグラモンは肯定した。
「その通りだ本宮大輔君。話は戻すが、イグドラシルのメインフレームにはかつて生きた様々なデジモンのデータが記録されていた…私は復元したそれらのデータに仮初めの魂を吹き込むことにより、軍団の基礎を編制し…各地の悪のデジモンを糾合することによって帝国を作ったのだ。彼らの拠り所を作り…また世界の行く末を見極める力を得るために…!!」
「「………」」
「そして答えは得られた…!!この世界が恐怖と汚濁に飲み込まれるまで最早猶予はない!!魂の尊厳を守るために我々は自ら決着を付けねばならんのだ!!」
「勝手に決めるんじゃねえよ!!あんたは良くても他の…自分なりのやり方で必死に未来を手に入れようとしてる奴らはどうなるんだ!!未来が欲しくて必死に足掻いてる奴らの気持ちは…!!」
「出会いはっ…!!新しい希望を何度だって人の心に生み出すんだ!!一人ぼっちで出したそんな結論で世界を消させたりしない!!」
「子供の理屈で何が救えるものか…!!最早、問答に意味はないようだな…!!」
大輔とタイキを仕留めようとバグラモンは迫る。
2人はD-3XとXローダーを取り出した。
「まだだ!!まだ足掻いてやる!!」
「未来を…奪わせはしねえ!!」
「シャウトモンX7!!」
「インペリアルドラモンHFM!!」
「「クロスオープン!!」」
シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMのデジクロスが解除され、シャウトモンとブイモンが飛び出す。
「「うらあああああっ!!」」
シャウトモンとブイモンがバグラモンに殴りかかる。
「何っ…!?(この気配は…それにこのブイモンのパワーは一体…!?)」
咄嗟に魔法盾で防ぐバグラモン。
シャウトモンX7とインペリアルドラモンHFMがいた場所では残ったデジモン達が全ての力を振り絞っていた。
「(マグナモン!しっかりしなさい!!)」
「(バグラモンとの戦いのために殆どのパワーをブイモンに渡すなんて…本当に無茶するわね!!)」
「(別の世界の大輔を守るのはあいつでないといけないんだ…)」
弱っているマグナモンに叫びながら2匹のテイルモンは必死に力を振り絞っていた。
テイルモン達だけではない、みんな必死だ。
「(俺達全員ノ力デ、シャウトモンヤタイキ達の存在ヲ支える…!!)」
「(だが…X7とHFMの超パワーはもう無いぞ!!)」
「(マグナモンのパワーも殆どブイモンが持ってるから…)」
「(保って後…数分…!!)」
バリスタモン、メイルバードラモン、ワームモン、ドルルモンがタイキ達の勝利を願いながら踏ん張る。
そしてシャウトモンとブイモンとぶつかり合うバグラモン。
「(成る程、マグナモンからパワーを分け与えてもらったようだな。並行世界とは言え同一人物…同一人物同士のパワー譲渡は通常以上のパワーアップを果たすようだ。それに…あの気配は…)」
バグラモンの視線がシャウトモン達に向けられる。
「(ロイヤルナイツ、オメガモンか…!?私とタクティモンが2体掛かりで…しかもイグドラシルシステムで秘奥技、“オメガインフォース”をクラッキングすることでようやく討ち取ったあの最強の戦士のデータの一部をこのデジモンは受け継いでいるのかっ…!?)」
オメガモンのデータを受け継ぐシャウトモン、マグナモンのパワーを授かったブイモン。
最強のロイヤルナイツのデータを、ロイヤルナイツの守りの要のパワーを持つ2体がバグラモンの前に立ちはだかる。
バグラモンの目にはオメガモンとマグナモンが目の前に立っているようにさえ見えた。
「己…!!オメガモンと言い、マグナモンと言い…あの2体はどこまでも我が覇道を阻むか…!!」
「「うおおおおおっ!!!!」」
シャウトモンとブイモンがタイキと大輔から渡された武器を構え、咆哮しながらバグラモンに向かっていく。
そしてネネを救うために精神世界にいるキリハ達もまた必死に抗っていた。
「ネネ…さん…!!」
ネネを助けようと手を伸ばすヒカリ。
「モウ…諦メロ…我ガ闇ノ内ニ安息を得ルガイイ…」
「うるさい…僕達は…皆で生きて帰るんだよ…っ!!」
シェイドモンの甘い誘惑の言葉に必死に抗う賢。
「その…通りだ…っ!!ここまで来て…負けるわけにはいかん!!」
キリハは必死に腕を伸ばしてネネの腕を掴む。
「目を覚ませ、天野ネネ!帰るんだ!!君はこんな所で朽ち果てていい女じゃない!!」
「い……や…!私のことは…放って…おいて…私の…犯した罪は…大き過ぎる…私は…私を…許せない…!」
「許すだと!!?傲慢だな!!人の許しなど本人が決めるようなことではないっ…!!この俺が決めるのだ!!!」
「「「(ええ゙ーっ!!?)」」」
キリハの発言に今までの緊迫した空気が吹き飛んでしまった。
「罪…?罪が何だ!?君は強い女だ!どんな重い罪だって引き摺って歩いてみせろ!!そんな物は君の美しさに華を添える飾りの1つに過ぎん!!」
「何…を…あなたは何を言っているの…?」
「君の気高い生き様に惚れたと言っているのだ!!だから諦めん!!絶対に手に入れてやるっ…!!」
キリハの告白にネネの目に光が戻った。
「ネネさん…ネネさんのおかげで、私達はここまで成長出来たんですよ?あなたがいなかったら、デジタルワールドも現実世界も終わっていたんです!!あなたのおかげで世界を救うチャンスを手に入れられたんですよ!!」
ヒカリに続くようにコトネが話し掛けた。
「姉しゃま…!コトネは…コトネはまた姉しゃまに甘えたいでち…!でもそれと同じくらい…姉しゃまのことを助けたいでち…!支え合って一緒に生きたいでち…!!」
ネネは妹を見つめる。
あんなに甘えん坊だった妹が何時の間にこんなに強くなったのだろうと。
キリハは笑みを浮かべてコトネの頭を撫でた。
「ネネさん、あなたにもいます。あなたを理解しようとし、あなたを受け入れようとする人が…目の前に2人も!!」
「君1人で荷が重いなら肩を貸してくれる奴はいくらだっている…傍にいることは出来なくなっても支えようとしてくれる奴もな…この子だって…君の知っている頃よりずっと強くなった…!さあ、ネネ…心を希望で満たせ!俺達は出会った!!その絆があれば…希望はいくらでも生み出すことが出来る…!」
キリハ達の言葉にネネの心が希望の光で満ちた。
その瞬間、現実の世界にも変化が起き、何とネネが閉じ込められた水晶から光が放たれたのだ。
「ぬうっ…!?」
バグラモンだけでなく、ブイモンやシャウトモンすらあまりの眩い光に目を庇った。
「何だっ…!?」
「分からないかバグラモン!?あれは希望の光だ!!キリハさん達はネネさんを救い出せたんだよ!!」
大輔が自分達の勝利を確信し、笑みを浮かべた。
「バグラモン!あんたはただ絶望を与えるためだけに…弟にシェイドモンの幼生を託したのか…!?」
「!?何の話だ…!!」
タイキの言葉の意味が分からず、バグラモンはタイキ達を見遣る。
「ひょっとしたらあんた自身も気付かずに作っていた可能性の話さ!!絶望の心を糧にシェイドモンが行った羽化…それは一種の暗黒進化とでも言うべき物だ!じゃあ、それが…希望の心による物だったら…」
「始まるぜ…希望の心に満ちた進化が!!」
水晶に罅が入り、進化の光が溢れ出た。
「シェイドモン進化、ルミナモン!!」
水晶を砕いて現れたのは、シェイドモンが希望の心による進化で誕生したルミナモンと合体したネネ。
キリハ達もネネが解放されたことにより意識を取り戻したようだ。
「ネネさん…良かった…本当に…っ…」
「大輔君…!みんな…!!私…!私…!!」
涙を流しながらも希望に満ちた表情を浮かべるネネは本当に美しかった。
大輔はようやくネネを救えたのだと安堵の笑みを浮かべていた。
「何だ…これは…!?私の知らないシェイドモンの可能性だと…!?」
「大輔君!!」
ヒカリは大輔の元に駆け寄り、支えた。
「こんな…こんなボロボロになって…!!」
涙を流すヒカリを安心させるように大輔は笑みを浮かべた。
「大丈夫だ、こんくらい!!さあ、ヒカリちゃん。みんなで未来を掴もうぜ!!」
「みんな、D-3XとXローダーを!!」
「ありったけのクロス・コードを振り絞るでち!!」
「7人分だ…もらったな!」
「さあ…ネネ!みんなで未来を創ろう…!!」
全員がD-3XとXローダーを構えた。
バグラモンは大輔達が何をしようとしているかに気付き、止めようとする。
「まっ…まさか君達は…!?止めるんだっ!止めろっ!!そんなことをしても世界に絶望が溢れるだけだっ…!!」
「うおおおおお!!!」
「でやああああ!!!」
シャウトモンとブイモンがバグラモンに体当たりし、妨害を阻止する。
「ぐうっ…!?」
「今だみんなあっ!!全力全開だっ!!」
「行けぇタイキ!!全力でぶちかませ!!俺達の…未来へのシャウトを!!!」
「「「「「「「ズィードミレニアモン…!!!強制クロスオープン!!!」」」」」」」
7人のクロス・コードの力でズィードミレニアモンを強制解体した。
ズィードミレニアモンの脅威は去ったのである。
後書き
この作品ではバグラモンがロイヤルナイツでオメガモンの次に警戒していたのがアルファモンとマグナモンです。アルファモンは言うまでもなくアルファインフォース。マグナモンはどのような危機に瀕しても奇跡の力で乗り切ると言う、奇跡という超常現象を味方にする能力がありますからバグラモンにとってはかなり厄介な存在なんです。マグナモンはバグラモンと戦争の初戦でオメガモンの前に交戦しましたが、イグドラシルシステムで奇跡を起こす能力をクラッキングされ、敗北してミストゾーンに飛ばされたと言う設定であります。
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