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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第21話:デート

ヒカリからデートに誘われた大輔は完全に思考が停止していた。

「(えっと…デート?デートってあれか?男と女が買い物したり飯食ったりするあれか?)」

そんな当たり前のことさえ理解出来ない状態の大輔。

因みに思考停止しているが故に表情の変化がまるでないため、ヒカリはヒカリで不安になっていた。

「(だ、大輔君…返事してくれないなあ…どうして…?…って、私って大輔君に遊びに誘われたりしても流してたり、久しぶりに会ったタケル君との時間を優先してたりしてたからいきなり誘われても信じられないに決まってるじゃない!!ああ~!私の馬鹿!!大輔君に嫌われるようなことばっかりしてた!!…どうしよう、断られちゃうかな…?)」

「…………」

無言の大輔に気まずそうなヒカリ。

ブイモンとテイルモンはそんな2人をハラハラしながら見ていた。

「くっ、何してんのよ大輔は!!ヒカリに誘われてるんだからYES or OKしかないでしょ!!」

「いやあ、そりゃあ仕方ないだろ?今まで大輔が遊びに誘っても流されてたんだから。だからいきなり誘っても信じられるわけないって。ぶっちゃけ今までが今までだからデートの誘いを大輔に間髪入れずに断られてもヒカリは文句言えないぞ」

「ぐっ!!確かに今までのことがあるから否定出来ないわね…」

ブイモンの言葉が正論過ぎて流石にヒカリの味方であるテイルモンも否定出来ない。

「あ、あの…その、大輔…君…嫌なら…私…」

今までの自分の態度が悪かったから信じてもらえないのはヒカリも分かる。

もし断られても今度は信じてもらえるように行動し、自分が大輔に片思いして好かれる努力をする。

「えっと、ヒカリちゃんは俺でいいのか?」

「え?」

大輔のいきなりの問いにヒカリは目を見開く。

「いや、ヒカリちゃん。タケルとか京と話すことが多かったからさ。ぶっちゃけ俺、迷惑なのかなと思ってて…その…デートの相手…俺で…いいの?」

大輔の言葉にヒカリは慌てて首を縦に振る。

それを見た大輔は赤面し、手で口元を押さえた。

「うわ…っ…ヒカリちゃんから誘われるなんて夢みたいだ…滅茶苦茶嬉しい…」

前なら何かに誘った瞬間、大騒ぎをした大輔だったからそんな反応をされるとヒカリも赤くなる頬を隠さないと恥ずかしくてやりきれない。

「夢じゃないよ…その…いいかな大輔君?」

「デート相手、俺でいいなら………あ、そうだ。賢にメールしないと…あ、良かったD-ターミナルで出来る…」

2人は赤面しながらも賢にメールを送る。

「ん?」

賢はD-ターミナルを取り出してメールの確認をし、メールの内容を見た賢の口元が綻ぶ。

「賢ちゃん…あ、これもしかして…」

「僕達はお邪魔みたいだ。別の所でご飯を食べよう」

「うん!!」

そうやって笑い合う賢と昔の賢の姿をしたワームモンの2人はまるで本当の兄弟のように見えた。

「でも賢ちゃん、このお金…本当に大丈夫かな?」

「大丈夫だと思う…僕達のお金が10年で使えなくなるとは思えないけど念のため…仕方ない…仕方ないんだ。僕達は…っ!!」

魔法で精巧に作られたお金…賢とワームモンは凄まじい葛藤の末使うことにした。

そして大輔達は大輔が好きなラーメンを…ヒカリ達も現実世界のラーメンを食べてみたくなったためラーメン店に来たのだが。

「超特盛りギガンティックチャーシュー麺。10分以内で完食すれば賞金10万円の奴」

ブイモンがチャレンジメニューに挑戦していた。

「では制限時間は10分、始めえ!!」

「頂きまーす!!」

ブイモンが箸を高速で動かし、複数の卵が超巨大丼から一瞬で消えた。

【へ?】

呆然となる店員達。

デジモンの中でも相当な大食漢であるブイモンは凄まじい勢いで麺を啜っている。

まだ5分も経っていないのに半分近くまで減っている。

しかもまだまだ余裕そうだ。

「うん、美味い!!」

次はチャーシューにかぶりつく。

チャーシューを噛んで飲み込み、再び麺を啜った。

近くで見ていると食べてもいないのにお腹一杯になりそうなので大輔とヒカリとテイルモンはブイモンから少し離れた場所で食べている。

「…何かごめん」

「あ、ううん。いいよ、私もラーメン食べたかったし」

「凄い食欲ねえ…」

ブイモンが超特盛りギガンティックチャーシュー麺を食べて4分くらいして…。

「御馳走様!!」

超特盛りギガンティックチャーシュー麺をあっさりと打ち負かした見た目7~8歳くらいのブイモンに見物人から歓声が上がる。

「………っ」

【店長!!?】

店長らしき人物は自分が研究に研究を重ねて作り出したチャレンジメニューをあっさりと破られたことにショックを受けて真っ白な灰となっていた。

「「「(ご愁傷様…)」」」

流石にこれは相手が悪すぎたの一言だ。

大輔達は店長らしき人物に合掌した。

「なあなあ!!」

「え、えっと…何だいボク?」

「お代わり!!今度はこれよりもっと多めで!!」

【おおおおおおおお!!】

お代わりを求めるブイモンに見物人達は更に歓声を上げるのであった。

因みにお代わりも綺麗に平らげました。

「へへ!!美味いラーメンを食べるだけでお金貰えるなんてな~」

「私はあの店の店長達が哀れに見えたわ。店のチャレンジメニューをあっさりと破られた挙げ句、更に量を増やしたお代わりまであっさりと完食されて」

満足そうにお腹をさするブイモン。

大輔は店長にヤケクソ気味に渡された倍の賞金の20万円を見つめる。

一応10年後も自分達が使っているお金だったようである。

「取り敢えず、賞金貰えたし…一応金は10年前と変わらないようだし…」

「ブイモン、大食い選手権に出ればぶっちぎりでNo.1になれそう」

というかブイモンは自分達の世界ではある程度我慢してくれていたのだなと思い知った大輔である。

「えっと…どうしようこれ?」

「大輔君が持っていた方がいいんじゃないかなこれ?…食費大変そうだし」

「ありがとうヒカリちゃん、本当に」

ブイモンの食欲と胃袋の許容量の本気を見た大輔はヒカリの言葉に感謝した。

それはもう心底に。

そして色々な商品を見て回り、自分達のいた世界とは違う世界の未来だとしても現実世界を満喫していた。

「(今の流行の服を買えば私達の世界で流行の先取りになるのかな?)」

そんなことを考える余裕が出て来たそれはきっと隣にいてくれる大輔のおかげ。

「ヒカリちゃん、少し待ってて」

「?」

大輔は何かに気付き、人混みの中に突入した。

少しして4人分のアイスクリームを器用に持ってヒカリ達に差し出した。

「疲れたろ?アイス食って休もう」

「ありがとう!!」

大輔とヒカリが同じベンチに、ブイモンとテイルモンが別のベンチでアイスクリームを食べ始めた。

「…美味しい」

「それは良かった。」

普通のアイスクリームなのに何時もより美味しい気がする。

「今日は凄え楽しかった。ありがとうヒカリちゃん」

「うん、私も凄く楽しかったよ……また、大輔君とデートしたいな…今度は私達の世界で……」

「…うん、邪魔者(京)がいないとこでな…」

大輔の頭の中に浮かぶのは興味本位で突っ込んで来そうな幼なじみである。

恐らく大輔とヒカリのデートを聞きつけたらストーカー紛いのことを仕出かす可能性が高いと思った。

「ふふ…誰にも邪魔されない場所でね」

ヒカリも何となく大輔の言いたいことが分かったため苦笑しながら頷いた。

確かに京ならば恋愛に対しての好奇心が一杯だから自分達がデートしようと聞きつけたら確実に警察のお世話になりそうなことを仕出かすような予感がした。

「…それでヒカリちゃん…その、デートしといて今更かもしれないけどさ」

深呼吸し、大輔は表情を引き締めるとヒカリに向き直る。

ヒカリはそれを見ただけで自然と胸が高鳴るのを感じた。

「え?何?大輔君…?」

「俺、ヒカリちゃんが好きだ。俺にとってヒカリちゃんは何が何でも守りたいくらい凄く大事な女の子だよ。」

「うん…」

ヒカリは大輔の額に触れた。

キュートモンによって治療されたことで傷跡はないが、自分のために出来た傷があった場所。

「凄く大事…だからさ…その、俺の傍にいて…俺にヒカリちゃんを守らせてくれないかなあ…?」

大輔からの告白を受けたヒカリは顔を赤らめながら頷いた。

「でも、守られてばかりは嫌。私も大輔君を支えられるように頑張るから…アカリさんみたいに大好きな人を支えられるように…」

「ヒカリちゃん…」

「あの~、大輔」

「ヒカリ…そろそろ丁度いい時間じゃないかしら?」

「え?あ、うん…そうだね…あ!!」

「ん?あ…」

向こうを歩いているのは多分この世界の大輔とヒカリだった。

自分達とは違う歴史と人生を歩んでいる自分達。

それでも2人の穏やかな表情を見て、2人の仲は良好くらいなのは分かった。

「大輔、ヒカリ。良いのか?追わなくて…?」

「良いんだよ、俺達は俺達…あっちの俺達にはあっちの俺達の未来があるんだ。」

「…うん、私達には私達の未来があるよね…行こう大輔君」

「ああ、それじゃあ賢にもメールしたし、早くタイキさんと合流…」

次の瞬間、向こうから凄まじい轟音が響き渡った。

「!?」

「何!?」

「大輔、デジモンの気配だ!!」

「急ぐわよ、この世界でデジモンに暴れられたら大変なことになるわ!!」

「うん…行こう大輔君!!」

「ああ、一緒にな!!今ならどんな相手にも負ける気がしねえ!!」

ヒカリと共に駆け出し、心に想いと新たな力が高まっていくような感覚を覚える大輔。

途中で賢とワームモンと合流して爆発地点に向かうのであった。 
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