夢幻水滸伝
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第七十七話 筑後騒乱その三
「ここのが一番美味しいです」
「そうたいな、実際に」
「おかわりはありますから」
「だからたいか」
「どんどん召し上がって下さい」
「何か悪いたいな」
「遠慮は無用です、それでなんですが」
コーヒーも飲みつつだ、雪路は美鈴に話した。
「今回来られたことは」
「それたい、薩摩が築後に来るばい」
美鈴もコーヒーを口にした、白いカップの中のそれは今はクリープで独特の茶色になっており二つ入れた角砂糖の甘さもある。そのコーヒーを飲みつつ言うのだった。
「そして。わかるたいな」
「筑後が薩摩の手に落ちたら」
「うちもあんたもたい」
まさにとだ、美鈴は雪路に話した。
「その筑後から攻められるとよ」
「そうなりますね、それも各個に」
「だからたい、ここはたい」
「私達が手を結んで」
「一時的でもいいたい」
薩摩、北原達を倒せばそれからは九州の覇権を争う。そうなってもいいからというのだ。美鈴は雪路に外交交渉としてこうも話した。
「それでも今はたい」
「手を結んでそうして」
「薩摩に当たるべきと思っているたい」
「だからこっちに来てくれたんですね」
「その通りたい」
美鈴は雪路の目を見つつ正直に答えた。
「それで私はここに来たとよ」
「棟梁ご自身がですね」
「そうたい、それで返事はどうたい」
「即答でないと駄目ですか?」
「今すぐでなくてもいいとよ」
美鈴はそれはよしとした、これも彼女なりの即答を求めて追い詰めない彼女の外交交渉の一つである。
「別に」
「そうですか」
「私は今は伝えに来ただけたい」
あくまでそれだけだというのだ。
「だからたい」
「後でもですね」
「いいとよ」
「そうですか、じゃあ」
雪路は一旦グラバー園から見える長崎の海を見た、この世界でも長崎の海は入り組んだ山々がフィヨルドの様になっている中に見事な輝くマリンブルーを見せている。空にはこの世界独自の浮島がある。
その海そして空を少し見てからだ、雪路は美鈴に述べた。
「ご一緒させて下さい」
「即答はしなくてよかったとよ」
「私決断は早いんです」
笑っての返事だった。
「ですから」
「それでたいか」
「はい、ですから」
「今答えてくれたたいか」
「正直肥前だけだとです」
雪路も戦略や情勢はわかっている、それで言うのだった。
「今の薩摩には対抗出来ません」
「ここで筑後を取られたらたいな」
「もう最後まで戦うか最初から白旗か」
「どっちしかないたいな」
「はい、ですから」
そうなることが間違いないからだというのだ。
「ここはです」
「福岡とたいな」
「宜しくお願いします」
こう言うのだった。
「今度は。ただ私もまた」
「九州をたいな」
「覇者を目指していますので」
雪路は美鈴に笑ってこうも言うのだった。
「この度の戦の後は」
「とりあえず勝ったら薩摩を降すたい」
美鈴は築後の後のことも話した。
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