八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百九十三話 アフリカの話その九
「料理人としては嘆かわしい話です」
「そうですよね、小野さんにしても」
「歯は大事にしないと」
「食事も楽しみにくいんですね」
「はい、ルイ十四世はその意味でもです」
「よくご存知なんですね」
「そうなのです、私はフランス料理も作りますし」
どんな国のお料理でも作ることが出来る、ただ小野さんの専門のお料理のジャンルが何処かは僕は知らない。
「ルイ十四世についても知っています」
「あの王様のことも」
「はい、美食家でありです」
「歯がなくなって苦しんだ」
「そうした方ですね」
「鉄仮面だけの人じゃないですからね」
とにかく派手で歴史でもやたら存在感のある人だ。
「ベルサイユ宮殿とか戦争とか贅沢とか」
「女性もありましたね」
「何か色々とあって」
話題の元がだ。
「この人自体も物語になりますね」
「そうですよね」
「まあ歯を抜かれたことは災難ですが」
「そのことは本当にそうですね」
「そのお医者さんには絶対に会いたくないですね」
「私もそう思います」
万病の根源は歯にありとかよくそんな学説を立てられるものだ、藪医者とか机上の学説とかにしても酷過ぎる。
「何を見ているのか」
「歯がないと本当に」
「噛めないですから」
「その分味わえないですし」
「身体によくないです」
このことは常識だと思う、当時でも。
「そこでそう言えたのは」
「かなり恐ろしいですね」
「全くです」
二人で話した、そしてここでだった。
僕達はサウナにも入った、小野さんはその中でも僕に言った。
「世の中色々なことを言う人がいますが」
「歯が諸悪の根源とはですね」
「恐ろしいことを言うものです」
「歯がないと」
それこそだ。
「お粥やシチューしか食べられません」
「それもかなり煮込んだりした」
「そうなりますので」
「いいことじゃないですね」
「それを自ら受けたルイ十四世は凄いですが」
その学説が本当か自ら受けて実証しようとしたことはだ。
「ですがあまりにも無謀ではありました」
「その結果ずっと苦しみましたからね」
「四十年近くの間」
「そう考えるとどうかって思いますよね」
「その医師は料理をする立場から言わせてもらいますと」
「有り得ないですよね」
「はい、言語道断です」
そう言うべき人物だというのだ。
「何を考えていたのかです」
「世の中変なことを言う人は昔からいるってことですね」
「そうですね、あと私は覚醒剤で歯を全てなくした人を知っていますが」
今度は覚醒剤の話だった、この話が出たところで僕はあの話かと内心思った。
「総入れ歯になって大変でした」
「骨がボロボロになりますとね」
「はい、歯もです」
「そうですよね」
骨も歯の一部だからだ、僕も応えた。応えつつやっぱりこの話かと思った。
「ボロボロになって」
「入れ歯にもなります」
「歯は骨の一部だから」
口に出ている骨だ、そう考えてもいいだろう。
「それがボロボロですと」
「骨全体がですね」
「とんでもないことになっていますよね」
「それこそ少ししたら折れるまでに」
「脆くなっていますね」
「はい、そうなっていますし」
「長生き出来ないですね」
骨がそんな状況で長生き出来る筈がない、そうとしか思えない。
ページ上へ戻る