八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九十三話 アフリカの話その八
「ですから」
「仮面の男でも」
「死んでますね」
思えばまだ青年時代の颯爽としたダルタニャンしか知らなかったから歳を取って三銃士と色々しがらみがあるダルタニャンはかえって新鮮だった。
「三銃士は生き残って」
「そうですね」
「そこは違いますね」
「実際に生き残るのは」
ダルタニャンと三銃士つまり四銃士の中でだ。
「アラミスだけで」
「三銃士全員はないそうですね」
「あれはあの映画独自ですね」
「その様ですね」
「有名な映画ですが」
ディカプリオ主演でそうなった、一人二役が見事だったけれど主役はどう見てもダルタニャン達四人だった。
「あの作品オリジナルですね」
「そうですよね」
二人でこう話した、そしてだった。
僕はここでだ、小野さんにこうも言った。
「しかしルイ十四世って美食家だったんですよね」
「はい、料理人の世界でも有名です」
小野さんもこう答えてくれた。
「フランスの宮廷料理が確立されたのもです」
「あの人の時からですね」
「しかも大食漢でもありまして」
「食べる量も凄かったんですね」
「少しずつでも百皿以上食べた時もあったとか」
「あれですよね、お腹一杯になったら」
幾ら何でも一度に百皿以上食べられない、満腹になってしまう。だがそこでさらに食べるにはあるコツがあるのだ。
そしてそのコツについてだ、僕は小野さんに話した。
「ガチョウの羽根で喉の奥を突いて」
「はい、そうしてです」
「吐いてですね」
「また食べていました」
「それをしていたからですね」
「かなり食べていました」
どう見ても食べきれないだけの量の料理をだ。
「そうしていました」
「吐いて食べていたんですね」
「古代ローマでもそうでしたし」
ローマ帝国からのことだ、こうして吐いて食べることは。
「ですから」
「特にですね」
「はい、ルイ十四世のオリジナルではなかったです」
そうだったというのだ。
「吐いて食べることは」
「そうですね」
「はい、しかし」
「しかし?」
「ルイ十四世は確かに美食家でしたが」
それでもとだ、小野さんは僕に言ってきた。
「それは四十位までで」
「あっ、変なお医者さんの学説を聞いてでしたね」
「歯を全部抜いたので」
しかも麻酔なしでだ、どれだけ痛かったか想像するだけで怖い。
「ですから」
「まともに食べられなくなりましたね」
「そうなりました」
「これ酷いお話ですよね」
「全くです、歯がなければ」
せめて入れ歯でもないとだ。
「碌に噛めないので」
「食べられないですね」
「そうなります、恐ろしい学説もあったものです」
「よくそんな学説出せましたね」
「私もそう思います、ルイ十四世は七十九歳まで生きましたが」
「歯が全部なくなってからも」
「四十年近く苦しんだそうです」
歯が一本もなくなってだ。
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