山奥の一家
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第三章
「ここには分身を置いてじゃ」
「おう、姿を消してな」
どちらも術でしてというのだ。
「そしてじゃな」
「ここに一家の誰が来ても寝てる様に見せかけてな」
「わし等自身は姿消してのう」
「家の中調べるぞ」
「そうするか」
二人でこう話してだった、そのうえで。
二人はそれぞれのベッドの中に分身を置いてだった、本人達は姿を消して家の中を調べた。家の中自体は何もなかったが。
納屋に入るとだ、そこにだった。
多くの石像の様なものがあった、男女共にあったがその全てが旅人や冒険者の身なりだった。井伏はその石像達を観て山本に言った。二人共まだ姿を消している。
「おい、これはな」
「おう、石化させた旅人や冒険者じゃな」
「そうじゃな、あの一家か誰か一人かわからんが」
「旅人や冒険者を石にしてな」
「それで時々戻して食うてるな」
「人食いか」
「まずそうじゃのう」
井伏はその目に嫌悪を宿らせて述べた。
「これは」
「種族はオーガかも知れんがな」
「化けものじゃ」
正体がどうあれ心がそれだというのだ。
「間違いなくな」
「そうじゃな、それでじゃな」
「これからどうするかじゃな」
「一家全員かそれとも一人か」
「一人が家族を操ってるか」
「どうか見極めるか」
「それじゃが」
井伏はこのことについてもだった、山本に述べた。
「わしが思うにじゃ」
「婆さんじゃな」
「そうじゃ、爺さんと娘さんは特にじゃ」
「おかしなところはなかったのう」
「ごく普通のオーガの人達の可能性が高い」
こう言い切った。
「二人はのう」
「そうじゃな、しかしな」
「あの婆さんじゃ」
「グレードベアを石化させて倒す」
「そんなこと出来るんじゃ、どうしてそうしたかわからんが」
「それでもな」
「そんなことが出来る」
「やっぱり並の奴じゃないわ」
このことが用意に想像出来るというのだ。
「術を使うか別の手段にしても」
「ほんまにのう、それじゃあのう」
「ああ、気をつけてな」
「ここにおるか」
「そうするか」
二人で石像を見つつ話す、そしてだった。
井伏は少し考えてから山本に言った。
「一晩って言うたし明日の朝出るとな」
「わし等は決めてるがのう」
「しかしな」
それでもというのだ。
「婆さん達がわし等の予想通りならな」
「まず引き留めるな」
「わし等は食いものじゃ」
だからだというのだ。
「絶対にじゃ」
「引き留めてな」
「隙を見て食おうとする、ならな」
「ここはじゃな」
「おう、引き留めたら」
「その時じゃ、多分ここが試練の場所じゃな」
「わしのな、ならな」
この家がとだ、井伏はこのことも読んだ。そしてだった。
そのうえでだ、二人は納屋から自分達が今提供されている部屋に戻って寝た。だが寝ている間も襲撃には気をつけて野宿の時いつもそうしている結界を張った。
夜には仕掛けてこなかった、それで二人は朝老婆達に言った。
「世話なったのう」
「お陰でゆっくり休めたわ」
顔はにこやかに笑っての言葉だった。
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