戦国異伝供書
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第二十三話 東国入りその二
「そして攻め落としていってもらうぞ」
「わかり申した」
羽柴は信長のその言葉に頷いて応えた。
「さすれば」
「その様にしていくぞ」
「それがしもまた」
「そうじゃ、しかしな」
ここで信長はこうも言った。
「小田原城のことは知っていよう」
「はい、あの城は惣構えです」
「他の城とは違います」
「街を堀や石垣で囲んでいます」
「壁も使って」
諸将は信長に口々に答えた。
「実に堅固です」
「ただ大きいだけではありませぬ」
「尋常な堅固さではありませぬ」
「まさに天下の城です」
「そうじゃ、その様な城は攻めてもじゃ」
そうしてもというのだ。
「攻め落とせぬ、そもそも城を攻めるのはな」
「下策です」
竹中が即座に答えた。
「それは」
「そうであるな」
「無駄に犠牲を出し得るものが少ないです」
「それが城攻めじゃ、だからな」
「城を攻めるのではなく」
「人を攻める」
こちらをというのだ。
「北条家の者達をな」
「それが殿のお考えですな」
「そうじゃ、北条家は強い」
特に主である北条氏康はというのだ。
「しかしあえて城を攻めずな」
「人を攻めますか」
「わしは小田原城を攻め落とすつもりはない」
まさに一切というのだ、実際に信長は小田原城を大軍で以て囲んでもそこから攻め落とすことは全く考えていない。
それでだ、こう言うのだった。
「人を攻めてそうしてじゃ」
「北条家自体をですな」
「攻めて」
「そうして降しますか」
「攻め落とせぬ城はない」
信長はこうも言った。
「これがどういう意味かじゃ」
「城を守るのは人です」
黒田が信長に応えた。
「その人を攻めますると」
「どういった城でもな」
「攻め落とせまする」
「無論どの城にも弱みがある」
信長はこの場合についても述べた。
「そこを攻めるやり方もあるが」
「殿が今言われることは」
「左様、城の弱みを攻めずにな」
「城を守る人を攻める」
「そうして攻め落とす、だからな」
「小田原城もまた」
「そうして攻め落とす」
信長は強い声で家臣達に話した、そうしてだった。
軍勢を中山道から関東に向かわせる、そうしながら関東の方にしきりに噂を流させていた。
「よいか、当家はじゃ」
「はい、降るならばですな」
「悪い様にはしない」
「どの家であっても」
「天下布武に加えますな」
「そうする、そしてこのことはじゃ」
信長はさらに話した。
「絶対のことじゃ」
「約ですな」
「違えられることのない」
「そうしたものですな」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
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