戦国異伝供書
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第二十三話 東国入りその一
第二十三話 東国入り
織田家は上杉家にも勝った、川中島で謙信が繰り出した車懸かりの陣を破った文字通り会心の勝利だった。
信長は謙信だけでなく上杉家の二十五将も家臣とした、すると石田が信長に対してこうしたことを言ってきた。
「直江殿ですが」
「お主先程あの者と話していたな」
「はい、お話したところ」
それでというのだ。
「非常に素晴らしい御仁です」
「出来物とは聞いておるがな」
「そのお心もです」
才覚だけでなくというのだ。
「非常にです」
「素晴らしいか」
「はい、あの方なら」
まさにというのだ。
「殿のお力になります」
「ではわしの傍に置くべきか」
「真田源次郎殿と共に」
「そうか、ではわしは天下の逸材を二人も加えるか」
「是非そうされて下さい」
石田は信長に真摯な声で頼んだ。
「そうしてです」
「天下を泰平にしてな」
「治めて下さい」
「わかった、ではあの者をな」
直江兼続、彼をというのだ。
「戦が終わればじゃ」
「直臣とされますな」
「お主の言葉を受けてな」
「殿、佐吉の言う通りです」
大谷も信長に言った。
「それがしから見ても直江殿はです」
「見事な者か」
「そう思いました」
実際に話してだ。
「ですから」
「それでじゃな」
「それがしも佐吉と同じ考えです」
「あの者をわしの直臣にすべきか」
「是非。必ず天下の政を支えてくれます」
「ではその様にしよう」
信長は大谷にもこう答えた。
「あの者はな」
「この度の戦が終われば」
「直臣とする」
信長自身のとだ、こう言ってだった。
信長は川中島での戦の後始末を終えると軍を少し休ませてからまた動きだした、川中島から信濃の南に向かい。
甲斐に向かう、そうしつつ主な家臣達に言った。
「さて、次はじゃ」
「東国ですな」
「相模の北条と戦う」
「そうされますな」
「そうじゃ」
その通りという返事だった。
「そしてな」
「北条も降す」
「そうしますな」
「そして関東も手に入れる」
「そうなりますか」
「佐竹や宇都宮、里見といった家はじゃ」
北条家と対立する関東の主な家はというのだ。
「関東の政に組み入れる、そして北条家もじゃ」
「降せばですな」
「その時はですな」
「天下の政に組み入れる」
「そうされますな」
「必ずな、小田原城に向かうが」
しかしと言うのだった。
「ただあの城を攻めるだけではない」
「北条家の他の城も攻めますな」
羽柴がこのことを聞いてきた。
「そうされますな」
「うむ、小田原城を囲んでな」
そのうえでというのだ。
「他の城も攻め取っていく、江戸や忍といった城をな」
「次々にですな」
「お主達に軍勢を預ける」
そうしてというのだ。
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