八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九十二話 芥川の作品その四
「わからない位だから」
「精神状態が異常だったことがですか」
「わかる作品なんだ」
「そう思いますと」
「読むとだよね」
「芥川の研究家でもないと」
「読まない方がいいと思うよ」
僕は小夜子さんに僕の考えを述べた。
「本当にね」
「そうですか」
「読むなら本当に前期か中期だよ」
「末期の作品は楽しみたいならですね」
「読む作品じゃないね」
「それ太宰もよね」
美沙さんはその芥川に憧れていて生き方が似ているというかなぞったんじゃないかという作家の名前を出した。
「前期は暗くて」
「中期明るいよね」
「走れメロスとかね」
「それで後期はね」
「また暗くなるのよね」
「まあ太宰は後期でもね」
その斜陽や人間失格の頃だ。
「破滅的なものは感じても」
「暗鬱だったりはしないの」
「狂気もないよ」
「そうなのね」
「うん、そうした感じはないから」
「じゃあ普通に読めるのね」
「芥川とはまた違うよ」
確かに一脈通じるけれどだ。
「ああした感じじゃないから」
「それはいいことね」
「うん、人間失格もね」
廃人になる結末だ、バッドエンドなのは確かだ。けれどそれでもだ。
「芥川みたいな狂気は感じないからね」
「義和ってそういう感じが駄目なのね」
「そう思うよ、僕もね」
美沙さんに否定せずに返した。
「実際にね」
「やっぱりそうよね」
「基本明るい作品好きだし」
「それも楽しい作品が」
「だから三銃士も好きなんだ」
今読んでいる作品もだ。
「前向きで勇んでいるからね」
「ダルタニャンも三銃士もそうよね」
「明るく前向きでね」
それでだ。
「困難や強敵に果敢に立ち向かう」
「まさに活劇よね」
「時代劇みたいなね」
「実際時代劇の時代だしね」
「日本だとね」
江戸時代だ、時代もまさにその頃だ。
「だから余計にね」
「痛快娯楽作品ね」
「そんな感じだから好きなんだ」
「楽しい作品を読むべきですね」
小夜子さんも言ってきた。
「まことに」
「その通りだよね」
「そして楽しまないと」
「損だよ」
「本を読むなら」
「さもないとね」
それこそだ。
「よくないよ」
「本を読むことは何故か」
「自分が楽しむ為だから」
「それだからこそですね」
「楽しまないと」
「それでは」
「芥川は前期か中期、太宰は中期でね」
それでだった。
「三銃士もいいよ」
「そういうことね」
「読むなら楽しい作品ですね」
「そうじゃないとね」
本当にだ。
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