魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
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第一部
第11話 チート?な訳ないだろうが
前書き
琴葉side
看守室で暴れやがってクソメイ……言葉遣いが悪いな、メイド兄弟。
躾がなってねぇなぁ、まったく。
「さて、問題は―――」
誰かが来る前に証拠隠滅することである。
取り敢えず、出来ることは全てやろう。
まずは、このカスメイ…………ごほん、メイド兄弟の治療だ。完全に治癒じゃ間に合わないので、魔法によって再生させる。すると、さすがに血は残ったままだが、壁に叩き付ける前の状態に戻る。
次は服を直すか。服は面倒くさいので、魔法によって数分前の状態に戻す。血が付く前の状態に戻ったため、これで私がこのメイド兄弟に何かやったことはバレない。
魔法を使った跡も、魔法で完全に消して、隠滅。
次は看守室を直さなければ。
まずはごっちゃごちゃになった床の上。血塗れの書類が散乱していて、もう誰かに見られたらひとたまりも無い。
机もぐちゃぐちゃで、倒れている棚もある。壁にヒビは入っているし、血は付いているしで、かなり白熱していた事が分かる。……一擊で終わったが。
何処から片付けるかなぁと考えていると―――
「おい琴葉。九〇四番は…………は?」
「あ」
看守室に翁が入ってきて、絶句した様子だ。
マ・ズ・イ。
「オイ琴葉。こりゃ如何言うことだ?」
「あっ、えっと、あの……あっ、あっ、話すんで、無言でアインアンクローはっ……あっ、あああああああぁぁぁああああ!!!!」
◆ ◆ ◆
「頭割れた」
「琴葉ちゃんってそんな事言うキャラだっけ」
「うっさい黙れクソ九〇四番死ねや死んで私の機嫌を取れや殴んぞボケクズ死ね」
「酷くない?」
看守帽を脇に抱えつつ、頭を抱える。本当に頭が割れたのだと思っていた。翁、握力巫山戯てんじゃねぇの? まだ全然若いじゃねぇかよ……"翁"じゃないじゃん。
「ところで、如何為てそんなことになったの?」
九〇四番が聞いてくる。今回は真面目に心配しているそうなので、唇を噛みながら話してやる。
「メイド兄弟が暴れ出したから打っ飛ばした。正当防衛じゃねぇか、クソ。どーして私が怒られなきゃいけないんだよ。自分の身を守ることの、何が悪いんだ。相手は暗殺者なんだ、殺しても良いじゃねぇか殺してないけど。全部治療したし、許せよクソ翁」
「あ"? 俺に文句があんのか?」
「ヒッ!」
油の切れた機械のように、ギギギと音を立てそうな感じで振り向く。
―――其処には、完全にキレた御様子の、翁が仁王立ちしていた。
「ぎゃああぁぁあああああ!!!! 痛い痛い痛い! ねぇ割れちゃう! 頭割れちゃうからぁぁぁあああああ!!!! ああああぁぁぁあああ! 今ピキッて聞こえた! 今絶対何かあったからあああああああぁぁぁああああ!?」
「うるせぇ!! 御前、首切断され掛けてたじゃねぇか! 腕は完全に終わってただろうが!! それに加え、あの奇妙な兄弟の頭破壊しやがって!! 手前、客に対して何してんだ!!」
「だああああぁぁあああ!? 待って待って待って、あのメイドは私を殺すために来た殺し屋であってぇぇえええええ!? ねぇやめて割れる、割れるぅううう!!!!」
「一々大袈裟だ阿呆!! これだけで割れると思うなボケェ! 最悪割れたら再生しろ!!」
「やあぁぁぁぁああああめぇぇええええ!!!!」
後ろで囚人共に同情されてるのが分かる。凄く苛つく。
「ねええええ!! メイド達は他の舎に預けるからぁぁあああ!! 今日は誰も引き取ってくれなかったからこき使ってただけ……ぎゃあぁぁああああ!! やめてやめてぇぇぇええええ!!」
「何自分を殺そうとしたヤツをこき使ってんだボケ! 阿呆か!!」
「しょうがないじゃん引き取って貰えなかったんだもん! 正月に向けて、どの舎も準備してんのぉおお! 明日にはどっかの舎に送り付けるから許してぇえ! 明日は私、大人しくしてる!! 誰もシバいたりしないからぁぁあああ!! この手を離してぇぇええええ!!!!」
…………数秒後、翁は諦めたように手を離した。そして、私を睨んで一度舌打ちをしてから言った。
「次はねぇぞ」
「すいませんでした」
翁が去って一息吐くと、また後ろから。
「「「「琴葉」」」」
「…………………………」
「「「「…………ぷふっ」」」」
「殴るぞオラ、さっさと並べや」
「さっき次はねぇって言ったばかりだろうが!!」
「ギャーッ!? 翁まだ居たん!? ……じゃなくてぇあああああああ!? すみませんッッッ!!!」
あの、そろそろ頭割れる気がするんで、止めて下さいませんか?
後書き
謎のアイアンクロー回。
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