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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。

作者:エギナ
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第一部
  第10話 メイドの使い方+Merry Christmas

 
前書き
レンside 

 
「ねー、メイド。紅茶を淹れて」
「畏まりました」

 …………ん?

「メイド。ソコの書類、ファイルに入れて三番の棚へ」
「畏まりました」

 ……………………は?

「御主人様、最高級の茶葉を使った紅茶が入りました」
「ありがとう。じゃ、次は看守室周辺の掃除をしといて」
「「畏まりました」」


 ………………………………何があったんだ?


  ◆ ◆ ◆


 今日は一二月二五日。起きたら枕元にプレゼントがある日であり、"リア充"と呼ばれる者達が街をうろつく日であり、予定が埋まらなかった、仕事が入ってしまった人にとっては苦痛の日である……ってグレースに聞いた。リア充ってなんだよ、なんで苦痛になるんだよ。
 まぁ、囚人にはそんな事は関係ないので、ただ起きて、何時も通り仕事をするだけ。

「わあああああああ!! サンタさん(琴葉ちゃん)からプレゼントだぁっ!」
「こっちもだ。流石だな、サンタ(看守)は」
「やったぁぁあぁぁああああ!! ノートパソコン!」

 うるさい。
 寝ていたのだが、三人の大声に起こされて、渋々体を起こす。

 枕元を確認するが―――そこにプレゼントらしき物は無かった。

 ……あれ?

「レンのプレゼント、無くない?」
「え? ボク達のはあるのに……」
「看守室に行くか?」

 ……心配してくれてるのだろうが、俺はプレゼントを貰ったりすることは無いので、全くと言って良い程何も思わない、感じない。

「一人で行く」

 でも、琴葉だから、それは無いと思い、俺は看守室へ向かった。


 ―――そして、話は冒頭に戻る。


 偶然、看守室の前に要が居て、即手錠を掛けられた。報告のために、看守室は目の前だしそのまま入っちゃうかーの様なノリで入ったら、其処には昨日琴葉を暗殺しようとした、頭のおかしい、変な趣味をしたメイド服の兄弟が、琴葉の専属メイドの様にこき使われていたのだ。

 勿論、俺と要は、入り口でそれを見ているだけである。

「んー! ……あ、何でレンがいるん? 要と一緒に何してるん?」
「「こっちのセリフだ!!」」

 要と一緒にツッコむ。すると、メイド二人がハッと目を見開き、掃除をする手を止める。そして、琴葉の方に向き直って言う。

「何で俺達はお前のメイドをさせられているんだ!?」
「なんで?」

 メイド二人は無意識の内に仕事をしていたようだ。……それってどうなのかね。気付かない内に給料なしで働いてそうで怖いわ。
 咄嗟に持っていた雑巾を床に投げ捨て、琴葉を睨み付ける。……まさか。


「ご主人様からの命令だ。回収する」


 ……名前が分からないし、呼びにくいので、上をメイ、下をイドって呼んでおこう。

 メイがいきなり琴葉に殴り掛かる。やっぱり始めやがった。

「わ、やべっ」

 昨日とは変わり、琴葉はそう声を漏らすと、腕を自分の前で交差させて、防御の態勢を取る。昨日はそんな事しなかったのだが、如何為たのだろう。


 すると、メイの拳が琴葉の腕に"当たる"。


 看守室の壁に打ち付けられた琴葉が、血を吐き出す。昨日はスカだった攻撃が当たる様になっている?

「……はー、怖い怖い。どんな怪力メイドだよ」
「……おわっ」

 ……と、其処で、俺は要に抱えられて、琴葉の近くまで移動させられる。琴葉でさえとんでもないピンチなのに、え、俺も巻き添い? 要、頭狂ってんのか?

「要は九〇四番を医務室へ。翁に『奥に通して』って伝えて。もしメイドが襲ってきたら、すぐに連絡。分かったんならさっさと行け」
「はいはい……人使いが荒いなぁ」

 要は一人で看守室を出て行く。自分だけ逃げたようにも見えなくは無いが、グレースを守ろうとしているのかな? 一応。

 琴葉を見てみると、看守服の袖から血がぽたぽたと垂れている。
 いきなり襲ってくる恐怖で、足が震える。

 ……此処で死ぬのか?

「……って、レン。何に怯えてんのさ」
「はっ?」

 琴葉が振り返って、淡々と言う。
 そのすぐ後ろに、イドの姿。

 刀を構えたイドは、確実に琴葉の首を斬るつもりだ。


 ―――実際、イドは琴葉の首を斬った。


「…………え?」


 頬に生暖かいモノが当たる。

 琴葉の体が傾き、こちらに倒れてくる。

 後ろでメイが口の端を吊り上げて、笑っている。

 イドが刀に着いた血を拭いている。


 まさか、本当に死―――


「レンの心配性」


 琴葉の声。……幻聴?

 そう疑うが、次の瞬間にドガン! と物凄い音が、刑務所内に鳴り響く。


「私が殺されたくらいで死ぬわけ無いじゃん」


 音の先には、血塗れの琴葉が。

 その前に…………誰だか分からなくなるほどまでぐちゃぐちゃになった……メイとイド。

 琴葉がニヤリと笑ったのを見て、思わず―――


「ぎゃああああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


 と叫び、看守室を飛び出した。

 
 

 
後書き
おまけ1
〔その後の琴葉〕
「紅茶冷めたあああぁぁぁあああ!!!! 書類が血塗れだよどうしよおおおおぉぉぉぉおおおお!?!?」
 何があったとしても、茶と仕事は大事。

おまけ2
〔要とグレース〕
要「やあやあ九〇四番くん。実は、君にお願いがあるんだ」
904「ん、なに?」
要「キャラが被ってる感じがするからキャラ変えて」
904「えー、一緒にしないでくれるかな?」
89「どっちも変態じゃん」
要・904「「………………………………」」

おまけ3
〔要side〕
 このメイド、がたいも良いし、性格も荒そうだな。
 …………おお! 琴葉があんなにダメージを!!
 これはかなりの上物!
 パシリにぴった(略
 そういえば、今日クリスマスなのになんでこう喧嘩してんのかな。
 取り敢えず、読者の皆様、Merry Christmas!! 
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