ソードアート・オンライン~剣と槍のファンタジア~
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27話 二刀流使いの苦労
前書き
すっかり遅くなってしまいましたが…明けましておめでとうございます、白泉です!
僕のつぶやきにも書きましたが、暁様のサイトの不調?で、下書き保存ができなくなってしまい…やっとあげられました!
さてと、一年経つのは早いですねぇ。もうすぐ平成が終わってしまいます…。ゴールデンウィーク10連休を僕は期待しているんですがね、なるといいなぁ…。
さてさて、今回は気になるところで終わりましたが、原作のほうに再び戻ってきます!
それでは早速、どうぞ!
「そういえば、アスナがもうすぐでボス部屋って言ってたね」
「キリトもそんなこと言ってたな。そろそろ全部マッピングし終わるって」
あまり豪華ではない夕食を食べ終わった後、リアとツカサはそのまま食卓に座り、リアの淹れたコーヒーをすすりながら、日課である新聞に目を通していた。この新聞は、SAO内で発行されているもので、制作には情報屋の何名かが携わっているらしい。ただ、難点はあまり信憑性が高いとは言えないため、鵜呑みにできないところはあるが、所謂何でも屋を営む彼らにとっては結構重宝しているのだ。ここには、情報屋に代金を払えば求人願いを出したり、尋ね人を載せたりもできるため、負担にならない範囲であれば、その依頼を手伝うこともある。
「特にめぼしいものもなさそうだな」
「そうだね、依頼文もなかったし」
実体化させていた新聞を再びアイテムウィンドウにしまい、もう必要ないため削除する。
背もたれに寄りかかり、カップに口をつける。相変わらず犬のようなルーにかまってやるリアをぼんやりと見ながら、ツカサは昨日のことを思い出していた。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
リアが出て行ったあと、何かする気にも、動く気にもならず、そのままの体勢でいた。
リアはいったいどこに行ったのだろう。だが、別に子供じゃあるまいし、あの強さだ、心配することはない。そう思っていたし、今リアに会ってもどうしようもできないだろう。ツカサはそう思い、フレンドマップで追跡することもしなかった。
寂しそうにツカサを見つめるルーを無視し続けていたら、どうやらあきらめたらしく、再びソファの定位置に戻っていった。
すっかり日が傾き、月が顔を出し始め、部屋の中は真っ暗だ。だが、今はこの暗闇が妙に心地よく感じる。
その時だった。何の前触れもなく、いきなり玄関が音を立てて開いたのだ。まったくの無音だったため、思わずツカサの肩は跳ね上がる。
「あれ、ツカサ君、こんな真っ暗な中にいたの?電気ぐらい付けなよ」
数時間ぶりに人の声がこの家に響き渡り、電気が付けられる。仮想世界のため、いきなり明るくなっても目が眩むこともなく、玄関に立っている一人の人物をすぐに認知する。揺れる長いディープブラウンの髪に、大きな二重の灰茶色の瞳。正真正銘、リアだった。
まるで、何事もなかったようなリアに、ツカサは困惑していた。まるで先ほどの言い争いを忘れてしまったかのような態度だ。
「ごめんね、遅い時間になっちゃって。すぐご飯作るね」
そういって、リアはキッチンへ向かう。その態度はいたって普通。…いや。
ツカサは、わずかに震えた言葉の語尾をとらえ、思わず唇をかむ。
今まで、リアと軽い言い争いは数回あったものの、ここまでひどく喧嘩したことは一度もなかった。そのため、自分もそうだが、リアもどうしたらわからなかっただろう。だからこそ、まるで何もなかったかのようにふるまうことをリアは選んだのだ。
結局、ツカサも何も良い案が見つからなかったため、リアに従うことにした。
―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「ん?」
新聞を読み終え、アイテムストレージにしまった直後だった。目の前に新着メッセージを受け取ったことを示す画面が現れる。
「何かあったのか?」
「メッセが来ただけだよ。誰だろ…」
タップをして開くと、差出人はあまり珍しくはない人物。職業柄かなり密接な関係を持っている、情報屋“鼠”ことアルゴだった。メッセージ内容は、ただ一言「明日発行の新聞らしいぞ。これを見てくれ」。どうやら添付ファイルがあるらしい。タップして開くと、それはリアたちがいつも読んでいる新聞の記事の表紙部分だった。その見出しは…
「…んん゛?」
《75層解放!》《軍の大部隊を全滅させた悪魔》《それを単独撃破した二刀流使いの50連撃》
そこにはちゃんと小さく両手に片手剣を持った黒剣士がソードスキルを繰り出している決定的瞬間の写真が載っていた。
「どうした?」
「…これ見てよ」
画面を可視モードに切り替え、ツカサにも見せる。ツカサはその画面をたっぷり十数秒眺め…
「…キリトのやつ、人生終了だなこれは」
憐れむように言い、ツカサは小さく「ご愁傷様」とつぶやいた。
「私もそう思うよ」
なにせ、血盟騎士団団長ヒースクリフに続くユニークスキル持ちが世間に知れ渡るのだ。明日この新聞が発行されたら、その真偽を確かめたり、ユニークスキル発生条件を問いただす情報屋やプレイヤーの多くが、キリトのもとに押し寄せるだろう。…キリトにとっては大きな試練だと、リアは心の中でキリトにエールを送る。
かく言うリアとツカサもユニークスキル持ちであるが、まだ世間一般には知られていない。なぜひた隠しにするかというと、一番の理由は、ツカサの性格上の問題だ。とにかく人が苦手なツカサは、目立つことは今以上にしたくないのだ。その意思を汲み、リアも人前では決してユニークスキルを使おうとはしない。
ここまで大々的にキリトのことが書かれているのを見ていれば、なおさらさらしたくはないとツカサは思っているだろう。
「キリトのことは置いといて、今回のボスは結構強力だったんだね。キリトが二刀流を出すぐらいに」
「ああ…だが、軍の連中にはいい薬だろう。もうあの組織に攻略できる戦力はない」
「最近の悩みの種だったからね。…でも、これで始まりの街にさらに負荷がかかるかもしれない」
リアの脳裏に、サーシャをはじめとする子供たちが浮かぶ。自分の立場がどうこうではなく、ただ純粋にあの笑顔を守りたいと思う。
「そうだな。…今まで渋ってきたけど、そろそろやらないとまずいな」
「だね…」
ツカサも同じ事を考えているのだろう、苦い顔をしている。いがぐり頭がフッと頭をよぎり、思わず吐き気がした。慌ててコーヒーで想像ごと飲み込む。
「…明日、仕事一瞬で片付けて、キリトのところ行ってみようか」
「そうだな、どうせあいつのことだから、エギルの店の二階にでも転がり込んでるだろ」
明日の惨状を思い浮かべ、リアは心の中で手を合わせたのであった。
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「ま、どうせそうなるだろうと思ってたけどね~」
リアはぶんぶんと愛剣を回したあと、こ気味良い音を響かせて納刀した。すでに時刻は辺りが一面オレンジに染まる時間だ。
「一瞬で片付けるどころか、いつもの倍近くかかったな」
「こういう日に限ってめんどくさい依頼が来る&リアルラックが死んだほうがましなほど最悪になるんだよね。ねぇツカサ君、もうあきらめてるけど、なんで私たちって、こんなに不運なのかな?」
「行いは悪くないはずなんだけどな」
ツカサも溜息を洩らした。リアルラックがいつものごとく最低な二人にとって、最高に苦手な依頼、レアアイテム集め。しかも、事情が事情であったため、後回しにすることができず、朝っぱらから、そのレアアイテムを落とすモンスターを狩り続けていたわけだが…まぁ、そのアイテムが出ない。今回のポップ率は0.0001と阿保みたいな低さなのも相まって、こんな時間までかかってしまったのである。
「まあ、そんなことはさておき、エギルの店に行きますか!」
「ああ、そうだな」
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―
「今日も相変わらずぼったくってる?」
「おいおい、弟と同じようなセリフ吐きながら入ってくるなよ」
カウンターの奥にいる屈強な見た目の、スキンヘッドの男。180㎝はある身長に加え、その体を包み込むがっちりとした筋肉は、まるでボディービルダーのようだ。しかも、血筋に黒人に血が混じっているらしく、ぱっと見日本人とは見えない。彼こそ、攻略組でもあり、買取屋を営むエギルだ。
「久しぶりだな、エギル」
「おお、ツカサ!元気か」
「ああ、なんとかな」
がしっと、アームレスリングのように握手を交わす。
…体格差が恐ろしいと思ってしまうのは必然だろう。ツカサの身長は176㎝、エギルよりも少し低いぐらいではあるが、何しろ細い。エギルに一瞬で折られてしまいそうではあるが…実は逆なんだよなぁ、とリアは内心笑ってしまった。
「まさかキリトに会いに来たのか?」
「やっぱりいるんだね」
「ああ…だが、いろいろあったらしいぞ。さっき部屋を覗きに行ったら蹴飛ばされて追い出された。アスナも一緒にいるぞ」
「分かった、ありがと」
店の奥には、二階へと続く階段がある。何かあるとキリトはしょっちゅうここに転がり込むのだ。
階段を昇り、木製の扉をノックする。
「キリト、いる?私だけど」
すぐに扉があく。
「リア姉、ツカサも」
「やっほ、いろいろあったらしいから来てみたんだ。アスナも…って、泣きそうな顔してどうしたの」
キリトはともかく、アスナは今にも泣きだしそうな顔だった。溺愛する従弟が、まさかアスナを泣かせたのだろうか。いや、アスナは確かに可哀そうであるが、自分はキリトを叱ることができるだろうか…いや、無理だ。なにせ、可愛い可愛い従弟なのだ。
この中で一番冷静だったのはツカサだった。ツカサは静かに問うた。
「何があったんだ?」
キリトはベッド、ツカサとアスナは机、そしてツカサのすぐ近くにリアが窓枠に腰を掛け、キリトの話に耳を傾けていた。
74層のフィールドで軍に会い、追いかけてみたらボスに戦いを挑んでいたこと、守ろうとしたが結局全滅させてしまったこと、フィールドが結晶無効化空間だったこと、無我夢中で二刀流を使ってボスを倒したこと。
そこまでは大体新聞と一緒の情報だった。…もちろん、二刀流の50連撃というのは嘘八百であるが。問題はそこからだ。アスナがギルドを一時脱退をヒースクリフに頼んだらしい。どうやらこの二人はうまくいくようだと少々喜んだリアであるが、その続きから少なからず驚きを抱いた。
ヒースクリフがアスナの脱退するために、キリトに会わせてほしいといったらしい。そして、キリトがグランザムに赴いたところ、なんとデュエルを申し込んできた。キリトが勝ったらアスナを連れていける、もし負けたらキリトも血盟騎士団に入団させる、という内容らしいが…
「で、キリトはそのデュエルを受けたんだ」
「ああ」
「もしキリトくんが負けちゃえば、キリトくんもKoBに入らなくちゃいけないんだよ!?そりゃ、キリトくんの二刀流もすごいけど、団長の神聖剣の防御力は異常だし…!リアも何か言ってよ!」
「いや。私はいいと思うよ」
「「え…?」」
まさかの答えに、キリトとアスナは驚いてリアを見た。キリトもリアにいい反応をされないと思っていたらしい。嫌味もなく、ただ純粋にいいと思っている表情だ。
「キリトが受けたデュエルだからね。私はキリトがそこまで強く思ってるなら何も言わない。キリトがやりたいようにやればいい」
リアはそういって笑って見せた。
「なんてったって、私の自慢の従弟だから。キリトならやってくれるでしょ」
リアは立ち上がり、座っているキリトの頭をいつもの通り、わしゃわしゃと撫でた。キリトも思わず微笑みをこぼす。
一方、アスナとツカサはというと…
『でたよ、この従弟バカ…』
『ほんとに弟バカだ…』
と、突然
「んじゃ、ちょっと用事できたから行ってくるね」
「「「…え?」」」
キリトとアスナはともかく、ツカサまで唖然とした顔をした。
「リア、どこ行くんだ?」
「ツカサ君はいいよ、ここにいて。またすぐ戻ってくるから」
止める暇もなく、いつの間にかリアの手には転移結晶が握られていた。
「リア…!」
「転移、~~~」
ツカサの声と、転移場所が重なり、リアがどこへ行ったのかは誰にもわからなかった。
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦ー
扉をゆっくりと開けると、一人の人物のシルエットが浮かび上がる。
リアは不敵な笑みを浮かべた。
「どうも、お久しぶりですね、団長さん」
後書き
はい、いかがでしたか?本当に読みどころのない話になってしまいました…読んでくださった読者様、感謝です!
さてさて、最後は気になるところで終わりましたが…これもまた伏線になってしまいましたw伏線多すぎぃ…
そして言い忘れました、これからもそこまでの更新速度は見込めませんが、更新停止しないように頑張りますので、どうぞ今年もファンタジア、並びにリアとツカサをよろしくお願いいたします!
では、次回は原作通り、キリトとヒースクリフの決闘です!お楽しみに!
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