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永遠の謎

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528部分:第三十一話 ノートゥングその九


第三十一話 ノートゥングその九

「何時か。科学の力で」
「では気球で」
「いや、翼で飛びたい」
「翼で?」
「出来る様になる筈だ。人は翼を手に入れられる」
 科学を観てだ。王は言うのである。
「必ずだ。だからだ」
「何時かはこのアルプスの上をですか」
「飛びこの美しい世界を上から全て眺めたいのだ」
「それが陛下のお望みですか」
「その一つだ」
 そうだとだ。王はホルニヒに話す。
「そうしたい。私がそれを適えられなくとも」
「それでもですか」
「後世の者達ができればいい」
 未来のこともだ。王は希望と共に話した。
「そう考えている」
「そうですね。科学の力で」
「その力も。火薬にしても」
 戦争のことも。王は話した。
 自然に顔を曇らせて。王は言うのだった。
「花火やそうしたものであればいいのだが」
「では翼も」
「人はあらゆるものをあらゆることに利用する」
 王は次には悲しい顔になっていた。
「だからその翼もまた」
「戦争に使われるのでしょうか」
「間違いなくそうなる」
 そのこともだ。王は観ていた。
「やがてはな」
「空にも戦火が及ぶ様になるのですか」
「この世のあらゆる場所がこれまでそうなっていた」
 戦争が行われてきた。それならばだというのだ。
「それでどうして空だけが例外でいられようか」
「だからこそですね」
「空もそうなる。しかしだ」
 それでもだと。王はここで言った。
「私はそれでもだ」
「空を飛ばれたいですか」
「そしてアルプスを観たい」
 王はこうホルニヒに述べていく。
「最早あらゆるものは。現実は」
「現実は?」
「現実は私の手から離れようとしている」
 バイエルン王としてだ。今の言葉を出した。
「全てはベルリンに移ろうとしている」
「プロイセンにですか」
「プロイセンはフランスに勝った」
 ナポレオン三世が降伏した。それならばだというのだ。
「フランス人達が何を言おうともだ」
「フランスは敗れたのですね」
「そうだ。敗れたのだ」
 最早そのことはだ。覆すことはできないというのである。
 王はこの現実がわかっていた。戦争の現実が。
「最早どうしようもない」
「フランスにとっては」
「その通りだ。そしてドイツ帝国ができる」
 ドイツ人としてこのことを見ていた。
「プロイセンを軸としたな」
「君主は残りますが」
「残るが最早統治することはない」
 それはもう決してだというのだ。
「全てはプロイセンが取り仕切ることになる」
「バイエルンはドイツの中に入ってしまうのですね」
「歴史の流れは必然だ」
 ドイツの中にだ。そうなるというのである。
「そしてそのドイツはだ」
「プロイセンですね」
「その通りだ。ビスマルク卿が取り仕切られる」
 こう言っていく。その時ふとだ。
 ホルニヒがだ。王にこのことを尋ねたのだった。
 
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