八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九十話 翌朝に話したことその八
「調べられるけれど」
「それでもお墓も」
「よくわからないし」
「証拠がとにかくだよね」
「一切残ってないんだよ」
「ルイ十四世の次のルイ十五世は知っていたっていうけれど」
僕はアルトネ君にこのことを聞いた。
「そのことは」
「ああ、そのことだね」
「うん、どうだったのかな」
「それはね」
どうにもという返事だった。
「ルイ十五世が他言しなかったからね」
「わからないよね」
「ルイ十五世だけが知っていることで」
それでというのだ。
「他の人はだし」
「その次のルイ十六世も知らなくて」
「わかってないんだよ、まあ当時いた監獄長は知っていたと思うよ」
鉄仮面が入っていたその監獄の責任者だ。
「その人はね」
「流石に知っていたよね」
「それでもこの人も相当な任務を受け持っていただけあって」
国王自ら厳重に監視する様に言った囚人の監視、それをだ。
「相当に口が堅かったしね」
「監獄の兵士にも話さない様な」
「そんな人だったから」
当然と言えば当然だけれど責任ある立場にあるだけにだ。
「何しろ鉄仮面が落とした手紙を拾った漁師さんのところに自分が飛んで来たっていうから」
「その漁師さん字が読めなかったからね」
「それで助かったけれど」
「若し読めてたら」
僕は思った、そして鉄仮面の正体を知っていたら。
「殺されてたね」
「監獄長さん笑って御前は運がいい奴だって言ったからね」
こう考えると字が読めると不幸であるケースもある、中島敦も文字禍とは全く別の意味でそうしたこともあるのだろう。
「間違いなくね」
「殺されてたね」
「というか人を殺しても任務を全うする様な」
「そんな人だったから」
「秘密もね」
それもと言うアルトネ君だった。
「守っていたよ」
「他言無用で」
「それでね」
「その人も喋らずに」
「死んだら証拠を全部消したから」
鉄仮面のいた部屋の壁から何から何まで削ったりしてそもそもいたという証拠すら消し去るという徹底ぶりでだ。
「その人は知っていても」
「以後はもう」
「知ってる人もいなくて」
それでというのだ。
「ルイ十五世だけは知っていて」
「それ以降は誰もだね」
「フランスでもジェヴォダンの野獣と並んで今も色々言われているけれど」
百人以上を殺したという謎の獣と共にというのだ。
「それでもね」
「今はだね」
「野獣も証拠が残っていないから」
野獣は仕留めた、だがその骸があまりにも腐敗していて捨ててしまって証拠が残っていないのである。
「だからね」
「どっちもだよね」
「一切わかってないんだよ」
「野獣は狼じゃないよね」
「ああ、狼って人襲わないんだったね」
「そうだよ」
僕の方からこのことを話した。
「相当に餓えてでもいないと」
「そうなんだよね」
「欧州では人襲うって思われてるよね」
「赤頭巾ちゃんとかね」
この童話が一番有名だろうか、人を襲う狼は。
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