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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十九話 武力と暴力その十二

「素晴らしいものです」
「そうですか」
「はい、ですから私の人生は満月の如く満ちています」
「そうなんですね」
「それとですが」
「はい、これからは」
「やはり秋なので」
 それでというのだ。
「読書にもお励み下さい」
「読書の秋ですね」
「そして芸術の秋、スポーツの秋ですね」
 畑中さんはこうも言ってきた。
「その二つもありますね」
「そうしたことでも秋をお楽しみ下さい」
「そうですね、あと」
「はい、何といってもです」
 畑中さんは僕にあらためて笑顔で話してくれた。
「食欲の秋です」
「そうですよね」
「はい、尚三銃士の頃のフランスは美食の国になる最中でした」
「次第になっていくんですよね」
「ルイ十四世の頃に確立されたと言っていいですが」
 それでもというのだ。
「ルイ十三世の頃は。そしてルイ十四世の時も次第にです」
「確立されていきますか」
「そうです、ただあの人は四十の頃には歯が一本もなくなっています」
「あっ、何か抜かれるんですよね」
「当時の医学によって」
 何でもある医者は歯が万病の元とかトンデモ理論を言い出してルイ十四世はそれを聞いて王として実践してだ、何と歯を全部抜かせたらしい。
 それでも麻酔とか一切なしで最後に抜いた跡を焼きゴテで塞いだらしい。聞いただけで痛くなる話だ。
「そうされました」
「それでそこから先はですね」
「まともな食事を食べられなくなりました」
 歯が一本もなくなってだ、そうなるのも当然だ。せめて入れ歯でもあれば別だが。
「ですから」
「大体あの人が四十歳位までにはですか」
「フランス料理は確立いますね」
「そうですか」
「はい、おそらくは」
「王様が中心に発展していったからですね」
 フランス料理はだ、僕達が言うフランス料理は宮廷料理が元でそれは文字通り宮殿つまり王様のところで発展していったものだ。
 それでだ、僕は言った。
「その王様が食べられないと」
「発展しませんね」
「ですから」
「王様の歯がある間でしたか」
「そうだったと思います」
「そうですか。ですが歯を全部抜くのは」
 僕はこの医学についてあらためて思った。
「藪医者もいいところですね」
「私もそう思います」
「その人本当に医者だったんですか?」
「はい、そうでした」
「現実を知らなかったんでしょうか」
「机上の論理にです」 
 まさにそれとしか思えない、それでも医学を一切知らない人が言い出したとしか思えない話だ。歯がないとどうなるか。
「まさに」
「そうですよね」
「そしてその机上の医学の結果です」
「ルイ十四世は歯を失ったんですか」
「その代わり多くのものを得ました」
「それは何ですか?」
「下痢と悪臭と流動食に近い食事です」
 この三つだったというのだ。
「何しろ噛めないので」
「ああ、柔らかいものしか食べられないですね」
「よく煮たシチューの様なものしか食べられなくなり」
「しかも噛んでないものをお腹の中に入れますから」
「常に消化不良で」
 その食事はだ。 
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