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夢幻水滸伝

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第七十五話 北上と南下その十三

「そしてそこから船の中にいる兵達が出て来てたい」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「そうしてですね」
「対岸の軍勢も川を渡ってきて」
「一気に攻めますか」
「そうしてくるたい、流石は薩摩っぽたい」
 美鈴は唸って言った、自分達の方に向かって来る空船達を見つつ。
「無茶な攻め方してくるたい」
「恐ろしい攻め方ばしてきますね」
「ではわし等どうしましょう」
「ここは」
「敵の思い通りにさせんのが戦たい」
 美鈴は自分に問うた兵達に落ち着いた声で答えた、そしてすぐに彼等に対して落ち着いた声のまま告げた。
「ここはたい」
「はい、ここはですね」
「どうされますか」
「一体」
「一旦退くか道を開けるたい」
 これが美鈴の今の策だった。
「そうするたい」
「そうして空船の強引な降下ば避ける」
「そうしますか」
「ここは」
「今は退いても間に合わんたいな」
 美鈴はその状況も冷静に見ていた、今も冷静に見てそのうえでこの場でどうすればいいのかを考えていた。
「ならあえて道を開けるたい」
「敵の軍勢のそれを」
「そうするとですか」
「そして難ば避ける」
「そうするとですと」
「そうするたい、敵がなんぼ派手に攻めてきちょっても」
 それでもとだ、美鈴が言うのだった。
「対策のない戦術はないばってん」
「その通りですね」
「所詮人が考えるのが戦術ですから」
「だからですね」
「この度はですね」
「そうして戦うたい、だからたい」
 それでと言ってだ、実際にだった。
 美鈴は空船が進んでくる前にいる兵達に全て逃げる様に言って道を素早く空けさせた、兵達の動きはよく訓練されていて素早かった。
 それで道は開けられた、そしてその道にだった。
 薩摩の空船達は降下した、降下といってもそれは胴体着陸と言っていいもので船は激しい音と衝撃と共に地面に着いた。
 そこからだ、空船から兵達が一斉に飛び出る。しかし。
 北原はその状況を見て兵達に言った。
「今逃したら負けるでごわす」
「おいどん達がですか」
「負けますか」
「そうなるでごわす」
 こう言うのだった。
「だからすぐに川ば渡って空船にいる兵達ば助けるでごわす」
「空船が囲まれているので」
「それで、ですね」
「今はですね」
「川をすぐに渡って合流する」
「その方がいいですね」
「そうでごわす」
 こう言ってだ、即座にだった。
 北原は兵達を率いて川を渡りにかかった、美鈴はその時強引に降下していた空船達を囲みそこから出る兵達を攻めようとしていたが。
 その動きを見てだ、またしても兵達に言った。
「囲みに抑えの兵ば置いて」
「そしてですね」
「そのうえで」
「川を渡る兵達にですか」
「主力ば向けますか」
「そうするたい」
 これが美鈴の考えた今の戦術だった。
「そしてこれがたい」
「決戦ですか」
「そうばなりますか」
「間違いなくそうなるたい」
 こう言ってだ、美鈴は北原が率いて川を渡る軍勢に自ら兵を率いて向かった。 
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