戦国異伝供書
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第二十一話 天下布武を固めその九
「だからじゃ」
「断じてですな」
「殿はそれはさせぬ」
「そしてですな」
「国を乱しませんか」
「一向宗は国を乱すだけの力を持っておったからな」
そして実際に一揆、一向一揆を起こしたからだというのだ。
「だから降したが」
「殿も門徒だからといって殺していませんな」
「決して」
「その様なことは」
「一揆を起こしたから戦い降しただけで」
「門徒だからといって殺してはいませんな」
「それで殺すなぞ考えたこともない」
これが信長の考えだ、彼は門徒が自身の天下布武を阻む存在であるのでそれで戦って倒したのである。
だからだ、教えが違うからだのその教えだからといって殺すことはというのだ。
「一度もな、ふと脳裏によぎったことさえじゃ」
「ありませんな」
「殿にしても」
「このことは」
「そうじゃ、一切ない」
まさにというのだ。
「だからな」
「はい、それでは」
「耶蘇教の者達についても」
「それは許しませんな」
「どういった教えでもいい」
耶蘇教の教えはどうでもいいというのだ。
「それはな、しかしな」
「他の教えにとやかく言う」
「そうしたことはですな」
「許しませんな」
「断じてな、日蓮宗も他の教えは認めぬが」
しかしというのだ。
「それでもじゃな」
「はい、幾ら何でもです」
「日蓮宗も他の神社仏閣を壊すなぞしませぬ」
「他の宗派の門徒を殺すことも」
「そうしたことも」
「わしも日蓮宗であるが」
しかしと言うのだ。
「今言った通りじゃ」
「ですな、他の教えであっても」
「認めぬ訳ではなく」
「殺すこともしませんな」
「何度も言う、断じてじゃ」
それこそというのだ。
「わしはせぬ、そしてじゃ」
「ですな、しかし耶蘇教は恐ろしいですな」
「自分達と教えが違うと殺すなぞ」
「それも惨たらしく」
「そうするなぞ」
「どうやら耶蘇教は恐ろしい部分もある」
また言った信長だった。
「そのことは覚えておくか」
「はい、我等もです」
「そうしたことはしませぬ」
「断じて」
蒲生と黒田、高山といった切支丹の者達も言ってきた。
「そこまでは」
「考えてもいませんでしたし」
「これかでもです」
「そうしたことは」
「ならよい、若しすればな」
その時はというのだ。
「国がこれ以上はないまでに乱れることはな」
「覚えておきまする」
「何があろうとも忘れませぬ」
「決して」
「そうしてもらうぞ、今な」
誓えというのだ。
「よいな」
「そう致します」
「実際に今ここで」
「確かに」
「ではな」
信長も彼等の言葉を聞いた、そこに心があることもわかった。
それでだ、彼あの言葉を受けてだった。
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