戦国異伝供書
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第二十一話 天下布武を固めその八
「その様なことをして何になる」
「全くですな」
「その様なことをしてもです」
「一体何になるか」
「そのことについては」
「わしは天下布武を阻むから戦ったまでのこと」
比叡山や高野山、そして一向宗とだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「教えは禁じていませんな」
「その一向宗にしても」
「その考えは全くない」
それも一切というのだ。
「矢銭も求めたが寄進もしておるな」
「それも多く」
「そうしていますな」
「そうじゃ、人の教えなぞは禁じるものではない」
それは一切というのだ。
「だが耶蘇教は違うからのう」
「フロイト殿はそこまで言われませぬが」
「中にはそうした者もいますな」
「伴天連の者の中には」
「他の教えを認めず攻める者が」
「あちらでは耶蘇教でないと殺されるというが」
信長はその南蛮の話もした。
「そんなことをしてどうなる」
「ううむ、そこまでは」
「幾ら何でも」
「するものではないですが」
「そうじゃな、しかしじゃ」
それでもと言う信長だった。
「今の大友家は違う」
「他の教えを認めず」
「耶蘇教の者達が言うままに」
「他の教えを圧していますか」
「そうしておるからな」
だからだというのだ。
「これは後々な」
「厄介なことになりますか」
「今でも危ういことですが」
「そのことが」
「そうじゃ、どうしたものか」
まさにと言うのだった。
「大友家については」
「当家はそうしたことはしていませんが」
「それでもですな」
「そこをどうするかですな」
「一体」
「大友家に対して」
「そうじゃ、わしは絶対にじゃ」
信長としてはというのだ。
「そうしたことはせぬ」
「耶蘇教を認めてもですな」
「他の教えを脅かしたりはしませぬな」
「そうしたことは認めませんな」
「殿としては」
「だから大友家にもな」
天下布武がなり自身が天下を治める様になればというのだ。
「その時はな」
「断じてですな」
「大友家にも許さず」
「そのうえで」
「そうじゃ、そしてじゃ」
さらに言う信長だった。
「耶蘇教の者達に対してもな」
「左様ですな」
「決してその様なことはさせませんな」
「神仏の教えを認めない様なことは」
「神社仏閣を壊したりすることは」
「断じてさせぬ、その様なことをしてどうなる」
まさにと言うのだった。
「ましてや他の教えを認めず信じる者を惨たらしく殺すなぞな」
「耶蘇教はそこまでしますか」
「他の教えの者は殺しますか」
「それはまた」
「何と恐ろしい」
「そんなことをさせればどれだけの者が命を落とす」
その危惧を言うのだった。
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