八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十九話 武力と暴力その四
「当時は」
「まことに」
「何か知識人も政治家も」
「今もそうした人達は残っていますが」
「それで徴兵制がどうとか言ってるんですね」
「つまりこうした人達はです」
何かとだ、畑中さんは僕に話してくれた。
「予言の本を適当に曲解して人類は滅亡すると喚いている」
「そうした人達と一緒ですか」
「そうなのです、予言の本なぞ何とでも言えます」
「ですね、ノストラダムスとか」
ああした本の特徴だろうか。何とでも読めるのだ。
「もうそれこそ」
「何とでも読めますね」
「それで人類滅亡とか言おうと思えば」
「そこから本を書けますね」
「それがかなり売れたんですよね」
「はい、しかし曲解は曲解です」
それに過ぎないとだ、畑中さんは看破して僕にお話してくれた。
「嘘はすぐにばれまして」
「曲解もですね」
「すぐに曲解とです」
「わかりますか」
「そうしたものに過ぎません」
所詮はというのだ。
「ですから正しい解釈には勝てません」
「戦後日本は予言も出回りましたけれど」
「マルクス主義は遥かに酷かったです」
もう箸が転がるだけで人類滅亡だと喚いて騒いでいた人達の本が売れるよりも悪影響は酷かったというのだ。
「予言は書いている人が作家ですね」
「はい、普通の」
「作家と大学の教授や政治家では権威が違います」
「ですね、確かに」
「学校の先生もです。しかも彼等はテレビや新聞、有名な週刊誌にこぞって出ます」
予言の話なんてミステリー雑誌にしか出ない、結局はイロモノなのだ。
しかしだ、マルクス主義者達はというと。
「権威ある立場でマスメディアも掌握していたのです」
「もう影響力は絶大ですね」
「一介の作家とは比較にならなかったです」
権威、そしてメディアの宣伝能力だ。その力は絶大だ。
「それでなのです」
「影響が凄くて」
「多くの人が惑わされました」
「それで徴兵制度復活だの日本の経済侵略だの」
「そうした悪質なデマコーグが力を持っていました」
「デマコーグですか」
「嘘が」
文字通りのそれがというのだ。
「扇動されて学生運動に入った者もいますし」
「そうした連中が今もいてですね」
「沖縄の基地の前でもです」
まさにあそこでというのだ。
「騒いでいて他にもデモがあれば」
「何処からともなく出て来て」
「騒ぎを起こしているのです」
「そうなんですね」
「そして言っていることは同じです」
それこそ六十年近く前からだ。
「戦争反対だのと。しかし実は」
「革命とか考えているんですね」
「若し彼等が日本を支配すれば」
その時はどうなるかもだ、畑中さんは僕に話してくれた。
「むしろ彼等こそが徴兵制度を導入します」
「以前の主張と違って」
「ソ連は徴兵制でした」
畑中さんはこのことを指摘してきた。今でも徴兵制の国は北朝鮮以外でも結構ある。軍隊の高度な専門職化から結構減ってきたけれどだ。兵士数よりも将兵の質つまりは専門的なスキルをどれだけ備えているかが重要になっているのだ。とはいっても徴兵制度がどうとか言っている人達がこんなことを知っている筈がない。
「そして北朝鮮は」
「もっと言うまでもないですね」
「共産主義の国は徴兵制度の国が多かったです」
「そこ日本じゃ知られてないですね」
「平和勢力と喧伝されてましたが」
その実はだ。
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