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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十八話 本を探しているとその十

「私は」
「それは戦後ずっとでしたか」
「はい、終戦直後から急に広まりましたが」
 治安維持法で取り締まられていた人達が自由になり転向した人も出てだ、日本にこの思想は急に広まった。
「私はずっとです」
「共産主義は否定されていて」
「小説もその色がありますと」
「読まれなかったんですか」
「ソ連崩壊まで酷いものでした」
 終戦から三十五年以上だ、実に長かった。
「共産主義は小説にも漫画にも影響を与えていました」
「凄かったんですね」
「そうでした、ですが私は」
「ずっと共産主義を否定されて」
「生きてきました、八条家にお仕えして」
「そうだったんですか」
「私にとっては戦いでした」
 戦後日本で共産主義と向かい合う、そのことはというのだ。
「まさに」
「長い戦いだったんですね」
「満州での話も聞いていましたし」
「満州では酷かったんですね」
「ソ連軍は一般市民でも平気で攻撃しました」
 これが平和勢力の軍隊のすることか、よく平気でこんなことを言う人達が満州から命からがら引き揚げてきた人達に抗議どころか袋叩きにされなかったものだ。
「義和様もご存知ですね」
「満州で何があったのか」
「そのことは」
「聞いています、とんでもない話ですよね」
「あれがソ連です」
 あの国の正体だというのだ。
「私は引き揚げて直接聞きました」
「満州から帰ってきた人達に」
「そしてソ連の正体を知りまして」
「固まりましたか」
「ソ連、共産主義は絶対に認められないと」
「若し認めたらですね」
「日本は終わると確信しました」
 若き日の畑中さんはそう思われたというのだ。
「幸い革命なぞなりませんでしたが」
「そうした時代だったんですね」
「私は吉川英治に三島由紀夫をよく読みました」
「わかります、三島由紀夫を読まれたことは」 
 当時の保守系知識人の中でも最も活動的だった人だ、けれどあまりにも極端に走ってああなってしまった。
「共産主義を否定されていて」
「皇室に尚更です」
「素晴らしいものを感じておられましたか」
「日本という国にも」
「そうでしたか」
「ビルマの竪琴も読みました」 
 映画にもなっている、竹山道雄の名作だ。
「素晴らしい作品でした」
「あの作品は読みやすいですしね」
「素晴らしいです、ただ共産主義者でも主張は否定しても」 
「それでもですか」
「正々堂々としていれば私は嫌いません」
 例えその主張に賛成出来なくてもというのだ。
「それならば」
「剣道をする時の様に」
「はい、ですが日教組にお話を戻しますが」
「日教組だとですか」
「剣道をしていましても」
 日教組に所属している教師が剣道をしていることもある、教師は部活の顧問を務めることも仕事のうちだからだ。
「生徒に虐待を加える様なことを平気でしますし」
「畑中さんが以前成敗された奴ですか」
「中学生の子供に突きなぞしてはいけません」 
 まだ身体が出来ていないので危険だからだ、このことは剣道を専門的にしたことがない僕も知っている。
「大怪我を負います」
「そうなりかねないですよね」
「ましてやリンチ技であるシャベル突きを嬉々として使うなぞ」
 中学生の子に対してだ。
「怪我をすればどうなるか」
「そうした教師は責任取らないですね」
「揉み消します」
 畑中さんは断言した。 
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