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永遠の謎

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489部分:第二十九話 人も羨む剣その十一


第二十九話 人も羨む剣その十一

 その軸からだ。王は言うのである。
「しかしその中でも特に」
「ワーグナー氏ですね」
「あの方の芸術が」
「彼しかいない」
 まさにだ。ワーグナーだった。
 王はそのワーグナーを至高に置きだ。城を考えていた。
 そしてそこにあるのは。やはり彼だった。
「ローエングリンをとりわけ表に出す」
「だから白鳥ですか」
「白鳥を中心に置かれますか」
「この緑の森の中で」
 その城はだ。王が今いる森の中に築かれる予定なのだ。
 そしてだ。あるのは緑だけではなかった。
「青の空に白い山に囲まれてだ。ローエングリンは永遠にここに留まるのだ」
「他のワーグナー氏の世界もですね」
「その世界も」
「無論だ。タンホイザーもあり」
 彼もだった。やはりいた。
「トリスタンもヴァルターもいるのだ」
「そしてジークムントもジークフリートもですね」
「彼等の世界も」
「無論だ。パルジファルもだ」
 ワーグナーが今構想している聖なる愚か者もだった。いるというのだ。
「彼の世界もあるのだ」
「では城はモンサルヴァートでもあるのですか」
「聖杯の」
「そうかも知れない。私は」
「陛下は?」
「どうなのですか?」
「近頃ワーグナーはビューロー夫人と共に私をこう呼んでいるそうだ」
 ワーグナー自身のこともだ。王は話す。
「パルジファルとな」
「その主人公にですか」
「陛下を」
「その様だ。だがそれはいいと思う」
 パルジファルと呼ばれることもだ。王は受け止めていた。
 それでだ。言うことは。
「若しかすると私は」
 王はだ。考える目になりだ。
 それでだ。今言う言葉は。
「あの城に行くべき人間なのかも知れないからだ」
「モンサルヴァート」
「あの城にですか」
「そうだ。あの城だ」
 王はその遠くにある城を見ていた。遥か彼方の世界にある。
 その城を見ながら。王は言うのだ。
「あの城に私は行くのだろうか」
「そういえばローエングリンはそのパルジファルの息子でしたね」
 一人がこう言った。
「彼自身が劇中で言っていましたが」
「そうだ。あの城の主となる者だ」
「ですね。そもそもは」
「今は主になっているのだろうか」
 そのだ。聖杯の城のだというのだ。
「そして私は次の」
「次の?」
「次のといいますと」
「いや、それはないな」
 しかしだ。すぐにだった。
 自分自身でだ。その言葉を打ち消してだ。
 それでだ。言ったのだった。
「私の様なものが。だからこそこの世に築くのだ」
「では陛下、それでは」
「城は」
「その方針でいく」 
 現代の科学も入れてだというのだ。
「それでだ。名前は」
「名前はどうされますか」
「城の名前は」
「ノイシュヴァンシュタインだ」
 その名にするというのだ。
 
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