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永遠の謎

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482部分:第二十九話 人も羨む剣その四


第二十九話 人も羨む剣その四

「何があっても対立を避けてだ」
「あの国とは戦わない」
「あわゆる外交努力を行いですね」
「そうだ。あの国とは戦わない」
 また言う彼だった。
「無論あれ以上勢力の拡大も防ぎたいが」
「ではイギリスに協力を仰ぎますか」
「その際は」
「そうだ。そうする」
 今度はこの国の名前も出た。
「あの国に対抗できるのはイギリスしかいない」
「七つの海を支配するあの国ですか」
「あの国しかありませんか」
「そうだ。今のところドイツとイギリスは」
 その両国の関係についてもだ。ビスマルクは述べる。
「対立関係にない」
「確かに。利害自体がありません」
「特に」
「あの国は多くの植民地を持っている」
 それがイギリスの特徴だ。その多くの植民地がイギリスを支えているのだ。海軍はその植民地とそこから運ばれる富を守る為にあるのだ。
 しかしだ。ドイツは植民地がない。だからだというのだ。
「植民地も若しかして」
「若しかして」
「といいますと」
「必要ないのかもな」
 こう言うのだった。植民地についても。
「ドイツには」
「不要でしょうか」
「まさか」
「下手に進出すればそのイギリスと対立してしまう」
 そのことも考えてだった。
「そうなれば厄介だ」
「それは確かにそうですね」
「ロシアとも対立したくないですが」
「イギリスともですね」
「その両国と対立すればドイツにとって危険だ」
 まさにだ。陸と海からだった。
「それは避けたい」
「むしろ両国にですか」
「対立してもらいですね」
「ドイツは厄介を避ける」
「それがよいですか」
「おそらくな。それがいい」
 まさにそうだと話すビスマルクだった。
「只でさえロシアとイギリスは対立しているのだからな」
「そうですね。今も各地で対立していますし」
「そのまま対立してもらいですね」
「我が国に矛先が行かないようにしますか」
「戦いは避けるに限る」
 これがビスマルクの本音だった。やはり彼は戦争を好んでいる訳ではないのだ。むしろ戦争を知っておりだ。必要か不要かも弁えていたのだ。
 だからだ。フランスとの戦争の後にはというのだ。
「絶対にだ」
「では下手な進出を避けますか」
「ドイツは統一してからは」
「国内の産業を充実させたい」
 これがビスマルクの考えだった。
「幸いルールがある」
「あの地ですか、炭鉱のある」
「あの地に工業地帯を作るのですね」
「そうしたい。それとアルサス、ロートリンゲンの鉄だ」
 炭と鉄、この二つだった。
「その二つを使ってドイツの産業を築き上げるのだ」
「あのイギリス以上の産業をですね」
「築き上げるのですね」
「そうしたい。ドイツは幸いにして近代化に成功している」
 所謂上からの近代化だ。ビスマルクがそれを達成させているのだ。彼は外交だけではないのだ。内政においても秀でているのである。
 
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