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永遠の謎

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480部分:第二十九話 人も羨む剣その二


第二十九話 人も羨む剣その二

「私は開戦すればすぐに前線に向かう」
「そうしてですか」
「戦争を終わらせるのですか」
「即座に」
「そうだ、そうする」
 また言う皇帝だった。
「敗れるのなら。犠牲者は少ない方がいい」
「全てはプロイセンの思う通りですか」
「状況は進んでいる」
「まさに」
「そしてドイツは統一される」
 そうなるともいうのだ。
「完全にだ」
「係争地であるアルザス、ロレーヌはドイツのものになる」 
 何故プロイセンがフランスとの戦争を望むかというとその二つの地の存在も理由にあった。鉱産物が豊富なその二つの地をドイツに完全に組み入れる為だ。 
 この地はドイツの呼び名ではアルサス、ロートリンゲンとなる。ドイツとフランスの領土の間でそれぞれ領有が主張されているのだ。
 だからだ。ビスマルクは戦争を考えているのだ。
 そうしたことを話してだ。皇帝は戦争を待っていた。フランスでは彼だけが暗鬱ある中にいた。
 そのフランスとの戦いを進めるプロイセンではだ。ビスマルクがだ。
 意気揚々と仕事をしながらだ。彼の周囲に述べていた。
「全ては順調だ」
「はい、間も無くですね」
「フランスとの戦争がはじまります」
「ドイツの全ての国が我が国と共に戦います」
 周囲は次々にビスマルクに話していく。
「まさにこちらこそがです」
「ボタンの一つの抜かりもありません」
「何もかもが整っています」
「フランスは孤立している」
 そこまで追い詰めたのだ。ビスマルクが。
「それに対して我々は団結させた」
「それで敗れる筈がない」
「フランスは一国だけで戦うのに対してですね」
「我が国は既に周辺国の好意的中立を取り付けています」
 これもだ。ビスマルクの手腕である。
 彼が既に外交的にもだ。手を打っていたのだ。
 オーストリアとの戦争の時と同じだった。打てる手は全て打ちだ。万全を期して戦争に向かう。絶対に勝てる状況にしてからなのだ。
 ビスマルクは既に用意した。ならばだった。
 負ける筈がなかった。プロイセンが。
 そしてだ。戦争に勝ってからだった。
 彼等はだ。あるものを手に入れるのだった。
「ドイツを手に入れますか」
「統一されたドイツがですね」
「我々のものになりますね」
「そうだ、なる」
 まさにだ。そのドイツがだった。そしてだ。
 そのドイツをどうするかはだ。ビスマルクはこのこともだ。
 既に頭の中にありだ。こう言ったのだった。
「もう戦争はしない」
「しませんか」
「最早」
「そうだ、しない」
 このことは確約の言葉だった。
「する必要がなくなる。それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「私は必要だから戦争をするのだ」
 これがだ。ビスマルクの戦争への考えだった。
「戦争は決して好きではない」
「では必要ならば平和を求める」
「それが閣下の御考えですか」
「ドイツは欧州の中央にある」
 ドイツの地政学的な状況についてもだ。ビスマルクは把握していた。
 
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