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永遠の謎

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461部分:第二十八話 逃れられない苦しみその五


第二十八話 逃れられない苦しみその五

「それが問題ですが」
「陛下が手に入れられるもの」
「それは」
「美なのか」
 それではと。王は呟いた。
「芸術か」
「一体何かをですか」
「それが問題ですか」
「彼は言いました」
 この『彼』は周囲はワーグナーだと思った。しかしだ。
 王はあの騎士のことを考えた。そして言うのだった。
「私は築くべきだと」
「築く?」
「築かれよとですか」
「あの方は仰ったのですか」
「そうです」
 王は周囲とは違う『彼』をその目に見ながら話す。
「では私はいよいよ」
「あと陛下、明日のことですが」
「宜しいでしょうか」
 ここで話が変わった。そしてだ。
 周囲はだ。こう王に話すのだった。
「やはりフランスもです」
「戦うつもりの様です」
「どうやら」
「そうですか」
 王はこの話にはだった。
 顔を曇らせてだ。そうして述べた。
「では避けられませんね」
「どうやら。そしてです」
「我が国もまた」
「明日。ホルンシュタイン伯爵を呼んで下さい」
 彼をだ。呼ぶというのだ。
「そうして下さい」
「はい、では伯爵を」
「あの方をですね」
「そうです。そしてです」
 さらにだ。王は言った。
「首相もです」
「ホーエンローエ卿もですか」
「あの方もまた」
「そうです。ただしです」
 ここでだ。一つだ。王は言った。
「それぞれ別にです」
「お話されますか」
「首相と伯爵とは」
「そうします」
 こう話してだった。王はだ。
 舞台のカーテンコールを見て余韻を味わっていた。その余韻は。
 現実の中に戻ろうとする王にだ。このうえなく甘美な感触を味あわさせていた。その甘美なものに浸りながらだ。王は耐えられない現実に戻ろうとしていた。
 その次の日だ。王は。
 まずはホルンシュタインにだ。こう話したのだった。
「プロイセンは何と言っていますか」
「はい、バイエルンはです」
 どうかというのだ。それは。
「ドイツと共にあるべきだと」
「そう言っているのですね」
「はい、そうです」
 その通りだというのだ。
「ですから我が国は」
「わかりました」
 こうだ。彼は苦い顔で答えたのだった。
「それではです」
「兵を動かされますか」
「中立はできません」
 王にはわかっていた。この国のことは。
 それでだ。また言うのだった。
「バイエルンはドイツにあるのですから」
「その通りです。では」
「兵を動員しましょう」
 王は一つの決断を述べた。
 
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