戦国異伝供書
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第十九話 急ぎ足その九
「大坂の街にも必要ですな」
「うむ、殿はあの地に大きな城を築かれるとのことじゃが」
石山御坊があったこの地にというのだ。
「そしてな」
「あの地は川が幾つもあるので」
「橋を多く架けてな」
そうしてというのだ。
「街としての往来をよくするか」
「そうお考えの様です」
「殿は道や堤だけではないな」
「橋のこともお考えですな」
「左様じゃな、あれがな」
「よいですな」
竹中も頷くことだった。
「天下の政として」
「軍勢の進みにもよいしな」
「街も栄えさせまする」
「橋も大事ということじゃな」
「国には」
「若し橋を壊されると」
その時のこともだ、黒田は話した。
「それで進むのが止まる」
「川を泳いで渡るか舟でとなり」
「それは実に不便じゃ」
「そう思うと橋を落とすことも」
「戦においては」
「敵の足止めにもなってな」
それでというのだ。
「大事じゃな」
「敵を来させぬ為にも」
「逆にそうなるな」
「はい、しかし領内においては」
その政を考えると、というのだ。
「やはり」
「橋は必要じゃな」
「人、軍勢にしても」
「往来の為にな」
「現に我等もよく進めています」
橋があるせいでというのだ。
「有り難いことに」
「左様であるな、しかもな」
黒田はここでこうも話した。
「殿は尾張と美濃の堤を万全にされた」
「あの二国は川が多くよく氾濫しましたが」
「それも治められたしな」
「お陰で船の往来も橋もよくなり」
「我等も無事に進める」
その尾張や美濃もというのだ。
「有り難いことにな」
「ですな、民を助けいざという時に我等も素早く動ける」
「殿のまことに凄いのは戦ではないであろうな」
「政ですな」
「わしはそう思う」
「それがしもです、殿が天下人になられれば」
その時はというと。
「天下はより豊かになりますな」
「間違いなくそうなるな」
「左様ですな」
こうした話もしつつ織田家の軍勢は橋を渡りさらに先に進んだ、そうして遂に尾張に着いたがここでだった。
港に届いていた武具を受け取った、信長はその武具達を見て言った。
「よし、ここからはじゃ」
「武具に身を包み」
丹羽がその信長に応えた。
「そうしてですな」
「そうじゃ、そしてな」
そのうえでというのだ。
「三河に入るぞ」
「徳川殿は見事にです」
「守っておるな」
「はい、どの城も」
「間に合いそうじゃな」
信長は丹羽のその話に笑みになって応えた。
「それは何よりじゃ」
「左様ですな」
「それでじゃが」
「これよりですな」
「兵達に具足を着けさせてじゃ」
そうしてというのだ、港には織田家の青い具足が山の様にあり港を埋め尽くさんばかりに置かれている。
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