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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十二話 港とヤクザその七

「港からも」
「他の業界からもでね」
「だからね」
「もう港にもだね」
「減ったみたいだよ」
 そのヤクザ屋さん達がだ。
「この神戸でも」
「そうなんだね」
「色々な国の船や人が出入りする様にもなったしね」
「そのことでも変わったよね」
「うん、神戸の港もね」
 そうだというのだ。
「もう暴力団の人達が入る余地はね」
「なくなってきているかな」
「そういう風になってるよ」
 変わったというのだ、そうした風に。
「有り難いことにね」
「いいことだよね」
「うん、いいことだよ」
 若井君もこう返した。
「ああした人達がいなくなるとね」
「犯罪組織だからね」
「何時抗争するかわからないし」 
 神戸でもそうした話があった、というか今もそうしているけれど僕達が生まれる前にも全国規模の内部抗争があったという。
「外の組織ともね」
「揉めるしね」
「それですぐに銃撃とかやるし」
「だからだよね」
「巻き込まれたら大変だから」
 一般市民である僕達がだ。
「巻き込まれなくても麻薬とか売るし」
「密売とかしてね」
「そのこともあるから」
「出来るだけだよね」
「ヤクザ屋さんはいないに限るよ」
「マフィアとかもね」
「そうそう、犯罪組織はね」
 名前はどうあれそうした人達そして組織はというのだ。
「港でもどの業界でもね」
「ダフ屋さんにしても芸能界にしても」
「野球の選手の獲得も」
 こうしたことにも関わっていたから昔は随分と表と裏のそれぞれの社会は今よりずっと密接に関わり合っていたことがわかる。
「何でもね」
「関わっていたけれど」
「今はね」
「そうした時代じゃないから」
 これを清潔になったと言うべきか。
「もっとね」
「ヤクザ屋さんが住みにくい様にだね」
「そうした社会にしていかないとね」
「あの音楽は恰好よくてもね」
 僕達はこんな話をした、そしてこの日の昼だった。
 若井君から言われたことをお話しに早百合さんがいると思われるピアノ部の部室に向かった。早百合さんはお昼もそのお部屋で演奏をすることが多いからだ。
 案の定お部屋に近付くとピアノの演奏の音が聴こえてきた、その他に。
 その演奏に合わせて歌声も聴こえてきた、それは裕子さんの声だった。
 それで僕は部屋に入ってだ、こう言った。
「裕子さんもいます?」
「ええ」
 丁度歌が終わったところでだ、早百合さんは僕に応えてくれた。早百合さんはピアノの席に座っている。
「一緒にです」
「練習をされていたんですね」
「そうです」
 言葉は現在形だった。
「ピアノと歌、合わせてです」
「どちらもですか」
「そう考えてです」
「一緒に練習されてたんですね」
「推薦入試も近いので」
「お二人共確か」
 早百合さんのその言葉を聞いてだ、僕は早百合さんに問い返した。
「八条大学のですね」
「はい、芸術学部のです」
「音楽科にですね」
「進学を考えていまして」
 それでというのだ。 
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