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永遠の謎

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398部分:第二十五話 花咲く命その十四


第二十五話 花咲く命その十四

 それを聞いてだ。王も実際に言う。
「私は公を務めます」
「では結婚されますね」
「そうされますね」
「はい」
 そうするしかなかった。わかっていた。
 だがそれでもだ。心の中では。
 その結婚についてどうしても従えないものを感じ続けていた。
 それをだ。ホルニヒには、二人だけの時には話すのだった。
 項垂れた顔でソファーに座りだ。傍にあるベッドの中にいる彼に話した。
「あのことだが」
「御成婚のことですか」
「やはりできない」
 こう言うのである。
「何故かはわからないが」
「何故かといいますと」
「私は。女性とは結婚できない」
「それはどうしてでしょうか」
「わからない。とにかく同性と結婚するような」
 そうしたものを感じるというのだ。
「だからだ。どうしてもだ」
「それはできませんか」
「私は女性を愛せない」
 これは前からだった。しかし結婚を仕事として割り切ることもできる。だが王はだ。そのことについてはこうホルニヒに話すのだった。
「結婚するならばだ」
「結婚するだけではないと」
「御互いに全てを愛してこそだ」
「そうでなければ結婚ではありませんか」
「そうだ。そうしなければ駄目だ」
 そして言う彼等は。
「ヴァルターとエヴァの様に」
「マイスタージンガーのあの二人ですね」
「彼等の様に幸せにならなければならない」
「女性もまた」
「女性に心がない。それは嘘だ」
 キリスト教徒だがそれでもだ。キリスト教の考えの中のこれは否定した。
「女性にも心がある」
「そうですね。女性にも」
「そしてそれを軽んじることはだ」
「許されませんか」
「決してだ。だからだ」
 愛のない、結婚はどうかというのだ。
「そんなものがあってはならないのだ」
「その通りですね。やはり」
「私はゾフィーを愛したい」
 こうした願いも確かにあるのだ。
「しかしだ」
「それでもですか」
「私は彼女を愛せない」
 こうも言うのだった。
「愛さなければならないのに愛せないのだ」
「女性を」
「自分でもわからない。だが」
「女性をどうしても愛せないというのですか」
「苦しい」
 そのことはそのまま王を苦しめていた。女性を愛せないことを。
「そして罪なのだ」
「いえ、陛下それは罪では」
「男性が男性を愛する。それは罪だ」
 キリスト教の考えでもこれはだ。王は受け入れていた。いや、受け入れざるを得なかった。それが王を尚更苦しめているのだ。
「私は許されない罪を犯している」
「それは」
「私は狂気に陥っているのか」
 不意にだ。こんなことも言う王だった。
「だから。こうして」
「男性を愛するというのでしょうか」
「女性を愛するのが当然だ」
 自分自身をわからないまま。王は言った。
「それで男性を愛するのはだ」
「それが狂気ですか」
「何故だ。何故男性を愛するのだ」
 王の嗜好は美青年だ。背が高くすらりとした。ホルニヒにしろ先のタクシスにしろそうだった。そうした存在が王の愛の対象だ。
 
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