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永遠の謎

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397部分:第二十五話 花咲く命その十三


第二十五話 花咲く命その十三

「それを証明しましょう」
「その為にですか」
「御手紙を書かれるのですね」
「あの方に対しては」
「いえ」
 それではないというのだ。彼の潔白の証明の為の手紙ではないというのだ。
「違います」
「違う?」
「違うといいますと」
「それは」
「このことです」
 一言聞いただけではだ。どうしてもわからないことだった。
 そのわからないことをだ。王はさらに話した。
「今のこの」
「今のといいますと」
「ではご婚礼の」
「そのことで」
「はい、彼にも書きます」
 そうだというのだ。ワーグナーに結婚のことをだ。
「そうします」
「どういうことかわかりませんが」
「あの方にもご婚礼のことで、ですか」
「書かれるのですね」
「はい、そうです」
 王は言い切ったのだった。
 そうしてあった。王はまた話した。
「ではその様にです」
「はい、書かれたお手紙は送らせて頂きますので」
「それぞれの方に」
「そうして下さい。それでは」
 こう言ってであった。王は三人に対してそれぞれ手紙を書くのだった。そうしてそれが終わってからだった。彼は侍従達にその書き終えた手紙を渡したのだった。
 それでだ。手紙を渡してだった。王は彼等に話した。
「これで」
「これで、ですね」
「話はまとまりますね」
「それはわかりません」 
 いつもの憂いに満ちた顔でだ。王は話すのだった。
「ですが」
「しかしですか」
「それでもですか」
「手紙でも」
「私は。やはり」
 やはりだとも話す。王の言葉は次第にとりとめがなくなってきていた。
 だがそれでもだった。王は言わずにはいられなかった。
「結婚は」
「あの、ですから」
「これ以上何かあればです」
「大公も」
「わかっています」
 わかってはいるのだ。王もだ。
「しかし。それでもです」
「陛下」
 一人が厳しい言葉を出した。
「陛下は王であられますね」
「その通りです」
 バイエルン王だ。このことは王にとっては絶対のことだった。王を王たらしめているもの、それに他ならないのだ。
 だからだと。その彼は言うのだ。
「王ならばです」
「我儘は許されないというのですね」
「そうです。申し訳ありませんが」
「王は微塵の我儘も許されない」
 王も自分から言う。
「全ては公だからこそ」
「王の結婚は公ですから」
「だからどうしてもですね」
「御成婚を」
 とにかくだ。結婚はしなければならないというのだ。
 
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