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夢幻水滸伝

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第七十話 山と海その一

               第七十話  山と海
 芥川は使者が悪党達が降伏せずにあくまで戦うと言ってきたのを聞いてだ、彼等の砦をここでも見て言った。
「よし、ほなな」
「攻めるか」
「ああ、ただな」
「あの砦にか」
「こっちの世界で千早赤阪の戦いって戦があってな」
「悪党の戦か」
「楠木正成って人がおってな」
 鎌倉時代末期、南北朝時代初期の名将である、太平記の主人公の一人と言ってよく戦前の日本では英雄とされていた。
「その人が悪党やったけどな」
「砦に籠ってか」
「ああしたな、城やったけどな」
 彼が籠ったのは砦ではなくそこだったというのだ。
「けどな」
「それでもか」
「そや、その城に色々細工しててな」
「攻めてきた敵をか」
「見事撃退したんや」
 その戦いでというのだ。
「十万の大軍で攻めてきた幕府軍をな」
「そんな戦があったんか」
「ああして山の中におってな」
「ほなあの砦もか」
「完全に囲まれてまだ戦うとなると」
 そう言ってきたからにはというのだ。
「絶対にな」
「あの砦にもか」
「細工してるわ」
 そうしているというのだ。
「それでや。迂闊に攻めるとな」
「罠とか仕掛けにやられるか」
「今までずっと罠や隠し道があった」
 山を進む中でというのだ。
「そやからな」
「ここからもか」
「まだ仕掛けがある、それもな」
「相当な仕掛けがやな」
「あるわ、そやからな」
「ここは迂闊には攻めんか」
「今思った」 
「兵は少なくなっててまだ籠城して戦うからにはな」
 狐もここで言った。
「そやからな」
「ここはか」
「そや、あえて兵の数で攻めることなくな」 
 そうしてというのだ。
「考えて攻めるで」
「空船使うか」
 狐は空を見上げた、空船達は砦の上に集まって待機している。
「爆弾落として」
「それも手やけどな」
「ほなそれでやな」
「まあ待つんや、ここは僕の力を使うか」
「星のモンの力をか」
「使うか、そしてな」
 さらに言う芥川だった。
「その力の凄さがすぐに大和の南に伝わるやろ」
「噂は人が少しだけおってもな」
 それこそとだ、狐も答えた、
「光と同じ速さで、しかもどんな壁も山も谷も越えてや」
「伝わるな」
「それが人の噂や」
「そやからやな」
「その噂を流させてな」
「星のモン、神星には誰もか」
「勝てんという話、そしてな」
 ここでだ、芥川はニヤリと笑った。そうして狐にこうも言った。
「大和の北と同じか」
「そういうことか」
「そや、これでどうや」
「ええな」
 狐も芥川にニヤリと笑ってそのうえで応えた。
「確かにな」
「そやろ、ほなな」
「それでいくで」
「わかったわ、ほな今からやな」
「仕掛けるで」 
 芥川は忍者の印を結んだ、左手の人差し指を右手で握って右手の人差し指も立てる。両手は拳にして己の胸の前に置く。それはまさに忍の印だった。 
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