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戦国異伝供書

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第十六話 天下の大戦その八

「だからな」
「毛利を降しても」
「終わりではない、すぐに東にとって帰って戦うぞ」
「わかり申した、もう急いで戻らねば」
「北陸は最悪でも北ノ庄で食い止められる、毛利との戦が終われば猿夜叉にはそちらに向かってもらう」
「そうして北陸を守って頂く」
「これで北陸は最悪でもあの城で食い止められる」
 上杉謙信が相手でもというのだ。
「そうして時を稼ぎその間にじゃ」
「武田ですな」
「上杉家が北陸に攻めるならまず武田を降し」
 そうしてというのだ。
「信濃から逆にじゃ」
「上杉の拠点である越後を攻めますか」
「しかも春日山城をな」
 上杉家の本城であるこの城をというのだ。
「攻めてじゃ」
「脅かしますか」
「そうすれば如何に上杉家といえども降せる」
 戦の場ではまさに無敵と言っていい謙信でもというのだ。
「だからじゃ」
「まずは武田ですか」
「うむ、そして武田と上杉を降してじゃ」
 その後はというと。
「関東、北条家を攻めるぞ」
「そこまでお考えとは」
「先の先まで考える」
 信長は強い声で言った。
「そうしてこそ戦に勝て天下も治められるものじゃ」
「確かに。殿はこれまでもそうでしたし」
 林も言ってきた。
「これからもですな」
「そうじゃ、先の先まで読んでな」
「戦もしますか」
「そうじゃ、では本願寺に向かうぞ」
 これからのことも話してだ、そしてだった。
 織田家は兵を先に進めた、そのうえで本願寺を囲みそのうえで海を見た。海には毛利の水軍が出たがその彼等が。
 織田家の水軍の鉄甲船達の前にあえなく敗れ去った、信長はその戦の成り行きを丘から見て共にいる諸将に言った。
「これでじゃ」
「本願寺もですな」
「もう降るしかない」
「そうなりましたな」
「最早兵糧も武器も届かぬ」
 そうしたものを届ける毛利家が敗れた今そうなったというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「もう本願寺も降るしかないですな」
「そうなりましたな」
「そうじゃ、本願寺は顕如殿の後は二人の子達にそれぞれ東西に継がせる」
 そうするというのだ。
「そしてじゃ」
「石山はどうされますか」
 荒木がこのことを聞いてきた。
「一体」
「石山御坊の跡地じゃな」
「前に殿は石山の跡地に城を築くと言っておられましたが」
「今もそのつもりじゃ」
 信長は荒木にすぐに答えた。
「あの地にな」
「城を築きますか」
「御坊の木や石は全て本願寺に持たせる」
 そうさせるというのだ、門徒達に対して。
「そしてな」
「その後で、ですか」
「あの地に大きな城を築き」
「西国統治の要としますか」
「そうする、大坂の城じゃ」
 その城はというのだ。
「安土の城と共にな」
「あの地の城もですか」
「わしの天下の政の要となる」
 そうなるというのだ。
「そして東国にも城を築きたいが」
「東国となりますと」
 今度は明智が言ってきた。 
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