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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百七十七話 秋のイベントその二

「かつては」
「それオーストラリアの人にとっては」
「NGワード」
「そうですよね」
「言われると怒る」
「それエリザさんもですよね」
「私もその血が入っているから」
 アボリジニーの血とだ、エリザさんには白人の血も入っている。それも昔ながらの流刑で来た人達のそれがだ。
「けれど言うの」
「そうですか」
「そう、イギリスから遠く離れていて」
「過酷な自然環境だったので」
「流刑地になった、途中船が難破して」
 当時はよくあったことだ、流刑前に死ぬことなんてざらだから死刑と言っても過言ではなかったのだ。
「死んだり本土に入って」
「毒蛇に噛まれて死んだり」
「よくあった」
「よく、ですか」
「難波すれば鮫の餌で」
 まさにリアルジョーズだ。
「ちょっと油断して蛇に噛まれて」
「どっちかで死ぬんですか」
「猛獣は少ないけれど」
 そういえばオーストラリアには猛獣の類は少ない、人を襲う位の虎やライオンや豹みたいな生きものはいない。
「毒蛇大国だから」
「嫌な大国ですね」
「噛まれて死んだ流刑囚も多いの」
「やっと辿り着いてもですね」
「難波しても死ぬし蛇に噛まれても死ぬ」
「殆ど死刑ですね」
「まさに最高の流刑地だった」
 当時のイギリスにとってはだ。
「とはいってもシベリアよりはまし」
「あそこは別格ですね」
「最高の強制収容所」
「実際あそこにあったんですよね」
 ソ連時代はだ、帝政ロシアの頃は普通の流刑地で送り込んで後は放置だったらしいがソ連時代は死ぬまで強制労働だった。
「シベリアに」
「そのシベリアと比べたら」
「当時のオーストラリアもですか」
「多分まし」
「でしょうね、シベリアは別格です」
「オーストラリアはまだ生きられるから」
「後で凄く発展もしますし」
 金山が見付かって羊毛で産業が発達してだ、今や南太平洋の盟主と言ってもいいポジションにある。
「当時の人達はですか」
「流刑に遭っても」
 死刑に等しい刑罰を受ける位の悪事をしてもだ、これは自業自得でも。
「まだラッキーだった」
「そうですよね」
「シベリアに送られるよりも」
「あそこはほぼ確実に死にますからね」
 難破や毒蛇に噛まれたりするよりもだ。
「そう考えますと」
「オーストラリアはまし、ただ今も毒蛇や鮫は多いから」
「そういうのは健在ですか」
「そうなの」
「そう思うと過酷なのは変わらないですね」
「その我が国と比べたら」
 エリザさんは僕にあらためて言ってきた。
「日本の山は安全」
「それは違いますから」
 僕はエリザさんの今の言葉を即座に否定した、それも真顔で。
「絶対に」
「そんなに怖い蜂なの」
「だから凶暴で群れ為して襲ってきて何度も刺してきて毒も強いんですよ」
 まさに四拍子揃っている。
「本当に毒蛇や熊より怖いですから」
「だからなの」
「秋の山はあまり入らない方がいいです」
「そうなのね」
「はい、エリザさんもですよ」
 僕はエリザさんに忠告した、何か山に入りそうだからだ。 
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