八条学園騒動記
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第四百八十七話 ざわざわとその一
ざわざわと
アルフレドはビアンカと話をしたその日の放課後衣装部の部活の時にだ、部室に来て衣装の打ち合わせに来た演劇部の部長にこう声をかけた。
「演出のことですが」
「衣装の?」
「いえ、衣装じゃなくて」
それとは違って斗だ、アルフレドはまず断りを入れた、
「舞台の演出のことで」
「そっちのことでなの」
部長は三年生でかなりの美人だ、学園の中でも屈指の美少女として知られている。日本出身で黒髪と切れ長の目から大和撫子とさえ呼ばれている。また性格も面倒見がよく公平な好人物として知られている。
「そうなの」
「はい、考えがあるんですが」
「どういったものなの?」
部長はアルフレドに即座に問い返した。
「それで」
「はい、ギリシア劇で下に人が並んでますよね」
「ああ、あれね」
部長も知っていた、それがわかる返事だった。
「連合じゃあまりしないけれど」
「あれをしたら面白いんじゃ」
「あれね、私としては」
部長はアルフレドに微妙な顔になって応えた。
「あまりね」
「お好きでないですか」
「そうなの」
こうアルフレドに答えたのだった。
「どうもね」
「そうですか」
「ええ、あれはね」
また言うのだった。
「何か独特でしょ」
「癖が強い演出だからですか」
「あちらに観客の人達の目がいって」
それでというのだった。
「肝心の舞台に目がいかなくなるから」
「だからですか」
「あまりすることはね」
「お好きじゃないですか」
「そうなの」
これが部長の意見だった。
「私としてはね」
「そうでしたか」
「だからね」
「あの演出は」
「ちょっと」
どうにもとだ、部長はまた言った。
「することはね」
「ないですか」
「ただね」
「ただ?」
「あの演出とは別の演出で」
部長はアルフレドに考える顔で話した、今度は彼女からだった。
「考えている演出があるの」
「どういった演出でしょうか」
「日本からはじまった漫画だけれど」
「漫画のですか」
アルフレドはここでまさかと思ったが言葉には出さなかった。
「といいますと」
「そう、ざわざわっていうね」
「あっ、それ実は」
「実は?」
「俺それを言おうと思っていたんです」
驚いてだ、アルフレドは部長に話した。
「この演出を」
「貴方もそうだったの」
「はい、実は先程のギリシア劇の演出で」
「下からざわざわって言わせて」
「そう考えていたんです」
「そうだったの」
「はい、それで」
アルフレドは部長にさらに話した。
「これはって思っていたんですが」
「それでギリシアのあの演出からなの」
「そう思っていたんですが」
「そうだったのね」
「はい、どうでしょうか」
「ギリシアの方はどうかって思うけれど」
部長のこの考えは変わらなかった。
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