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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百七十五話 カレーを三人でその九

「目立っていたんだ」
「そうだったのね」
「うん、質素だったって」
「乃木大将は有名な人ね」
 チェチーリアさんがここでその人について言及してきた。
「私も知ってるわ」
「こっちの歴史の授業で習われて、じゃないですよね」
「ええ、ペルーでもね」
「日本の将軍としてですか」
「凄く立派な人としてね」
 そうした人としてというのだ。
「軍人さんとしてね」
「そうなんですね」
「東郷平八郎さんと並んで」
「それは何よりです、どうも乃木大将は」
 僕はこの人の評価も話した。
「あまり評価が高くなくて」
「えっ、そうなの?」
「西南戦争で連隊旗を奪われたり」
 乃木大将はこのことを生涯の恥辱としていて切腹をしようとして親友である児玉源太郎に止められたりもしたという。
「日露戦争でも旅順要塞を中々攻略出来なかったり」
「それでなのね」
「あまり評価が高くないんです」
 よく無能だったとか言われる。
「どうも」
「それが私わからないの」
「無能だってことが」
「だって西南戦争って敵強かったでしょ」
「はい、西郷さんが率いていて」 
 その下に文字通りの猛者が揃っていた、撃ち合った銃弾と銃弾がぶつかって潰れているものがかなりあった位の激戦だったという。
「無茶苦茶強かったという」
「西郷さんは日本屈指の英雄でしょ」
「明治の元勲でも一番か二番ですね」
 もう一人が大久保利通か、幕末でも坂本龍馬に匹敵する位の人物だ。
「それだけの人です」
「器が大きくて戦争の采配も凄くて」
「かなりの人よね」
「間違いなくそうでした」
「そんな人と戦ったから」
「連隊旗もですか」
「奪われても仕方ないわよ」
 相手が強過ぎたというのだ。実際に政府軍も西郷さん率いる軍勢を平定するのにかなりの労力を要した。
「そんな人が相手なら、むしろ逃げなかったでしょ」
「それはなかったです」
 乃木希典という人は武士だった、敵においそれと背を向けることも武器を持たない人に銃口や刃を向けることもしなかった。
「絶対に」
「それじゃあ立派よ」
「そうなりますか」
「そうよ」
 退きはした、しかしそれは後退であり逃走ではなかった。部下を見捨てて逃げる様なものではなかった。
 それならとだ、チェチーリアさんは僕に確かな声で言い切った。
「相手が相手なのに」
「まあその時二倍の数の相手と戦いましたけれど」
「しかも一人一人が強かったわよね」
「それもかなり」
「じゃあそれも当然よ」
「そうなりますか」
「あと旅順なんて要塞だったでしょ」
 今度はこの戦いのことだった、乃木大将にとっても日露戦争にとっても非常に重要な戦いだったのは有名だ。
「それもとんでもなく堅固な」
「ロシア軍が築き上げた」
「そこを攻め落とせなかったこともね」
 児玉源太郎が重砲を持って来たうえでだ。
「仕方ないわよ、むしろ物凄い戦いが乃木大将の下で最後まで行われたのよね」
「相当な損害が出ましたけれど」
 乃木大将が率いる第三軍にだ、この時に大将の二人のご子息も戦死している。
「それでも怯まずに勇敢に戦い続けました」
「その戦いを出来て負けなかったってだけでね」
「凄いですか」
「それに軍人として名誉ある行動を取ってきた人でしょ」
「はい」
 このことは躊躇なく言えた、あそこまで立派な人はそうはいなかった。
「水師営でもそうでしたし」
「敵将に帯剣を許しての会見ね」
 ロシアのステッセル将軍にだ。 
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