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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百七十四話 山の世界その十三

「お話しましょう」
「わかりました」
「けれど赤いお米とか黒いお米もあったのね」
「日本には、今もありますけれど」
「私見たことないわよ」
「奈良時代の、その奈良県で復活しまして」
 奈良時代つまり天平時代の文化を再現した時に食文化も再現されたのだ。それで赤いお米や黒いお米も復活したのだ。
「それでなんです」
「食べられるの、奈良では」
「はい、あそこでは」
「そうなのね」
「まあ確かに凄い昔の食べものですけれど」
 千三百年以上昔のだ。
「長い間食べられていなかった」
「そうよね、私もはじめて聞いたし」
 そんな赤いお米や黒いお米のことはというのだ。
「正直驚いたわ」
「何か日本人は途中から白いお米に滅茶苦茶こだわりまして」
 白米、これにだ。
「そうしたお米は食べなくなったんです」
「そうなのね」
「今じゃ玄米も滅多にですよね」
「あれよね、胚芽を取っていない」
「そのお米ですけれど」
 こちらもだ。
「今じゃ滅多にですね」
「食べないのね」
「何か白米イコール贅沢になって」
 これは特に江戸時代からだ、江戸っ子は玄米なんか食べないとか言っていたらしい。それが脚気になっていくのは皮肉な話だ。
「それでなんです」
「今みたいになのね」
「白米ばかりになりました」
 お公家さん達が食べていたからだろうか、雑穀入りの御飯や玄米から白米になっていくのは日本の食の歴史の一幕でもある。
「もう完全に」
「そうなのね」
「はい、もうそれこそです」
 今ではだ。
「白米だけになりました」
「そうなのね」
「軍隊もそうでしたし」
「日本軍?」
「はい、戦前の軍隊も」
 あの有名な大日本帝国陸海軍だ、その名前は世界的に知られているとのことだ。
「白米を出してたんですよ」
「そうだったの」
「それで白米ばかり食べていて」
 僕はここで脚気のことをまた思い出した、ビタミンB1不足でなってしまうのは今だからわかることだ。
「脚気にもなりまして」
「ああ、日本にあったっていう」
「あの病気です」
 足がむくんで動けなくなって身体がだるくなっていってしまう、酷い場合には死ぬこともあるから怖い。
「脚気になる人が凄い出たんです」
「私その病気よく知らないけれど」
 ペルー人のチェチーリアさんは実際にかなり怪訝な顔になっていた。
「何か御飯ばかり食べていたらなるのよね」
「栄養バランスが悪くて」
 白米だけ食べているとだ。
「なってしまいます」
「その脚気になのね」
「かなりの人がなって」
「大変なことになっていたの」
「日清戦争でも日露戦争でも」
 この日本の運命を決めた二つの戦争でもだ。
「結構な人が死んでます」
「死んでるの、なっただけじゃなくて」
「それもかなりの数が」
 戦死者と比べても少なくない位にだ。
「死んでいます」
「そこまで死んでるの」
「日本全体で」
 白米を食べている都会を中心にしてだ、だから脚気は江戸腫れとか大坂腫れとか言われていたという。 
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