八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百七十四話 山の世界その七
「上田馬之助さんだってな」
「いい人だろ」
「ああ」
そうだとだ、長谷君は中川君に答えた。
「それで有名だったな」
「悪役こそな」
それこそというのだ。
「実はなんだよ」
「いい人か」
「俳優さんでもそうだろ」
「それよく言われるな」
「特撮で悪役やってる人こそな」
子供達に恐れられ嫌われている人達こそだ、仮面ライダーでゾル大佐を演じていた宮口二郎さんは全く知らない子供に蹴られたことがあるらしい。
「いい人だろ」
「石投げられるって話あるけれどな」
「乗ってるバスに子供が勝負しろとか言ってきたりな」
「悪役だと色々あるらしいな」
「わかってる人はサインねだってくるけれどな」
これは子供達の親や特撮マニアの仕事だ。
「それでもな」
「悪役だとな」
「子供に色々言われるよな」
「どうしても」
「それが実はなんだよ」
中川君はさらに話した。
「悪役こそいい人だったりするんだよ」
「それ時代劇でもだったんだよね」
僕はここでこう言った。
「昔の悪役スターの人とか」
「ああ、そうなのか?」
「うん、そうみたいだよ」
「テレビとか映画じゃ極悪人でもか」
「実際はね」
悪逆非道の限りを尽くす家老だのお奉行だの代官だの悪徳商人でもだ。何か時代劇の悪役はこうした立場の人が多い。
「凄くいい人だったとか」
「そうだったんだな」
「吉田義夫さんとか」
この人が思い浮かんだ。
「あの人とかね」
「ああ、俺その人知ってるぜ」
中川君は吉田義夫さんと聞いてすぐにこう返した。
「悪魔くんの人だよな」
「あれっ、悪魔くんって」
「アニメっていうんだろ」
「そっちじゃないの?」
「特撮もあったんだよ」
「そうだったんだ」
「それでな」
その特撮の方でというのだ。
「吉田さん出てたんだよ」
「そうだったんだ」
「メフィストでな」
悪魔くんという作品で主人公悪魔くんを助けてくれる悪魔だ、もう一人の主人公とまで言っていい重要なキャラクターだ。
「出て来てたんだよ、それでもう一人メフィストがいたんだよ」
「二人いたんだ」
「どっちかが出てたんだよ」
特撮版悪魔くんではというのだ。
「兄弟って設定でな、それでもう一人のメフィストはな」
「誰だったのかな」
「潮健児さんだったんだよ」
「えっ!?」
中川君の今の発言には僕だけじゃなくそこにいた皆が驚いた、何しろ潮さんといえばあの役だからだ。
そしてその役については長谷君が言った。
「地獄大使か?」
「仮面ライダーのな」
「あの敵の大幹部だったよな」
「俺地獄大使好きだったぜ」
「俺もだ」
「僕もだよ」
嫌いな人はいなかった、地獄大使はだ。
「恰好いいっていうかな」
「凄い存在感あったよ」
「もう如何にも敵の組織の大幹部で」
「悪役オーラ全開でな」
「それでいて妙に人間臭くて」
「いい悪役だったな」
ゾル大佐、死神博士と並んでだ。もっと言えば後で出て来たブラック将軍も入る。ショッカー、ブラック将軍のいたゲルショッカーは今も日本人なら誰でも知っている組織だ。地獄大使はそのショッカーの大幹部の一人だったのだ。
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